テクニカル分析
十字線 – ローソク足パターンを解説
十字線とは
- 始値と終値が等しいか、それらが非常に近いレートであるため、十字の形に見えるローソク足パターン。
- 直近までの値動きまたはトレンドが一変し、買い手と売り手(強気と弱気)双方のバイアスが弱まり、中立的な状況になったことを示すシグナル。
- 上ヒゲと下ヒゲの長さが、記号の+(プラス)のように同じ長さのケース、下ヒゲが長い十字形のケース、上ヒゲが長い逆十字形のケース等、状況により形は異なる。
十字線は、なぜ重要なのか
- 十字線の出現は、最高値/最安値を付けた可能性、または、それが否定される可能性を示唆する。
- 短期的な値動きやトレンドが反転する可能性をタイムリーに示す先行指標である。
- その他の反転指標の裏付けや判断材料となる。特に、サポートレベルまたはレジスタンスレベル付近で十字線が現れた場合で、かつそれが長く続いたトレンドの終局であったり、(大陽線/大陰線等)長く伸びたローソク足の次に現れた場合、反転する可能性が高い。
- 足長同事線は、十字線よりも、売り買いが拮抗していることを示す。
- トウバは、買い手優勢により上昇から始まるものの、途中から売り手優勢に逆転し、始値と同水準まで下落して終わるローソク足パターン。
- トンボは、売り手優勢により下落から始まるものの、途中から買い手優勢に逆転し、始値と同水準まで上昇して終わるローソク足パターン。
- 十字線が現れたにも関わらず値動きが反転しない場合は、トレンド継続となる可能性が高い。
日足チャート(EUR/USD)
4時間足チャート(USD/CHF)
下図は、十字線となったローソク足1本(4時間足)を、5分足で拡大したチャートです。 ※4時間足チャートの該当のローソク足1本を下図のように5分足チャートで拡大表示してみると、値動きが可視化され状況が良くわかります。どのように各ローソク足が形成されたのか、左から右にその軌道を追うことで、状況をより正確に理解することができます。
十字線をトレードに活かす方法とは
十字線は、買い手と売り手(強気と弱気)の攻防で、端的には、均衡した状況を示すシグナルです。シグナルとなる他の指標でもそうですが、十字線の出現のみをもって、勝率の高いトレードとなるか否かの判断はできません。なぜなら、十字線の出現により、値動きが反転するタイミングがわかっただけで、どのくらい反転するのか、どのくらいそのトレンドが続くのか、というのは全くわからないためです。
勝率の高いトレードというのは、複数のトレードシグナルによって導き出されますが、その際のエントリーポイントおよびイグジットポイントの確認や決定は、2つの重要な要素に基づきます。それは、(1)トレンドと、(2)サポートレベルとレジスタンスレベルです。この2つの要素を把握していない状況で、十字線のような指標だけをもって何らかの判断を下すことは、コイントスの確率論となんら変わりません。
しかし、他の分析と組み合わせて総合的にマーケットを判断する場合、最高値/最安値の形成かそうではないか、つまり、短期的にはトレンドが反転するのか、それともトレンドは継続するのか、このような分析に十字線は大いに役立ちます。要するに、勝率の高いエントリーポイントまたはイグジットポイントを探るうえで、十字星はパズルの1ピースに過ぎないということです。
それでは、勝率の高いトレードとは何かを探るため、どのように他のテクニカル指標と組み合わせ、どのように十字星を活用すべきか、についてみていきましょう。最初にすべきことは、サポートレベル、レジスタンスレベル、トレンドを確認することです。もちろん、レジスタンレベル付近で売り、サポートレベル付近で買い、というのが基本です。また、トレンドをみて、エントリーとイグジットの方向を把握し、売りでエントリーするのか、買いでエントリーするのか、を判断します。
サポートレベルとレジスタンスレベルを確認する最も簡単な方法に、直近の高値/安値を参考にするという方法がありますが…
トレンド反転を意識する場合、より注視すべきサポートレベルとレジスタンスレベルは、直近の最高値(天井)/最安値(底)であり、天井と底のレートから値動きやトレンドのレンジを把握します。
そして、テクニカル分析として広く知られているフィボナッチリトレースメントを利用し、天井と底のレートから意識すべきサポートレベルとレジスタンスレベルを算出します。これをフィボナッチリトレースメント・レベルといいます。直近の値動きやトレンドをもとに、特定の%を掛け合わせて割り出す水準(調整値)です。最も利用されるフィボナッチリトレースメント・レベルは、直近の値動きによってできた天井と底の値幅の38.2%、50%、61.8%、78.6%です。
