米ドルの話題:
- 米ドル指数は今週ふたたび102を試し、ここでDXYの安値が維持され、一方で再度103のレジスタンスを試す反発を見せた。
- 来週はFRBが重視するインフレ指標であるコアPCEが金曜に発表され、焦点はインフレに移る。その前に米ドルの価格変動につながるデータとして、火曜日には耐久財と消費者信頼感、木曜日には第1四半期GDPの確報値が発表される。
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ドル円は先週金曜に再び主要なサポートレベルを試した後で今週を迎えた。
これは米ドル指数では102にあたり、2021年~2022年の強気トレンドの50%にあたる。おそらくより重要なポイントは、先週このシリーズで取り上げたように、102より下にある。101近辺は二重底と弱気の三角持ち合いの安値に近く、今年はこれまで2度にわたってドル指数の安値の維持につながっている。
102近辺の水準は先週金曜日、FOMCとECBの政策金利決定直後に射程に入り、今週前半には反発につながった。しかし水曜日に行われたハンフリー・ホーキンス報告書に関するパウエル議長の証言はこの時の強気筋の取り組みを打ち消したようで、木曜日午前の取引中に価格は再び押し下げられ、このサポートレベルを試す流れに入った。 しかしここで買い手が強い反応を見せ、金曜朝には欧州のPMI発表を受けてさらに買い展開が加速した。欧州のPMIは急落しており、欧州中央銀行(ECB)が今後さらに利上げを続けるかどうかそれほど簡単には見通せないという状況が浮き彫りになったためだ。
このシリーズでいつも触れているとおり、ユーロは米ドル指数相場の57.6%を占めているため、この2つの市場はかなり連動している。木曜日の米ドル指数の安値は、ユーロ/米ドルが1.1000ドル近辺のレジスタンスを試したのと軌を一にしており、金曜のPMIデータ発表の前後にはここからさらに大きな売り展開(そしてドル指数の値上がり)が見られた。
米ドル-米ドル指数日足チャート(参照用、Forex.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
より広い視野で見た米ドルの動き
一歩引いて米ドルチャートを見ると、2023年のこれまでの取引で見られたのと同様の合流の状態が続いている。上側にはいくつか大きなレジスタンスとなる地点があり、6月初旬の取引で上昇を止めた下降トレンドラインがその最たるものだ。その前に、より短期的なレジスタンスレベルが103.45に控えており、これは昨年末の安値を支えたサポートラインだった。
このレベルでは2週間にわたる攻防があり、強気派はまだ日足の終値をこのトレンドラインより上には持ち込めずにいる。近いうちに買い手がブレイクアウトを起こせれば、次のレジスタンスは同じフィボナッチスタディーからの38.2%のリトレースメントとなり、これは105.00の心理レベル付近にあたる。
米ドル-米ドル指数週足チャート(参照用、Forex.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
ユーロ/米ドル:ECBはFRB以上にタカ派的な姿勢を維持できるか
1年前にさかのぼると、ユーロは急降下の真っただ中にあった。インフレ率は高止まりし、ECBがハト派的姿勢を続けていたためだ。中央銀行は成長を妨げることを恐れて利上げに慎重な姿勢を示していたが、問題は膨らみ続け、ついには政策引き締めの必要性を無視できなくなった。ECBは7月になるまで利上げを実施せず、FRBはその1カ月前にはすでに75bpの利上げに踏み切っていた。しかしECBがFRBと同水準となる75bpの上げ幅での利上げを始めた9月まで、ユーロ/米ドルの底値が見えてくることはなかった。欧州ソブリン債危機を招いた2011年のジャン=クロード・トリシェ総裁の利上げ以来、歴史的に見てもあまり例のないタカ派的なECBというやや奇妙な状況が、ユーロ/米ドルの底値固めに役立ったのだ。
