テクニカル分析 上級編
フェイバリット・フィボ分析
フェイバリット・フィボは、フィボナッチ・リトレースメントとトレンドの勢いをベースにしたトレードストラテジーです。メジャー通貨、株価指数、商品先物取引等、広範なマーケットに適応し、かつタイムフレームの設定も柔軟なため、様々なトレーダーに利用されています。 例えば、主要経済指標の発表直後はマーケットが大きく動きますが、そのような急騰急落時にも大活躍します。また、史上最高値(または史上最安値)や、直近の最高値(または最安値)を更新しているとき等、明らかにトレンドの勢いが強いときには最適です。一方で、トレンドの勢いが弱いときや、インパクトのある発表にも関わらず、その影響が単なる調整程度に留まったり、値動きがレンジ内に収まるようなマーケットではうまく機能しません。
タイムフレーム
FFストラテジーは、タイムフレームが長いほど精度が高まります。1時間足か4時間足で利用するのが一般的ですが、日足等さらに長いタイムフレームでも確認するとベターです。長めのタイムフレームに基づいてトレードしている場合は、5分足またはさらに短いタイムフレームを利用することで、エントリーのタイミングを計ることができます。なお、短いタイムフレームに基づいてトレードをする場合は、15分足より長く設定すると良いでしょう。
FFストラテジーの構成
FFストラテジーは、フィボナッチ・リトレースメント・レベルとフィボナッチ・エクステンション・レベルを活用したストラテジーです。リトレースメント・レベル(=反転の水準)として38.2%と50%を、エクステンション・レベル(=決済の水準)として、127.2%、161.8%、261.8%を利用します。 ※50%のリトレースメント・レベルというのは、正式には、フィボナッチの水準ではありません。
それでは、FFストラテジーがどのような仕組みかを見ていきましょう。下図ではAからBに対し強い上昇トレンドを形成し、その後、利食いと天井を狙った決済によって、ポイントCまで小反落しています。そして、Bの水準を上抜け、再度上昇トレンドを形成しています。このようにFFストラテジーは、3本のスイングラインで構成されます。1波がAB、2波がBC(=コレクション)、3波がCD(=エクステンション)で、これがFFストラテジー(買い)の典型的なチャートパターンです。
FFストラテジーでは、CD上にいくつかのポイントがあります。特に、エントリーポイントとなるレートBを上抜けた水準からの値動きが重要です。利食いのターゲットは、値幅BCに対するフィボナッチ・エクステンション・レベルに基づきます。詳細は後述します。
FFストラテジーがうまく機能するためには、マーケットの勢いが必要です。全体の値動きとしては、上昇ABに対し小反落したCがあり、その後の反転でレートBの水準を上抜け、当初の上昇トレンドを回復、というチャートパターンが期待されます。それゆえ、Cへの反落が50%以上となったり、レートBの水準を上抜ける前に方向性にかける値動きが続く場合、FFストラテジーに基づくエントリーは無効となります。
言い換えると、ABにおいてしっかり上昇した後、比較的短時間の小反落(=値幅ABの50%未満にとどまる反落)によってCに到達、その後Dに向けて勢いよく上昇、という値動きこそ、エントリーのシグナルとして信頼性の高いチャートパターンとなります。
以上の通り、FFストラテジーでは、Cの確定によって全てのパラメータが定義されます。 次に、エントリーと決済の水準について説明します。以下、FFストラテジーをプロットしたチャートを幾つか例示しています。
例:
例1:NZD/USD(買い)
Before:
After:メインターゲットに到達
例2:GBP/USD(買い) - 重要指標の発表直前
Before:
After: メインターゲットに到達
※このケースでは、261.8%のエクステンション・レベルも大幅に上抜けています。
例3:ブレント原油(売り)
After: ストップロス(買い決済)
(ダマシのブレイクによる早まったエントリー)
例4:金(買い)
After:無効
(勢いを失い、値幅ABの50%のレベルに到達)
エントリー
エントリーは、レートBの水準を上抜けたタイミングです(買いのケース)。メインターゲットはDのため、以降の上昇にはしっかりした勢いが求められます。なお、Dは、値幅BCによって定義されるフィボナッチ・レベルです。
買いのケースでは、レートBより数pips上の水準でのストップオーダーが基本です。様子を見てエントリーする場合には、ストップオーダーを利用せず、レートBの水準を一度下抜けるのを待って、マーケットオーダーやリミットオーダーで発注する、という方法もあります。
