米ドルテクニカル分析:ユーロ/米ドル、ポンド/米ドル、米ドル/カナダドル

Article By シニアストラテジスト

米ドルの話題:

  • 今週の前半に強さを見せた米ドルでは、木曜日と金曜日にプルバックが起こり、特に金曜日朝の非農業部門雇用者数の発表後には大きな動きを見せた。
  • 米ドルは現在101.80102.00のサポートゾーンの底に位置しており、ここは依然としてチャート上の重要なポイントとなっている。下降ウェッジパターンを形成する長期的な統合は現在もまだ維持されており、高値の上昇に続くプルバックの後、短期的な強気トレンドが引き続き焦点となっている。来週は、木曜日に発表される米国の消費者物価指数(CPI)が値動きのカギを握るだろう。CPIの総合値は先月の3.0%から3.3%への上昇が見込まれており、コアインフレ率は横ばいの4.8%と予想されている。

 

過去2週間の流れを引き継いだ強気トレンドから始まり、米ドルの強気筋にとってはごちそうの後に断食を強いられるような週となったそしてさらに興味深いのが、チャート上のどの地点でこの現象が発生したかということだ。筆者はかねてからドル指数(DXY)の102近辺に言及してきたが、これは6月の安値の設定につながった重要なフィボナッチレベルにあたるからだ。そしてブレイクダウンの失敗からプルバックが始まった時点では、売り手がこのレベルを維持して値下がりのトレンドを続ける可能性があったことから、ここが弱気筋の反応をうかがう重要なポイントとなっていた。

しかし、月曜日と火曜日には強気筋がDXYをこの水準より上に押し上げ、水曜日には強い上値追いが始まり、米ドルは3週間ぶりの高値まで上昇した。木曜日にレジスタンスレベルが維持された後は、売り手が戻ってきて101.80102.00のレベルまで価格を押し下げた。そして火曜日のWebセミナーでお伝えしたとおり、このエリアでのサポートが維持されれば、強気相場継続のシナリオが実現する可能性が残る。

 

米ドル‐DXY日足チャート(参照用、FOREX.comのプラットフォームでは利用できません)

 

チャート作成: James StanleyTradingviewのデータによる。

 

米ドルの長期的な値動き

一歩下がって週足チャートに目をやると、現在はトウバになっており、強気筋にとってはあまり心強い状況には見えない。週の初めからの強気の動きの大部分が金曜日のプルバックで帳消しになり、強気筋がこの期間では敗北を喫したことを示唆している。しかし依然としてチャートではまだ下降ウェッジ型の価格収束が際立っており、このタイプの収束状況では流れが急に変わることもありうることから、さまざまなシナリオの可能性を考えておく必要がある。

米ドル‐DXY週足チャート(参照用、FOREX.comのプラットフォームでは利用できません)

 

チャート作成:James Stanley; Tradingviewのデータによる

 

ユーロ/米ドル

こうしたシナリオの一部として、ユーロ/米ドルの重要なサポートスポットで強気筋が力強い反応を見せており、これが金曜日の米ドルのプルバックに一役買っている。

ここで注目される価格水準は、筆者が火曜日のWebセミナーで言及したのと同じ1.0943ドル近辺だ。この通貨ペアでの目下の高値にあたる1.1275ドルをとらえたのと同じ値動きからの、50%フィボナッチリトレースメントにあたる。この水準が最初に視野に戻ってきたのは先週の金曜日で、その後今週の初めには何度か売り手がこの水準を割り込むことを試み、下降ウェッジの形成につながった。

このウェッジはNFPの発表前に崩れたものの、このデータに対する反応に後押しされて強気筋が戻り、1.1000の心理レベルを一気に上抜けした。本稿執筆時点では、再び1.1033のレジスタンスラインを試す流れとなっており、短期的な強気の反転が見られる。しかし大きな問題は、特に7月のブレイクアウトが見せかけに終わった後のメッセージを受けて、これが長期的な平均回帰の流れに影響を与えられるかどうかということだ。

 

ユーロ/米ドル4時間足チャート

チャート作成:James Stanley Tradingviewのユーロ/米ドル

 

ポンド/米ドル

木曜日は利上げを受けた売り展開となり、1.2677ドルの非常に重要な価格水準を再び試す流れとなった。これについては火曜日のWebセミナーで詳しく説明したが、木曜日の朝にはここが焦点となった。売り手は一時的にこの水準を割り込む場面もあったものの、下落はそれほど長くは続かなかった。

日足チャートではこの値動きがトンボを形成し、金曜日には強い動きが見られたことから明けの明星パターンが形成された。こうしたパターンの形成はしばしば強気の反転を狙ったアプローチを受ける。英国ではインフレ率が依然として高く、イングランド銀行がその対処のために今後も利上げ継続を余儀なくされるという状況を考慮すると、DXYで弱気筋が価格を押し下げると見込まれる場合、米ドル安のシナリオではこの通貨ペアが魅力的な後ろ盾の1つになるかもしれない。

次のレジスタンスラインは1.2800ドル近辺で、その後は1.2848ドルが続く。

 

ポンド/米ドル日足チャート

 

チャート作成:James StanleyTradingviewのユーロ/米ドル

 

米ドル/カナダドル

米ドル/カナダドルについては、木曜日に直近のブレイクアウトから値上がりを続けているときに記事を書いた。また、火曜日にウェッジパターンのブレイクアウト後に高値を更新したときにも触れた。

6月にはカナダ銀行(BoC)による予想外の利上げを受けてレンジ相場を脱したことから、このペアでは長期的な見通しも注目に値する。利上げによってこの通貨ペアは急落したものの、結局は長期的なトレンドラインで下げ止まり、安値はこの水準で維持された。値下がりの勢いがなくなったことでほどなく下降ウェッジが形成され、これは2週間前のWebセミナーでも取り上げた。今週は上向きのブレイクアウトが見られたことから、下げ相場はひと段落したと思われる。

注目すべきは現在の日足だ。多くの分野で米ドル安が続いているが、本校執筆時点で米ドル/カナダドルの日足は値上がりしており、今朝のNFP報告後の米ドルの状況よりもカナダドル安のほうが際立っている

このため、先にDXYの項目で検討したサポートラインを強気筋が維持できれば、このペアは米ドル高の場合に、引き続きより魅力的な市場のひとつになる可能性がある。また、来週にかけてポンド/カナダドルの強気シナリオに関心が集まる可能性もある。

米ドル/カナダドルでは1.3300ドル付近、そして再び1.3261ドル付近で、より高い水準での安値のサポートが見られる可能性がある。

米ドル/カナダドル日足チャート

チャート作成:James Stanley Tradingviewの米ドル/カナダドル




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