今週の見通し:ISM、各種PMI、NFPと2件の中央銀行会合が焦点に

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Article By マーケットアナリスト

新しい月の始まりにあたって、アジア太平洋地域、欧州、米国で購買担当者景気指数(PMI)の速報値発表が多数予定されている。さらに米国の製造業とサービス業を対象にした企業調査による昔ながらのISMレポート、日銀短観、またオーストラリア準備銀行(RBA)やニュージーランド準備銀行(RBNZ)といった中央銀行の会合も控えている。そして今週の締めくくりとして、トレーダーが注目する非農業部門雇用者数が金曜に発表される。それに先立って求人労働異動調査(JOLTS)、新規失業保険申請件数、ADP雇用者数レポートも注目を集めるだろう。これ以上の銀行破綻がないとすれば、経済データと利回りが再び金融市場を動かす要因として戻ってくるはずだ。

  

  • 先週の状況:
  • 今週の見通し(カレンダー):
  • 今週の見通し(主なイベント):

 

先週の状況:

  • 米国の政府当局は地方銀行のバランスシートを強化するために融資枠を拡大し、破綻したシリコンバレー銀行の買収に合意するようファーストシチズンズ銀行に促した
  • 中国の政府公式データによると、製造業利益は今年の初めの2か月で-22.9%に急落
  • 日本の2月のサービス業PPIは前年比1.8%で、前回の1.6%から上昇
  • 米国消費者信頼感(英文のみ)は「期待指数」がわずかに上昇したものの、「現状指数」は低下した。
  • 年度末の資金送還と22兆円の財政出動報道を受け、企業が利益計上のために資金を動かしたこともあり、328日には円高が進行
  • FRBのウィリアム・バー理事は、シリコンバレー銀行の破綻について議会で事前に準備された証言(英文のみ)をし、最終的に破綻の原因は経営陣の不手際にあるとして、米国の銀行は健全であると述べた
  • BoE総裁はSVBの破綻に関し、ソーシャルメディアとデジタルバンキングの時代が、銀行の極端に拙速な行動につながっていると述べた
  • 米国住宅市場低迷の最初のサインが現れつつあり、住宅販売保留件数が3ヶ月ぶりに増加し、6ヶ月ぶりの高水準となっている
  • これを受けてバンク・オブ・アメリカは、グローバルな為替市場が流動性不足に陥る危険性があると警告。これはゴールドマン・サックスのトップトレーダーが週末に述べた、自分たちは信用収縮危機に向かっているという発言を反映している。
  • オーストラリアのインフレは6.8%に。7.1%の予想と、前回の7.4%を下回り、RBAに対して金利の据え置きを求める声が高まっている。しかし金利据え置きか25bpの利上げかで経済界の意見は割れているようだ(英文のみ)
  • アジアセッションではアリババの株価が16%近く急騰(英文のみ)。同社が6社への分割を予定しており、そのほとんどが資金調達や上場を目指しているというニュースを受けたもの

 

市場動揺の要因

  • 1年のインフレ率10%超を受け、英ポンド/米ドルは8か月ぶりの高値に
  • ユーロ/米ドルは上昇後急落
  • 米ドル/日本円は130円までのスイングロー
  • ゴールドは2,000ドルの下落
  • ASX6,900ドルの安値を記録
  • 米国株は上昇

 

市場のポジショニング

投機筋が外国為替とコモディティ市場でどのようなポジションを取っているかについては、毎週発表されるトレーダーのコミットメントに関するレポート(COTを参照してほしい。(米国時間日曜深夜、アジア時間月曜早朝に更新)

 

今週の見通し(カレンダー):

  • 米国:ISM製造業景況指数、ダラス連銀PCR、建設支出
  • カナダ:経済展望調査、カナダ消費者期待調査
  • EU: S&Pグローバル製造業PMI-最終値(イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、ユーロ圏)
  • 英国:S&Pグローバル製造業PMI-最終値
  • スイス:CPI3月)
  • 中国:Caixin製造業PMI2月)
  • 日本:日銀短観、じぶん銀行製造業PMI速報値
  • オーストラリア:ジュドー銀行製造業PMI(最終値)、建築許可件数(2月)、先行指標(2月)、小売業(最終値)
  • ニュージーランド:RBNZ シャドウボード会合

44日(火曜):

  • 米国:製造業出荷件数、在庫数、受注件数
  • カナダ:建築許可
  • EU:住宅価格指数、生産者物価、建築許可、ドイツ貿易収支、BoEシルバナ・テンレイロ委員、スコットランド経済学会の経済政策講座で基調講演
  • 日本:前年比マネタリーベース
  • オーストラリア:RBA金利決定
  • ニュージーランド:NZIER四半期企業意見調査

45日(水曜):

  • 米国:求人労働異動調査(JOLTS)、ADP雇用者数、住宅ローンデータ、米国消費財貿易収支、OPECおよび非OPEC閣僚級会合、ISM非製造業景況指数、S&Pグローバル複合およびサービス業PMI(最終値)
  • カナダ:国際貿易収支
  • EU:国際収支、製造業受注件数(ドイツ)、製造業生産、サービス業PMI-最終値(イタリア、フランス、スペイン、ドイツ、ユーロ圏)
  • 英国:国別のサービス業輸出入、S&Pグローバルサービス業PMI最終地、BoEシルバナ・テンレイロ議員、スコットランド経済学会の経済政策講座でパネリストとして登壇
  • 日本:じぶん銀行サービス業PMI
  • オーストラリア:RBAフィリップ・ロウ総裁がナショナルプレスクラブで講演、AIG製造業指数、ジュドー銀行サービス業および複合PMI(最終)、RBAチャートパック:オーストラリアの経済と金融市場に関するグラフ
  • ニュージーランド:RBNZ金融政策レビューおよびOCR決定

