テクニカル分析 上級編
アンドリューズ・ピッチフォーク(Andrew’s Pitchfork)
アンドリューズ・ピッチフォークによるトレンド予測
トレーダーは、常に、マーケットのトレンドを分析していますが、トレンドの変化を予測することは、決して簡単なことではありません。そのためトレーダーの多くは、チャート上にトレンドラインやチャネルライン、移動平均線などのテクニカル指標を追加することで、値動きの波を読み、実際のブレイクなのか、それともダマシなのか、という判断を下します。
1960年代、アラン・アンドリュー博士は、マーケットの値動きがトレンドの「コア(中心)」から乖離する問題について研究を重ねた結果、チャート上にチャネルライン(取引レンジ)を描画することで、トレンドの変化(チャネルラインからのブレイク)を確認するというメソッドを開発しました。それは、正中線(中心線)およびサポートラインとレジスタンスラインからなるチャネルで構成されたテクニカル指標で、その研究成果は、アンドリューズ・ピッチフォークと名付けられました。
アンドリューズ・ピッチフォークを利用するタイミングとは
アンドリューズ・ピッチフォークを利用するタイミングとは 上図のような値動きでは、当初トレーダーはAB間における上昇トレンドを意識しますが、この段階では、一般的なトレンド分析が使用されます。その後、点Bにおいて最高値(重要な天井)を記録し、トレンドが大きく反落すると、はじめてアンドリューズ・ピッチフォークが活躍することになります。ところで、この反落によってどこまで下落するのでしょうか?このような場合、フィボナッチ・リトレースメントを利用し、サポートラインの水準を算出することで、その問いに即答することも可能となります。
アンドリューズ・ピッチフォークの描画方法とそのタイミング
上図を例にご説明しますと、当初の上昇トレンドを形成した点Aと点Bをつなぎ、線ABとし、その後の急落がサポートされた点Cと点Bをつなぎ、線BCとします。これで点Bと点Cを起点とするチャネルが前方に描かれることになります。また、点Bと点Cの中点を利用することで、そのチャネルを上下に2分割することができます。その中心線というのは、点BCの中点から、上昇トレンドの起点となる点Aに対して引き戻した線で、これがピッチフォーク(熊手)の柄の部分となります。もうお分かりかと思いますが、これらの線によって描かれた形(熊手)が、その名(ピッチフォーク)の由来となっています。
図2は、上昇トレンドの週足チャート(EUR/USD)です。点AB間において、当初の上昇トレンドが形成されています。その後、点Cで最高値(重要な天井)を記録して反落に転じていますが、次の反発が期待されるこのタイミングで、点Cから点Bに線を引き戻します。これで、アンドリューズ・ピッチフォークに必要なラインが揃いました。点Bより右肩上がりに描かれるトレンドラインは、完璧ではないにしても、強力なサポートラインとなっています。そのラインに対し、点Cから平行に引いたラインもまた、EUR/USDが直近でブレイクするまでの間、強力なレジスタンスラインとして機能しており、この2本のラインがチャネルライン(取引レンジ)となっています。ところで、上述のブレイクに鑑みると、一見テクニカル指標の誤りだと解釈されそうですが、実は、アンドリューズ・ピッチフォークによって描かれた上昇トレンドを信じ、買いポジションを保有し続けたトレーダーの評価益 というのは、上昇トレンドの間、上がり続けることになるのです。
アンドリューズ・ピッチフォークは、下降トレンドでも活躍します。下降トレンドの月足チャート(USD/CAD)では、上図のように描画されます。当初の下降トレンドは、点AB間において意識されることになります。その後、点Bで最安値(重要な底)を記録すると、点Bから右肩下がりとなるトレンドライン(1本目のチャネルライン)が描かれることなります。その後の反発で点C(重要な天井)まで上昇するも、再び反落に転じたこのタイミングで、アンドリューズ・ピッチフォークが描画されます。図を見ると、ピッチフォーク(点Bおよび点Cより描かれるチャネルライン)と中心線が、右肩下がりのトレンド形成を後押ししていることがわかります。下落の加速が懸念され、その後、中心線を下抜けたことで、次の重要なターゲットは、点Bから右肩下がりに引かれたラインとぶつかるポイントとなります。
アンドリューズ・ピッチフォークの見方
トレーダーは、アンドリューズ・ピッチフォークの外側のラインから、取引レンジおよびトレンドの強さ(傾き)を読み取ります。そして、サポートラインからの反発やレジスタンスラインからの反落を待って、トレンドの方向や強さに合わせたポジションサイジングにて取引を行います。基本的な見方としては、終値において、下降トレンドでレジスタンスラインを上抜けたり、上昇トレンドでサポートラインを下抜けた場合、その後にトレンドは大きく変わる可能性が高いと判断します。一方、上昇時下降時を問わず、中心線を割らずに戻されるような場合、トレンドが弱まっていることになるので、様子見とします。そして、もし終値において、上昇トレンドでレジスタンスラインを上抜けていたり、下降トレンドにおいてサポートラインを下抜けている場合は、トレンドの勢いが加速していると判断します。
ピッチフォーク(熊手)の歯を追加するケース
トレンドが、中または低水準のボラティリティに留まっている限り、ピッチフォークの歯は、標準となる3本で十分です。しかし、値動きが激しくなった場合、どうすれば良いでしょうか。その場合、中心線と外側の歯の幅をブレイクした方向に広げるか、ピッチフォークの半分の幅を利用して外側にもう1本追加する、という方法が考えられます。
図4は、週足チャート(EUR/USD)において、右肩上がりのレジスタンスラインを上抜けた例です。上昇トレンドはさらに勢いを増しています。このブレイクにおける次のターゲット(上昇幅)というのは、ベースとなるピッチフォークチャネルの半分の幅となります。つまり、レジスタンスラインに対して平行に追加した赤いラインの水準です。なお、直近の足を見ると、ブレイク寸前において、上昇圧力が高まっていることがわかります。
アンドリューズ・ピッチフォークは、トレンドの方向や強弱、およびトレンド自体の変化を分析することのできる非常に優れたツールだといえます。そして、他のテクニカル指標と併用することで、分析の精度をより高めることができます。そのため、多くのトレーダーは、標準的なアンドリューズ・ピッチフォークに、フィボナッチ・リトレースメントや(熊手の)歯を追加して利用しています。