ドルの話題:
- 今朝のデータを受けて、米ドルは急反発した。消費者信頼感指数は予想116、前回117に対し106。また、JOLT求人件数も大きく下落した。これらは通常はインパクトの強い発表ではないものの、市場の注目を集めたのは確かで、米ドルではプルバックに繋がり、合わせて株価はブレイクアウトを見せた。
- 今週はさらに経済データの発表が予定されており、木曜日にはFRBが重視するインフレ指標のPCE、金曜日にはインフレと雇用の状況をともに反映する非農業部門雇用者数が発表される。これらはそれぞれ9月の政策金利決定前に私たちやFRBが目にする最後の統計となるが、今朝からは追加利上げの見込みは低くなっている。
米ドル相場はいくつかの意外なデータが出たことで、普段よりも大幅に値を戻した。朝方にかけて米ドルは再び104.31レベルを試す展開となったが、ここは先週金曜日の高値を支えた水準だ。米ドル/円の動きは特に強く、今朝の米国市場の取引開始時には2023年の高値を更新していた。
しかし午前10時、米ドルは2つの別々のデータにより打撃を受けた。消費者信頼感指数が予想を大きく下回り、予想116、前回117に対して106となったのだ。消費者信頼感指数は先行指標として扱われることが多く、過去1年半の各国の利上げの影響を世界が見極めようとする中、こうした先行指標は普段よりも高い注目を集めている。また午前10時にはJOLTS求人件数が発表されたが、ここでは求人数の大幅な下落が明らかになった。これは労働市場の弱さを示すだけではなく先行指標としての性質もあり、企業が雇用を減らすということはしばしば景気の先行きについて弱気な見通しを持っているということでもある。
日足チャートではこれまでのところ、米ドルの強気テーマが強いプルバックを生み出しており、この日の足ローソク足は予想を下回るPMIの発表に助けられた先週水曜日のものと非常によく似ている。当時の日足チャートでは弱気のピンバーが形成されたが、木曜日には103.27でサポートが現れ、安値の上昇を維持した後、強気なアウトサイドバーが形成されて、金曜日には2ヶ月ぶりの高値を更新した。
今日のウェビナーのテーマは、ジョン・テンプルトンの言葉だ。「悲観論が頂点に達した時が最高の買い時であり、楽観論が頂点の時は最高の売り時である」。
もちろんこれは絶対的に正しいわけではないが、逆張り主義を支持するもので、トレンドを追うと良くない結果につながるという事実を物語っている。とはいえ、トレンドの中でプルバックのテーマを探す場合はまた別の話になるかもしれない。強気相場のシナリオにつながりうる材料から短期的に悲観論が出る場合があり、大局的には強気トレンドであっても短期的な弱気テーマになる可能性がある。さらにトレンドの構築にとってより重要なのは(多くの人の意見では)、強気筋が高値圏で何をするかではなく、相対的な安値圏で、あるいはサポートラインを試す場面でどう反応するかである。これこそが、先週後半に見られたような安値上昇の維持や強気相場の継続につながる。
現在もこうしたシナリオに近いものが見込まれる。というのも、DXYに逆トレンドの動きが織り込まれているからだ。これは強気筋が絶対に負けないというわけではない。7月のブレイクダウンの後、弱気筋がトレンドの維持に失敗したように、おそらく強気筋は失敗する可能性が高い。トレンドの質は、プルバック時に市場参加者がどのように反応するかでわかるが、米ドルでは週の後半に大きなデータの発表を控えた今がまさにその時にあたる。
DXYについては、Webセミナーで筆者が注目したのは価格の合流が見られる103.45だった。103.45は昨年12月のスイングローで、その影響は今も続いており、さらに3月と5月のスイングハイをつないだ弱気のトレンドラインと合流する地点でもある。その下には103.27というおなじみの水準があり、この水準までは強気筋に勝ち目がある。しかしここを割り込めば強気トレンドのシナリオに疑問が生じ始め、102.85~103.00を試すと大きな節目となるだろう。もし強気筋がここを守れなければ、102.45~102.60まで下落する可能性がある。この時点では、102.85~103.00付近まで高値が下がることで弱気相場に向かう可能性も出てくる。
値上がりする場合には主要なレジスタンスラインは104.31にあり、強気筋が現在の動きを続けるにはここを超える必要がある。その後、5月のスイングハイ104.70、そして2021~2022年の大きな動きの38.2%リトレースメントでもある105という大きな数字が控えている。
米ドル - DXY 日足チャート(参考用。FOREX.comプラットフォームではご利用いただけません)。
チャート作成:James Stanley、データ提供:Tradingview
ユーロ/米ドル
