テクニカル分析
移動平均線のクロス
移動平均線の概要
移動平均線(MA)は、外国為替取引において最も利用されているテクニカル指標の1つです。シンプルかつ使いやすいというのがその理由です。そのため数多くのトレードストラテジーに利用されてきました。そして、分析しやすい、検証しやすい、活用しやすいという特徴から、古くからあるテクニカル指標にもかかわらず、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析双方を駆使した最新のトレードストラテジーにおいても、最も有効なシグナルの1つとされています。
移動平均線は遅行指標(=過去のレートに基づくテクニカル指標)のためトレンドフォローに有効
一般的には、下記2種類の移動平均線が利用されています。
- 単純移動平均線(SMA)
- 指数移動平均線(EMA)
単純移動平均線と指数移動平均線はいずれも、設定したタイムフレーム(時間軸)のレートを、各計算式で合計し、その平均値をチャート化したものです。単純移動平均線では、タイムフレームの全データを平等に扱いますが、指数移動平均線では、新しいデータ(=直近の値動き)ほどウェイトをかけて算出します。
単純移動平均線とは
例えば、10日単純移動平均線は、直近10日間の終値の平均値(=直近10日間の終値を合計して10で割った数値)をチャート化したもので、実際の値動きを追いかけるようなラインで描かれます。タイムフレームが短いほど、実際の値動きに似た形となります。
トレードストラテジーに単純移動平均線のクロスを活用する方法
ここでは、トレンドの方向性を判断する際に利用されるアレンの4-9-18手法(4期間線、9期間線、18期間線の組み合わせ)を紹介します。単純移動平均線の売買シグナルは非常にわかりやすく、サポートラインやレジスタンスライン同様、ポジションの保有や決済のシグナルとして有効です。ぜひ基本知識を身につけてトレードに活用してください。
エントリー
4日線(短期線)が9日線(中期線)をクロスオーバーし、さらにその2本が18日線(長期線)をクロスオーバーしたタイミングが、売買のタイミング(=売買シグナル)となります。言い換えると、上から(または下から)4日線、9日線、18日線という順番に並ぶタイミングです。そのタイミングで、マーケットレートが3本の単純移動平均線から乖離し、同じ向きに勢い良く上昇(またな下落)しているほど、強いシグナルとなります。逆に、上昇トレンド時おいて直近の値動きが4日線を下抜けて下落基調となっている場合や、下降トレンドにおいて4日線を上抜けて上昇基調となっている場合は、4日線、9日線、18日線という順番になっていても、トレンドの反転を意識してください。また、値動きの方向性があいまいとなり、4日線と9日線がかろうじて18日線をクロスオーバーするような場合は、シグナルとしては弱いため、マーケットレートと18日線の位置関係等を確認し、マーケットの状況を慎重に判断しなければいけません。一方で、4日線と9日線がなんらかの理由で勢い良く18日線をクロスオーバーする場合は、強いシグナルとなります。そのような場合は、マーケットレートが18日線から乖離する速度も速いため、強い上昇トレンド(または強い下降トレンド)だと判断することができます。
4日線が9日線をクロスオーバーした時点で、(その後18日線をクロスオーバーすることを見越して、)ポジションを保有するアグレッシブなトレーダーもいますが、基本的には、3本の移動平均線が期待する値動きの方向に全て揃うまでマーケットの勢いを見守りましょう。もし、その勢いがすぐに弱まるようなら、トレンドとしては弱い、ということになります。
トレンド全体の流れを掴む手段として、中期線(9日線)と長期線(18日線)を活用しましょう。2本の単純移動平均線と値動きが反対を向いている場合は、リトレースメント(=一時的な逆行)を意識しましょう。
マーケットレートが勢い良く逆行すると、その勢いによって4日線と9日線が18日線をクロスオーバーすることがありますが、それはリトレースメントであることが多く、トレンド全体に影響することはありません。通常、そのような一時的な値動きはすぐに収まります。そして、その勢いの衰えは、リトレースメントとしてすぐに短期線(4日線)に現れます。
決済
トレードストラテジーにおいて、主観的な要素が最も強いのは、トレンドの強弱を判断して決済の是非を決断する、という点です。例えば、先述のクロスオーバーをもってトレンドの反転と判断する場合もあれば、マーケットの状況次第では、別のルールで判断する必要もあります。強いトレンドを形成している中、一時的な急騰(または急落)がおきて、いくつかのタイムフレームにおいて思惑とは逆の向きに反転した場合、それはリトレースメントの可能性が高いのですが、そのタイミングでの決済も、状況から判断する必要があるということです。
トレンドが弱い場合はトレイルストップオーダーを活用すると良いでしょう。例えば、4日線と9日線が18日線をクロスオーバーした後、反転して、18日線を反対側からクロスするような時は警戒が必要です。トレードが思惑通りになっていない時はなおさらです。感情に左右されないよう、ストップオーダー等をうまく活用して損失の拡大を防ぐようにしましょう。
ストップオーダー
理想からすれば、ストップオーダーの水準は、損失を最小限に抑えつつ、かつリトレースメント等の一時的な動きには反応しないくらい余裕をもって設定したいものです。もちろん、ストップオーダーの目的は、思惑とは反対の方向にスパイクした際、如何に損失を抑えるか、という点にあります。例えば、ストップオーダーを設定した水準の手前で、4日線と9日線が18日線をクロスオーバーして、思惑とは逆の方向に展開するケースがままありますが、そのタイミングをロスカット水準の目安にすると良いでしょう。
買いのケース:10分足(USD/JPY)
クロスオーバーした直後は急騰(または急落)することがありますが、その際、決済できるタイミングは決して多くありません。一方で、下図の通り、4期間線と9期間線が18期間線をクロスオーバーした後に反転のクロスをする場合で、かつ値動きも単純移動平均線もフラットな場合等、売り決済をしない方が良いケースもあります。
まとめ
- タイムフレーム(時間軸)が短いほど、直近のレートの平均値を利用するため、値動きと似た軌道となります。
- タイムフレームが短いほど、突発的な値動きにも素早く反応します。
- 異なるタイムフレームの違いを活用するマルチタイムフレーム分析を実践しましょう。 例えば、10分足と15分足を同時に見て、その違いをトレンド分析の一要素として活用しましょう。