46日(木曜):

  • 米国:失業保健申請数
  • カナダ:労働力調査、Ivey PMI
  • EU:小売業、S&Pグローバル ユーロ圏建設業PMI(イタリア、フランス、ドイツ、ユーロ圏)
  • 英国:ハリファックス住宅価格、S&Pグローバル建設業PMI
  • スイス:雇用レポート(3月)
  • 中国:Caixinサービス業PMI2月)
  • 日本:家計調査、海外投資
  • オーストラリア:RBA金融安定性レビュー、貿易収支(2月)、雇用者数週次データ

47日(金曜):(グッドフライデー)

  • 米国:非農業部門雇用者数、 API週次統計報告書(WSB)、消費者融資

 

今週の見通し(主なイベント):

  1. 非農業部門雇用者数
  2. アジア太平洋地域、欧州、米国のPMI速報値(および米国の各ISMレポート)
  3. RBA金利決定
  4. RBAのフィリップ・ロウ総裁がナショナルプレスクラブで講演
  5. RBNZ金融政策レビューおよびOCR決定

 

アジア太平洋地域、欧州、米国でのPMI速報値

PMIデータは今後の経済成長の可能性を先取りして示す指標としてつねに注視されている。一般に速報値の発表が注目を浴び、特に増大または縮小(50を超える/切る)のサプライズがあったときは市場のボラティリティが高くなる場合がある。しかし中央銀行が金融引き締めのサイクルを近いうちに終えるかどうか、トレーダーたちが見極めようとしている中で、PMIのデータセットはこれまでになく重要になっている。

今週はサービス業、製造業、複合PMI(サービス業と製造業を合わせたもの)、そして昔ながらのISM景気指数レポートが発表される。最近関心を集めているのはサービス業のPMIが予想よりも速く増大していること、そして製造業の契約が伸び悩んでいることだ。また「支払い価格」も世界的なインフレ圧力の見通しを示すものであり、同様に「新規受注」もインフレ率の総合値の先行指標となる。

 

非農業部門雇用者数:

この指標もつねにトレーダーの注目を集めるもので、特にFRBが市場の圧力に屈して今年中に利下げを一旦停止するか、あるいは利上げを継続するのかをトレーダーが見極めようとする中、かつてなく重要になっている。最終的には、歴史的な基準からすると雇用情勢は引き続きひっ迫しているものの、以前ほどではなくなっている。雇用の伸びという点では、過去3か月のNFPはいずれも239,000人を超えており、30万人を超えた月と50万人を超えた月があった。それでも12か月間のトレンドとしては明らかに下降傾向にあり、雇用の伸びは緩やかに勢いを失いつつある。ADPは引き続き安定しており、雇用参加率は上昇傾向にあるが、失業率上昇と不完全雇用の谷に向かうごく初期の兆候が表れている。インフレ率が依然として4%を超える中、雇用が減少に転じ、失業率が大幅に上昇するまでは、FRBが「利下げ」という言葉を検討するかどうかさえ疑わしい。そのためNFPレポートが堅調な値を打ち出してきた場合、米ドルが買い圧力にさらされる可能性が残る。    

 

RBA:据え置きか、利上げか

RBAが火曜日に25bpの追加利上げを実施するのか、あるいは金利据え置きとして記録的な引き締めに終止符を打つのかは、ソーシャルメディア上で熱い議論になっている。公平を期すために言えば、どちらのシナリオにも確かな根拠がありる。インフレ率は目標である23%2倍以上をつけており、今後順調に低下することもなさそうだ。ただしRBAの総裁本人によると、現在のインフレ水準ではなくインフレ飲み込み(これは十分に固定されている)に基づいて政策を決定しているという。しかし雇用市場はまだひっ迫しており、支出は軟化しつつも依然として拡大傾向にある。筆者としてはタカ派的保留となる可能性が高いと考えている。つまり今月のインフレ率も緩和していることから金利は据え置きとし、四半期でのインフレ率が不都合なほど高ければ5月に再度利上げをする選択肢を残すということだ。この場合、利上げまた据え置きの決定それ自体よりも声明文のメッセージが重視される可能性が高い。

さらに会合翌日にはロウ総裁の講演が予定されており、声明文のメッセージに誤解があった場合はそこで微調整することもありうる。「利上げの一旦停止」の話題がまた空振りに終わるのかどうか、オーストラリアドルにとっては重要な週になるだろう。

金融市場がRBAの金利据え置きを確信している一方、エコノミストの間では意見が分かれている

 

RBNZは利上げか、据え置きか

RBNZのチーフエコノミストは先週、OCV(オーバーナイトキャッシュレート)はほどよく高めであり、経済に対して望ましい契約効果をもたらしているとともに、需要減少の歓迎すべき兆候があると述べた。またニュージーランドは穏やかな景気後退に入りつつあるようで、それ自体デフレの効果がある。これは4.75%での金利据え置きを正当化するには十分だろうか。おそらくそうは言えないだろう。RBNZは第1四半期のインフレ率を7.3%と予想しており、2月の会合で「50bpの引き上げに重点を置いた」議論が行われ、25bpの利上げはあまり考慮されなかった。

しかし来週はおそらく25bpの利上げが正当化されるだろう。景気後退の可能性が浮上する中で、金利据え置きと50bpの強硬な利上げの間の良い妥協点になるからだ。1か月物オーバナイト・インデックス・スワップ(OIS)は4.96%で、これは金融市場が25bpの利上げを強く望んでいることを示唆している。これから週末にかけてエコノミストの見解が明らかになるだろう。

 

 

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