欧州中央銀行(ECB)は引き続きタカ派的なスタンスを維持しており、さまざまなECBメンバーがインフレとの戦いを続けるためにさらなる利上げの必要性を語っているのを耳にしてきた。しかし今朝発表された、金融引き締めのもう一つの側面である購買担当者景気指数(PMI)速報値は予想44.8に対し43.6と、落胆すべき結果となっている。一方サービス業PMIは予想54.5に対し52.4となっている。これは衝撃的に低い数値で、FRBとジェローム・パウエル議長とが米国で遅れて現れてくる利上げの影響について議論している中、すでに欧州での利上げの影響を浮き彫りにしている。
これはECBが政策引き締めをどこまで続けられるのかという疑問につながる。ECBが早期の利上げを見送ったのと同じ要因が現在も問題となっているためだ。
この発表を受けて、ユーロ/米ドルは金曜日の取引開始早々に急落し、木曜日の朝(ちょうど米ドル指数が102を試していた時間帯)に1.1000ドルがレジスタンスラインとして機能した後から始まった売り展開がさらに加速した。サポートラインは、火曜日のウェビナーで取り上げた1.0843~1.0864付近のおなじみのエリアで現れた。
これにより、1.0930ドル~1.0943ドルの重要なゾーンにあたるより安い高値でのレジスタンスが試される可能性がある。弱気筋がこのゾーンを維持できない場合、1.1000ドル付近が再び視野に入る。このゾーンでは様々なことが起きており、4月の取引では強気筋がこのラインの強行突破に失敗している。
ユーロ/米ドル日足チャート
Chart prepared by James Stanley, EUR/USD on Tradingview
ポンド/米ドルの利上げ後の売り展開
先週は英国では経済データが相次いで発表される重要な週となり、水曜日に発表されたインフレ率は木曜日のイングランド銀行の金利決定につながった。インフレ率は総合値、コア値ともに予想を上回り、翌朝、市場はより穏やかな25bpの利上げを予想していたにもかかわらず、BoEは50bpの利上げを実施した。
この話だけを見ると、ポンドは一時的にもっと値上がりすると思われるだろう。実際にはそうはいかず、強気筋はブレイクアウトから手を引き、今週の高値は先週のスイングハイを5ピップス下回るだけの水準となった。その後は強力なプルバックが起こり1.2700ドル付近で週の安値を更新した。
明らかに過去のレジスタンスラインだった水準、一時はこの通貨ペアの今年の高値だった1.2667ドル付近で強気筋がサポートを維持したことから、強気相場の可能性がわずかに残されていると見ることもできる。少なくとも米ドル安のシナリオにおいてはこのペアはより説得力のある背景のひとつとなりうるが、筋書き通りに事を運ぶには、強気筋にはまだ来週すべき仕事がある。
ポンド/ドル日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのポンド/米ドル
米ドル/円
日銀の植田和男新総裁は現時点で2回の金融政策決定を実施しており、市場は日本の金融政策が近いうちに変更されるとは考えていないようだ。先週の金利決定後は多くの主要通貨に対して円安が進み、米ドル/円は140円台に戻った。
今週は米ドルが再び強さを見せたことで、米ドル/円ペアはその前のブレイクアウトから一貫して値上がりを続け、2023年の高値を更新した。現在は昨年財務省が介入を始めたレベルに急接近している。つまり米ドル/円の150円近辺で、昨年後半のFOMCの利上げ幅縮小も伴って、ここは最終的に第4四半期に頂点を形成する助けとなった。
今週の米ドル/円価格は142.50の心理的レベルで大きなしきい値を超えたが、ここは来週もサポートとなる可能性がある。現在の価格は145円よりも上で、過去の構造に近い。145円近辺は昨年相場が反転し始める前のレジスタンス、そしてサポートとして機能してきた。
日本の政策に変化が見られるか、財務省から何らかの発言があるまでは、米ドル高が続くシナリオにおいては、米ドル/円はより魅力的な市場の1つであり続けると思われる。
米ドル/円日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewの米ドル/円
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