ファンダメンタル分析
消費者物価指数 / 生産者物価指数
消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は、商品やサービスの物価変動を測るインフレ指標です。上昇(インフレーション)、下落(0%を下回って下落する場合はデフレーション、0%を上回った水準を維持しつつ下落する場合はディスインフレーション)、変わらず(一般的な用語がないため、ゼロインフレーションという意味で、ここではジンフレーションと呼びます)、とそれぞれ表現します。
指標名(指数名)からわかるように、CPIは消費者サイド、PPIは生産者サイドのインフレ率を示します。
これらは、各国中央銀行が金融政策の方針を定める際に参考とする指標の1つです。そして、ほぼ全てのマーケットに対し、実際に大きな影響を及ぼします。
それでは、それぞれどのような影響があるのか、〇〇フレーションの意味合いについて学んでいきましょう。
インフレーション
インフレ(インフレーション)とは、物価が0%以上の水準にて、持続的に上昇するか、またはその上昇率が変わらない状況です。物価が年々上昇していく状況を例えるならば、風船をどんどん膨らませていくイメージです。
最近の経済通念では、インフレ率が低水準で安定している状況こそ、企業がすばやく順応することができ、潜在的に存在する景気後退のリスクというのが軽減されやすい、と考えられています。
そのため、中央銀行は、政策金利を引き下げることで、インフレ率を上述のような水準に落ち着かせようとします。インフレ率が2%以下の場合、借入コストが安くなることで、企業と個人が消費目的の借り入れを増やす傾向があり、その消費活動が経済の動力源として機能する、と考えられているためです。逆に、インフレ率が3%以上に高騰しているときは、政策金利を引き上げることで、(賢い選択としての)貯蓄という投資を促します。
ディスインフレーション
ディスインフレ(ディスインフレーション)とは、物価が0%を上回った水準を維持しつつ下落する状況ですが、インフレ率が0%以上でかつ限りなく低水準となった歴史を回顧することでイメージできると思います。それは、「失われた10年」と称された1990年代から2000年代初頭の日本経済です。この期間のインフレ率はというと、経験したことのない強烈な低水準が続き、日本経済は停滞し、長期にわたりGDPが上昇しない状況となりました。この状況を脱却するため、日本銀行は政策金利を0%まで引き下げ、貯蓄よりも消費を促しました。しかしその願いとは裏腹に、多くの企業や個人が過去の借金を返済するために、低金利での借り換えを行いました。そして、ごく一部の借り入れ資金だけが、消費活動や事業資金として利用されました。後年、日本は量的緩和(QE)を導入し、金融緩和をさらに加速させていきました。量的緩和というのは、中央銀行が、公開市場操作(買いオペレーション)において国債や資産担保証券等を買い上げることで、結果的に、市中金利をさらに引き下げるという一連の施策です。これは事実上、マネーサプライ残高を引き上げることになりますが、一方の量的緩和の反対派の主張はというと、市場に過剰な資金を送り込むと、最終的に…
ハイパーインフレーション
インフレのコントロールが不能となった場合、これは、ハイパーインフレ(ハイパーインフレーション)と定義されるようになります。フランス革命直後のフランスがそうであったように、物価が異常な水準に上昇した事例というのは、歴史的にも数多く存在します。例えば、第二次世界大戦直前のドイツ(ワイマール共和国)、ソビエト連邦崩壊後のロシア、2000年代半ばのジンバブエ、そして南北戦争直後のアメリカ。お気づきの通り、これらのハイパーインフレのエピソードというのは、戦争の帰結か、または政府の統治能力不足に対する不信認や紛争の結果によって引き起こされたものなのです。言うまでもなく、中央銀行は、このようなハイパーインフレを起こさないよう、あらゆる政策を実施します。例えば、通貨切り下げが代表的な施策です。また、借り入れよりも貯蓄を優先する方が有利となるレベルまで金融引き締めを実施します。
デフレーション
デフレ(デフレーション)とは、物価が0%を下回って下落する状況(物価が下落している状況)です。もし街頭で、世間一般の方に対し、「物価の下落は良いことだと思いますか?」と質問したら、おそらく、大多数の方は「はい」と答えるでしょう。毎日購入するモノが安くなることを望まない人はいないはずです。しかし、例外として、製造業者等はそれを決して望まないでしょう。なぜならそれは、生産する製品の利益率を下げることを意味するからです。さらには、安く作る方法を考える必要もありますが、たいていそれは、スタッフの解雇も視野に入れることになります。もし、失業者が増えれば、消費は減退し、生産者の利益は減少することになります。このような状況は、デフレスパイラルとして自己保存され、時間の経過と共に悪化の一途を辿ることとなります。デフレからの脱却が課題となると、中央銀行は通常、市場における借り入れを促進するため、政策金利を引き下げ、借り入れしやすい環境を整えます。これによりマネーサプライ(通貨供給量)は上昇し、通貨価値が減価することになります。つまり、マネーサプライの調整によって、インフレを促すことになります。
ジンフレーション
長期にわたり政策金利が一定である状況を、私たちは「ジンフレーション」という用語で表現します。1990年代には、ジンフレ(ジンフレーション)の考えは、中央銀行の最終目標になりうるとして議論されていました。当時の連邦準備制度理事会議長アラン・グリーンスパン氏も実現への願いを表明していました。しかしながら、「失われた10年」における日本の経験から、ジンフレに対する期待は薄れ、さらには、経済成長のない状況とほぼ同義として扱われるようになりました。それ故、2~3%程度の低インフレモデルというのが、21世紀を築くにあたり、望ましいモデルとされています。