下図の例では、手前の下降トレンド(AB)に基づくフィボナッチリトレースメント・レベルの78.6%にあたるCに十字線が出現しています(安値から十字線までのスイング(BC)が、手前の下降トレンド(AB)の約78.6%となっています)。この場合、十字線をフィボナッチリトレースメントの完成シグナルと捉え、そこからの反落を想定することになります。十字線の出現以降、反落する様子がない場合(=十字線の高値を越えて新高値を付ける場合等)、反落の否定を示唆するため、トレンド継続の可能性が高まります。
この基本的な考えにより、十字線出現後、トレーダーはすぐに売りエントリーをすることができるようになります。その場合、十字線の高値水準で、かつレジスタンスレベルとなるフィボナッチレベルのすぐ上に、ストップロスを設定します。無論、このストップロスは、売りポジションの損切が目的であるため、買いのストップオーダーを設定することになります。
ここで大変重要なことは、チャート上に上がって描かれる高値、安値、始値、終値、全てのレートが、そのマーケットの売値(ビッド)だということです。つまり、トレーダー側での売り注文が約定したレートです。そのため、買い注文の場合は、マーケット毎のスプレッドに十分注意する必要があります。なぜなら、買値(アスク)は売値よりも、常に少しだけ高いためです。以降、この事例におけるUSD/CHFのスプレッドは4pipだと仮定します。
ショートポジションの決済または売りエントリーをする場合、買いのストップロスを利用して損切するか、リミットオーダーを利用して利食いすることになります(もし利食いポイントが複数ある場合は、複数のリミットオーダーを設定することになります)。その際のストップオーダーまたはリミットオーダーの取引数量は、エントリー時のサイズか、またはオープンポジションのサイズに基づくことになります。利食いポイントを複数持つことは決して珍しいことではありませんが、一方で、ストップオーダーについては、全てのオープンポジションに対して1つだけ設定し、全てをまとめて決済する、というのが一般的であり、有効な手段です。
なぜなら、もし半分だけを決済した場合、残り半分の戦いが残ってしまうためです。では、利食いの場合はどうでしょうか。エントリーやストップオーダーの時と同様、リミットオーダーも、通常はサポートレベルやレジスタンスレベルに設定することになります。これにより、ポジションをロジカルな水準で決済することになります。以下の例では、上述と同様フィボナッチ分析を利用します。十字線が出現したら、その手前の値動き(天井と底)を確認し、反転する可能性のあるサポートレベルを割り出します。なお、サポートレベルとレジスタンスレベルはあくまで目安だということをあらかじめ認識しておいてください。なぜなら、レートの下落は、その水準の寸前で止まるかもしれませんし、通りすぎるかもしれません。イメージとしては、フィボナッチレベルの上下にはクッションが存在している、と思っておくと良いでしょう。以下の事例では、マーケットの下落を予想しているため、チャートに描いたサポートラインに対しレートがギリギリ届かないケースも踏まえ、フィボナッチレベルよりも少し上の水準を利食いポイントにします(実際の値動きは、フィボナッチリトレースメント・レベルを通り過ぎることもあるため、ストップオーダーを設定する際は、上述のクッションを踏まえ、サポートレベルとレジスタンスレベルから少し余裕をもって設定するのが一般的です)。
どれほどのトレード経験があったとしても、マーケットが次にどうなるのか、どこまで進むのか、確実なことは誰にもわかりません。それこそが、利食いポイントを複数持つ理由なのです。新米トレーダーのために、「損は落とせ、さらば利益は大ならん」というマントラがあります。確かにこれは、その理由を説明するのに最適な教訓なのですが、残念ながら、新米トレーダーだけでなくベテラントレーダーにも誤解されています。「さらば利益は大ならん」は、利食いポイントがロジカルである時のみで、通常は、サポートレベルとレジスタンスレベルに基づいている場合です。利食いポイントをどこに定めるか、決済のサイズをどうするか、このトレードでの利益目標をいくらにするか、このようなことを決める際、トレンド分析が重要な役割を果たします。