- ストップオーダーであれば、確実にエントリーすることができますが、ダマシのケースでは高値掴みとなってしまいます。また、ギャップができる場合には、設定した水準よりかなり高値で掴むことになります。
- マーケットオーダーまたはリミットオーダーでエントリーする場合、レートBのブレイクが本物かダマシなのかを判断する猶予ができます。もし値動きがレートBより上で数分間留まるようであれば、良いレートを狙ってエントリーします。デメリットとしては、値を戻さずにメインターゲットに向かって急騰する場合には、エントリーのチャンスを逃すことになります。
4時間足のような比較的長めのタイムフレームに基づいてトレードする場合、5分足または10分足等を参考にして、エントリーのタイミングを掴み、直前では、さらに短いタイムフレームで、レートBの水準をブレイクする瞬間を待つと良いでしょう。以上は買いのケースですが、上下逆さのチャートパターンが売りのケースです。
ターゲット
FFストラテジーでは、ターゲットが2つあります。
- 最初のターゲットは、値幅BCに対し127.2%の水準です。この水準が、ストップロスオーダーでリスクを回避するためのブレイクイーブンポイントです。
- メインターゲットは、値幅BCに対して161.8%のエクステンション・レベルです。この水準が利食いのポイントです。マーケットの状況によっては、261.8%をターゲットにすることもあります。
上昇幅ABと下落幅BCが確定すると、その後に期待されるあらたな上昇幅CDが算出されます。もし、値幅BCが値幅ABの38.2%以下なら、メインターゲットのDは、値幅BCに対してエクステンション・レベルである161.8%か、状況によっては261.8%の水準となります。しかし、値幅ABに対しフィボナッチ・レベルの60.8%または78.6%の水準まで反落するような場合は、ターゲットのDは、値幅BCのエクステンション・レベルとなる127.2%の水準にとどまる可能性が高いといえます。無論、BCでの反落が値幅ABの50%以上となる場合は、FFストラテジーに基づくエントリーは無効となります。
ストップロス
買いのケースでは、ストップロスオーダーはレートBより少し下の水準に設定します。CDにおいて上昇トレンドを形成する中で、そのトレンドを下支えする短期的なサポートラインの少し下の水準が、理想的なストップロスの水準となります。なお、エントリーとストップロスの最大幅は、エントリーとターゲットレベルの幅以下に設定しましょう。言い方を変えれば、リスクリワード比率は100%以上(損失:利益=1:1~)とすべきです。もちろん、200%またはそれ以上に設定するのが理想的です。
最後に
- 勝率を高めるためには、中長期的なトレンドに乗ってエントリーしましょう。
- FFストラテジーを利用する場合には、マルチタイムフレーム分析をおこなうと共に、その他のストラテジーも参考にして、様々なテクニカル水準を意識しましょう。例えば、200期間移動平均が1.8560で、ロングポジションに対するメインターゲットが1.8580となるようであれば、エントリーはすべきではありません。もしエントリーしてしまったら、エクステンションの161.8%の水準まで上昇するのを期待せず、200期間移動平均を参考水準として利食いをする方がベターです。ターゲットを定めるために利用したタイムフレームが短い場合にはなおさらです。そのような時は、トレンドに変化を求めてしまいますが、変化を求めている自分に気がついた瞬間こそ、トレードに問題があることを自覚すべき瞬間です。そんな時にはできるだけ早くポジションを決済しましょう。
- 同じようなマーケットで、反対売買になるような取引をしてはいけません。例えば、DAXのロングとFTSEのショートを同時に持ったり、NZD/USDのロングとAUD/USDのショートを同時に持つようなことは避けましょう。もし、AUDが弱気でNZDが強気だと感じたならば、AUD / NZDのショートを持ちましょう。
- マーケットレートがレートBの水準をブレイクし、エントリーの注文が発注されたものの、その後、最初のターゲットである127.2%の水準に達するまでの勢いがなくなったのであれば、できるだけ早くポジションを決済しましょう。例え損切になったとしても、ストップロスの水準まで様子を見るのはやめましょう。なぜなら、FFストラテジーにおいてエントリーに求められるのは、エクステンション・レベル(=161.8%または261.8%)までのしっかりした上昇ですが、全くそのような値動きとはなっていないためです。残念ながら、あなたの期待に応えてマーケットが変動するということはありません。もちろん、思い通りにならないからといってマーケットに文句をいっても仕方がありません。変化し続けるマーケットのダイナミクスや状況に順応できるよう、ぜひ自身のトレードスキルを鍛えてください。