米ドルの話題:
- 米ドルは重要なレジスタンスにほど近い価格を維持している。ここは今年に入ってから、強気筋が何度か突破を試みて果たせなかったのと同じトレンドラインだ。
- 木曜日に発表される消費者物価指数(CPI)が米ドルの次の主な押し目となる可能性が高く、その影響は現在サポートラインを維持しているユーロ/米ドルの他、金、米ドル/カナダドルなど、今回のWebセミナーで扱った他の市場に波及する可能性がある。
- Webセミナーでは最後に米国株を扱った。S&P 500とナスダック100は短期的には弱気傾向で、いずれも安値が下落している。ラッセル2000とダウ平均株価はやや様相が異なり、セッションの後半で詳しく検討した。
経済カレンダー上では今週はあまり大きなイベントがなく、今回のWebセミナーの冒頭で触れた通り、値動きの傾向とテクニカル分析がより重要になる。ただし、7月の米国消費者物価指数(CPI)の発表は重要だ。先月、総合CPIが横ばいの3.0%となったときは大きく値が動き、米ドルの急落につながった。翌週のWebセミナーで述べたとおり、ドル指数(DXY)はそこから重要なサポートレベルを割り込み、このトレンドを継続させるために弱気筋がさらに高値を引き下げに来るかどうかが大きな分かれ目となった。
結局下落トレンドは続かず、7月のFOMCとECBの金利決定を受けて米ドルはさらに値を戻した。木曜日に予定されている次の米消費者物価指数(CPI)の発表を前に、米ドルは未だ強気のブレイクアウトの可能性を維持している。
今年はこれまでのところ、米ドルでは価格の収束が続いて下降ウェッジパターンを形成している。下降ウェッジのレジスタンス側は何度か試されており、 5月と6月には2週間にわたってじりじりと値上がりした後102までのプルバックにつながった他、7月にはこのラインに触れた後すぐに反転して、のちに米国CPIの発表に後押しされてさらに値下がりした。
米ドル - ドル指数(DXY)週足チャート(参照用、FOREX.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley; Tradingviewのデータによる
米ドル短期
より短期的には、米ドルの値動きには強気の構造が明確に残っている。週末を前に筆者は101.80~102のサポートゾーンを強調するレポートを書いたが、後者の102は6月のスイングローに当たる。
その後もこのサポートゾーンで安値が維持されており、日足チャートでは不完全な明けの明星パターンが見られ、高値のさらなる上昇の可能性を示唆していた。しかしこのレジスタンストレンドラインが頭上に控えていることから、強気筋にとってはここが次の重要な前線となるだろう。
木曜日に発表される米国のCPIは3.3%と予想されており、これは物価がピークをつけた昨年6月以来の上昇となる。もし予想を上回るサプライズがあれば、103.45や103.82のレジスタンスに向かうさらなる強気相場につながるかもしれない。
米ドル - ドル指数(DXY)週足チャート(参照用、FOREX.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
ユーロ/米ドル 1.0943ドル
ユーロ/米ドルは依然として1.0943ドルの重要なサポートラインに位置している。筆者はここ数週間にわたってこの水準を話題にしているが、1.0943ドルは6月にも注目のポイントとなっていた。これは1.1275ドルの高値につながったのと同じフィボナッチリトレースメントの50%にあたり、さらに2021~2022年の大きな動きの61.8%にも該当する。
ユーロ/米ドル週足チャート
チャート作成:James Stanley, Tradingviewのユーロ/米ドル
ユーロ/米ドル短期
弱気筋が現在の動きを勢いよく続けており、欧州の最近の経済データの陰りも価格変動の一因となっている。下向きのトレンドラインが焦点になっているが、今日はすでにここがレジスタンスとなって、引き続き弱気の三角持ち合いを形成している。しばしば弱気のブレイクダウンを狙ってアプローチを受ける構図だが、弱気筋はまだ1.0943ドルを割り込むことはできていない。61.8%のリトレースメントにあたるレジスタンスラインでの厳しい反応を考えると、1.0943ドルの水準にまだサポートが残っているかもしれず、木曜日の米国CPI発表を前に乱高下する可能性がある。
この通貨ペアの次のサポートレベルを筆者は1.0845ドル付近とみているが、ここは米ドルで偽のブレイクアウトを引き起こしたCPI発表の前、7月前半に焦点となった水準だ。
ユーロ/米ドル4時間足チャート
チャート作成:James Stanley, Tradingviewのユーロ/米ドル
米ドル/円
米ドル/円は143.40円の重要なレジスタンスレベルに戻っている。このフィボナッチレベルで値上がりの勢いが失速し始めたことから、先週のWebセミナーではこの水準を取り上げた。先週木曜日には宵の明星が形成され、金曜日には1日にわたって下落したものの、今週は現在のところ値を戻してこのレジスタンスレベルに戻ってきている。
また、過去に短期的なレジスタンスラインとなっていた142.89円近辺のサポートに向かうプルバックも見られることから、強気筋は近いうちに再びブレイクアウトを狙うかもしれない。もちろん、それが実現した場合に持ちこたえられるかどうかが大きな問題だ。頭上には6月下旬に急な反転が起きた145ドル台が控えている。
米ドル/円 日足チャート
Chart prepared by James Stanley, USD/JPY on Tradingview
金価格スポット
金は1925~1932ドルのサポートを試している。ここは過去にサポートラインからレジスタンスに変わったことのあるゾーンだ。ここでの課題は、弱気筋がブレイクダウンを押し進めるチャンスがあったにもかかわらずまだ達成していないということで、理由が気にかかるところだ。1900ドル近辺に見られたような弱気筋の罠がいくつもあったことから、ブレイクアウトへの挑戦は最近の金相場では特に難しいように思われる。
以前のサポートレベルである1943ドル近辺はすでにレジスタンスレベルとなっており、強気筋にとってはかなり無理のある水準になるのでここが再び視野に入るのは理想的とは言えない。とはいえ短期的には、レジスタンスレベルとなる可能性があるのは1932ドル近辺、あるいはすでに試されている1943ドルの水準を強気筋が何とか突破すれば、おそらく1952ドル周辺だろう。
金(XAU/USD)4時間足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの金価格
ポンド/米ドル
ポンド/米ドルは先週、1.2667ドルの重要なサポートレベルを試し、ここはイングランド銀行の金利決定が行われた木曜日に日足の安値を維持するのに役立った。この日の日足は同事線に終わり、金曜日には上げ相場となって明けの明星が形成されたものの、セッション終盤の売りが金曜日のローソク足の上端を押し下げたことから、上昇トレンドには疑問符がついた。
英国のインフレ状況を踏まえると、英ポンドの強さには注目すべきだ。英国では依然としてインフレ率が高く、BOEが引き続き対応を迫られていることから、(インフレ率の低下やFOMCをめぐる観測による)米ドルの弱気シナリオはここで利益をもたらす可能性がある。
しかしこのシナリオの可能性を維持するには1.2667ドルのサポートラインを守る必要があり、その上には強気筋の正念場として1.2848ドルのレジスタンスが控えている。
ポンド/米ドル日足チャート
チャート作成: James Stanley、 Tradingviewのポンド/米ドル
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