多くのトレーダーが犯す過ちとして、「早すぎる利食いはしたくない」という欲を出した結果、ポジションを持ち続けてしまうことがあります。ほとんどの場合は利益を減らすことになります。そして、多くの場合は、勝ちトレードが負けトレードに変わってしまいます。なお、複数の利食いポイントを持つことで出口戦略が複雑化するため、ストップオーダーの管理が不可欠となります。トレードの成功という観点で考えた場合、トレードの質と勝率を測る重要なキーとなるのが、トレード毎のリスクリワードレシオです。質の高いトレードをおこなうにあたり、疑いなく、最も重要な要素となります。
それでは、再度USD/CHFを例に、このトレードの設定がどのようなものか、単純化して見てみましょう。最も慎重な利食いポイントでシミュレーションをしてみたいと思います(フィボナッチリトレースメント・レベルの38.2%のすぐ上にスプレッドの4pipを足して設定)。
トレードに入る前に利食いポイントが確定しているため、適切なリスク管理/資金管理、および戦略通りのトレード、という2つの絶対的に重要かつ不可欠な要素を踏まえたトレードをおこなうことができます。そして、どのポイントでエントリーするかが確定すると、①そのトレードにおけるリスクリワードレシオ、および②そのトレードにおけるリスク額(最大損失額)が決まります(※「リスクリワードレシオ」は、トレーダーの勝率を表す比率としても使われます)。リスク額自体が、適切な取引数量の決定に役立ちます。それでは早速、シミュレーションしてみましょう。十字線が完成したらすぐに、売りエントリーをおこない、十字線の高値+1pipとスプレッド分+4pipを加えた水準にストップロスを設定し、最初のフィボナッチレベルの5pip上、またはT1にリミットオーダーを設定します。(T1: フィボナッチレベルの38.2%に対し、単純にスプレッド分4pipを加えた水準)
USD/CHEF:売りの場合
- 逆指値:1.0452
- 保有レート:1.0417
- 指値:1.0342
- リスク合計:35 pips(保有レートと逆指値の差)
- 想定利益:75 pips (保有レートと指値の差)
- リスクリワード:2.14
リスクリワードレシオに問題がなければ、次に1取引あたりのリスク許容度に基づき、適切な取引数量を決めます。口座残高の1〜3%を超えるリスクを負うようなトレードをしないことをお勧めいたします。
- リスク合計:35 pips
- pip損益:500円
- 口座残高:1,000,000円
- 1取引あたりのリスク許容度:2%(20,000円)
結果、このトレードでは36,000円の利益となりました。これはほんの一例であり、なんらかのトレードストラテジーやメソッドを推奨したり定型化ようなものではありませんが、ここでの重要なポイントは、利益を出すためのトレード戦略は、決して複雑な指標やシステムによるものではないということです。何より重要なのは、リスク管理と資金管理をしっかりすることです。
リスクリワードレシオが最大化されるトレードしかやらないという熟練トレーダーであれば、勝つトレードにとって重要なのは、ポジションが利益になっているかではなく、しっかりとしたトレード戦略と自制心(感情をコントロールする能力)を持っているかどうかだということは容易に理解できます。
USD/CHF(4時間足チャート)
補足: トレードで勝つための基本概念
上述の例では、リスクリワードレシオが1:2を少しだけ上回ったケースを取り上げました。リスクリワードレシオがエントリーの絶対条件だとすれば、ブレイクイーブン(損益分岐点)を基準に試算すると、勝率自体は33%程度を維持できれば良いといえます。例え、損切またはアゲインストな状況が、利食いまたはフェイバーな状況より頻繁に起きたとしても、結果としてはプラスになる試算です。この意味を理解することで、それを理解していない多くのトレーダーとの間に格差ができ、優位に立つことができます。自身のエゴを捨て、数字のゲームを楽しむことで、目標を実現するすばらしいチャンスを得ることになります。
マーケットは、事前に想定したロジカルな利食いポイントで反転するか、またはそのトレンドを維持し、そのポイントを越えていきます。しかし、トレーダーは、その値動きを事前に把握することはできません。利食いした後に、さらにマーケットが利益拡大の方向に動き続けた場合によくあることとして、「やっぱり…」「…すべきだった」「もっと稼げたのに」等の欲によって、現実に対して盲目になってしまうことがあります。現実に顧みれば、利益は確定したのです。一方で、トレード終了後、マーケットが利益拡大の方向に動き続けたとしても、勝ったトレードのその後を気にしないトレーダーは、「そんなの気にしない!トレードは勝って利益を得た。それで十分」と考えます。残念ながら、自分で掴んだ利益のことを忘れてしまうトレーダーは、「くそ!決済が早すぎた!もっと儲けることができた、そうすべきだった」と考えます。これにより、さらに感情的になります。その感情は、非合理的かつ非論理的な決断を招きます。それによって、資金が単なる数字扱いされてしまうようなら、時が経つにつれ、感情的な判断により、トレードは自殺行為と化していきます(いずれ、資金はゼロに。)