7月の欧州のデータは一転して悪化し、欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続体制は暗雲に包まれ始めた。しかし、最近のデータはそれほど悪くなく、ECBはもう一度利上げをするのではないかという期待が高まっている。
Webセミナーではこの点についてかなり時間を割いて話したが、現時点では、強気筋がこのペアのプルバックを押しのける可能性がある。引き続き重要なのは1.0845ドルのレベルで、ここは金曜日には高値を維持し、今日の下落ウェッジのレジスタンスと合致する地点だ。ここからブレイクアウト、さらにある程度の値上がりに続いており、短期的に高値を更新している。問題はこの流れが続くかどうかだ。1.0900ドル、その後は1.0943ドル付近が長期的なレジスタンスとなる可能性があり、弱気トレンドのシナリオとして引き続き注目される。
ユーロ/米ドル日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのユーロ/米ドル
米ドル/円
今日のプルバックのテーマは米ドル/円で特に顕著に現れ、2023年の高値更新まで急伸してスタートした。Webセミナーではこのシナリオにおけるキャリートレードの役割に焦点を当てつつかなりの時間をかけて開設した。
145円の心理的レベルでは安値が上昇してのサポートとなる可能性があり、また145.68円付近にも短期的な注目ポイントがある。日足は現在弱気のアウトサイドバーを形成しており、短期的な焦点は下値のテーマに絞られる可能性があるものの、145円レベルのサポートの再テスト時に強気勢がどのように、いつ、反応するかが大きな問題だ。
米ドル/円 日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
米ドル/カナダドル
米ドルがかなりのプルバックを見せる中、米ドル/カナダドルの動きは比較的緩やかで、月曜日と同じレベルのサポートを維持している。ここは先週の先週の木曜日のレジスタンスであった。
これはカナダドルの弱さがこの問題に追加的に影響を及ぼしているということで、筆者の意見では、米ドル/カナダドルのチャートはカナダドルの弱気筋からの圧力を受けて、過去1ヶ月間の米ドルチャートの双曲線バージョンをなしているように見える。
このため、米ドル/カナダドルは引き続き米ドル高シナリオにとってより魅力的なペアの1つとなる可能性がある。このプルバックがもう少し進んだ場合にサポートになりうる位置として、1.3500ドル近辺が引き続き注目される。のレジスタンス側では1.3652ドルの水準が大きく迫っており、これは4月と5月の両方で強気筋にとって硬い壁となっていたが、その後、6月には売り手が攻勢にでた。
米ドル/加ドル 日足チャート
チャート作成:James Stanley、TradingviewのUSD/CAD
SPX
株式にとって8月は残酷な月だった。ここ1週間ほどまでは。米ドルの強さが、株式が変化するペースと重なっているが、ここでの大きな問題は、この強さが月末の動きに関連したものなのか、それとも米国の弱いデータとFRBが年内の利上げを見送るかもしれないという見通しから強気の反応が形成されているからなのか、ということだ。
S&P 500では、8月は3月以来の安値・高値更新となった。そして3月といえば、もちろん銀行危機によって、米国の地方銀行が揺らぐ中、FRBは利上げを打ち切るかもしれないとの見方が広がった時期である。
それ以来、2回の利上げが実施されたが、8月に入り、米国のデータが引き続き好調であったことから、FRBの利上げが注目され始めた。というのもアトランタ連銀のGDPNowモデルでは、GDPが5.9%成長するとの予想があり、FRBはまだ利上げを終えていない可能性を示唆しているからだ。
本日の朝は、「悪いことは良いことだ」という命題の証明となっている。悪い経済データは利上げ縮小への期待をもたらし、米ドル安と株高を促進する。そしてここでの問題は、31日(木)に発表されるPCE(個人消費支出)と9月1日(金)に発表される非農業部門雇用者数により、これが継続するかどうかということだ。S&P500先物は25日に安値を更新し、今朝は高値となった。これで先週木曜日の陰線包み足は意味をなさなくなたった。現在、4500の心理的節目をトライしており、4485、4467、4447と複数のサポートがあることから買い手が守りべき強気の構造がある。
S&P 500価格4時間足チャート(指標のみ、FOREX.comでは利用不可)
Chart prepared by James Stanley; data derived from Tradingview
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