トレーダーがすべきことは、ロジカルに分析し、利食いポイントをロジカルに決断し、決して振り返えらない、ということです。多くのトレーダーの共通点として、最悪かつ自身のトレードスタイルを壊してしまう習慣が、取引を終えた後に「その後どうなったかを確認」してしまうことです。
シグナルとなるその他の指標同様、十字線単独では、勝率の高いトレードか否かを判断することはできません。下記2つがその理由です。
- 十字線によって、最高値/最安値を確認することができ、トレンド反転の可能性が示されますが(※これ自体は、確かに勝率の高いトレードへのエントリーチャンスとなるものの)、イグジットポイントをエントリー時点で示してくれるわけではありません。では、「『どこでエントリーするのか?』ではなく、『どこでイグジットするのか?』の方が重要なのか」というと、それも的を射た質問にはなりません。勝率の高いトレードは、いくつかの重要な要素の組み合わせによって導き出されます。その不可欠な要素が下記の2つです。
- リスクリワードレシオ
- 勝率
勝率が高いからといって、トレードが逆に行ったときに大金を失うようでは意味がありません。勝率が80%であれば、リスクリワードレシオが1:4という組み合わせでも、長期的に口座残高をブレイクイーブンに維持することができます。一方、勝率がわずか33%の場合であっても、リスクリワードレシオが2:1であれば、ブレイクイーブンを維持することができます。
- テクニカル分析の観点から、勝率の高いエントリーとイグジットを探る方法を定義すると、下記2つの要素が重要となります。
- サポートレベルとレジスタンスレベルを確認する
- マーケットの値動きを確認する
無限に存在するとは言いませんが、この2つの要素に関する分析方法は、数百通りは存在します。そのため、様々な指標やタイムフレームを活用し、各シグナルの信頼性を総合的に判断しなければいけません。
リスクリワードレシオは、多くの場合、トレーダーの勝率を決める上で、最重要要素となります。しかし、ほとんどのトレーダーは、下記2つのいずれかの理由で、自身の真の勝率を把握していません。
- 勝率を正確に平均化できるまでトレードをおこなっていない。
- これは数学における大数の法則に基づいた考え方です。この法則の基礎は、特定のイベントをこなせばこなすほど、任意の状況となる真の確率に近づくというものです。トレードは、不可算ではなく、まさに確率論そのものなのです。そのため、この法則の理解と応用は不可欠なのです。コイントスを10回して、表が8回出た、という結果をイメージしてみてください。片方の面が出る確率は50%、というのは誰もが知っています。そのため、最初の10回のコイントスで、表が出る確率が80%だと正気で思う人はいないはずです。つまり、確率を扱うときの原則は、大数の法則に従い、「コイントスを増やすほど、周知の通り、表が出る確率は50%に近づく」ということです。とはいえ、100回のコイントスでは、10回連続表が出たり、10回連続裏が出たりすることもあるため、100回だけでは真の確率というのは測れません。これが、平均の法則がトレードの勝率に影響する理由なのです。私たちは、一方が出る確率は50%だとわかっています。そのため10回連続して表が出るなら、その後10回連続して裏が出ることを期待します。そして、いずれ50%に収斂していくと。ここで、おもしろい話を1つしましょう… 誰かに「20回連続で表が出た」と言ってみてください。その状況で、次のコイントスを裏にかける人はどの程度いるでしょうか。「… 20回も連続して表が出たなんて、おかしいだろ!絶対に次こそ、裏が出る」なんて、彼らは考えるかもしれませんね。
- 一貫性の欠如
- ほとんどのトレーダーは、同じルールでトレードをすることをしません。大概、新たなトレード手法を何度か試すと、また別のトレード手法を試し始めます。または、何度かトレード手法を試した結果、全資金ではないにしても、ほとんどの資金を失いトレードから離脱してしまいます。そして、一部の方は、資金を追加してトレードをおこない、同じ過ちを何度も、何度も、何度も、繰り返すことになります。