米ドルの値動きの背景

Article By シニアストラテジスト

米ドルのまとめ:

  • 米ドルは2023年の取引全体を通じた合流が引き続き継続しており、先週はドル指数で102を試した。これは2021年から2022年の主要な動きの50%に該当する。
  • ユーロ/米ドルの強気派は、先週のECB金利決定に対して大きな反応を示し、レジスタンスとなる1.0943ドルのフィボナッチレベルまで価格を押し上げた。この水準は先週木曜日から維持されているものの、弱気筋はまだこのチャンスをそれほど生かせていない。今週の注目は英国に集まっており、水曜にはインフレ率が発表され、木曜にイングランド銀行の会合が行われる。また、米国FRBのパウエル議長は、年2回行われるハンフリーホーキンス報告書に関する証言のため、水曜日と木曜日には議会に立つ予定だ。
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先週は米ドルの弱気な動きが生まれたが、それは主に木曜日の欧州中央銀行の金利決定によるところが大きいようだ。FRBの金利決定に対する反応が全体として弱気だった一方、ドル指数は103でサポートされたが、ECB会合の翌朝は弱気筋が価格を引き下げ短期的な安値を更新した。その後ドル指数は金曜日には102まで下落し、これまでのところはここが底値となって反発が生じている。

下の日足チャートでは最近の流れから依然として安値の水準が下がっており、短期的に弱気相場となる可能性が残っている。重要なのは103近辺で、この価格を上回ると強気筋が存在感を強め、103.45レベルが再び視野に入ってくるだろう。その上では5月下旬~6月上旬にかけて高値を支えた下降トレンドラインが再び姿を現し、これは今後数日でもう1つのレジスタンスラインである130.82と合流する。

米ドル - ドル指数日足価格チャート(参照用、Forex.comプラットフォームでは提供していません。)

チャート作成:James StanleyTradingviewのデータによる

米ドルの長期的見通し

一歩下がって週足チャートを見ると、過去78か月にわたって続いていた合流が目を惹く。Webセミナーでも説明したが、ここでは強気シナリオと弱気シナリオの両方が考えられる。

弱気シナリオは弱気の三角持ち合いの形成で、この可能性はトレンドラインでレジスタンスが維持された後も依然として残っている。弱気の三角持ち合いは弱気のブレイクアウトを目指してアプローチされることが多く、売り手は100.87101のサポートを突破する必要がある。
強気シナリオとしては、数か月前に言及したのと同じ二重底形成の可能性が依然として残っている。この場合は105. 88のネックラインの突破がトリガーとなるだろう。二重底は強気の反転フォーメーションとしてアプローチされることが多いため、100.87101付近のサポートが重要となる。ここを割り込むと弱気の三角持ち合いのトリガーとなるだけでなく、二重底の形成も無効となる。

 

米ドル - ドル指数週足価格チャート(参照用、Forex.comプラットフォームでは提供していません。)

 


チャート作成:James StanleyTradingviewのデータによる

 

ユーロ/米ドル

最近のユーロ/米ドルは、強気相場を基調にゆっくりと動いている。この通貨ペアでは5月下旬にサポートラインが形成され、6月の上旬は価格がかなり上下した。先週初めの相場で1.0690より上防衛しものの、依然、強気筋は伸び悩んでいる様子だった。
強気筋は火曜日の米国CPI発表後に攻勢に出たが、ユーロ/米ドルの強気筋がさらに一歩踏み込んだのは、水曜日のFOMCでの金利決定の前後だった。木曜日の欧州中央銀行の金利決定がさらなる追い風となり、ユーロ/米ドルは、1.0943レベルまで急騰した。これは2021年の高値から2022年の安値までの50%フィボナッチリトレースメントにあたる。

現時点では、このレジスタンスラインが値動きを停滞させるている。しかし注目すべきことに、弱気筋はまだ足場を固めきっておらず、今週前半の段階では強気筋が1.0900近辺への反応を示しているといえる。
このため、上に存在する1.10001.1100ドル近辺のさらなるレジスタンスラインが注目される。ここは今年に入ってすでに2回、ユーロの強気派を阻んでいる。次のサポートとしては、1.08431.0864付近の短期レジスタンスゾーンが想定される。

 

ユーロ/米ドル日足価格チャート

チャート作成:James Stanley Tradingviewのユーロ/米ドル

 

英ポンド/米ドル

先週のWebセミナーでは、米ドル安のシナリオを考える上で、ポンド/米ドルはより説得力のある要因の1つになっているかもしれないと述べた。この後英ポンド/米ドルは力強いブレイクアウトを見せて今年の高値を更新しており、英国のインフレ率発表を明日、イングランド銀行の金利決定を木曜に控え、今後数日の流れが注目される。

英ポンド/米ドルの今週の取引はプルバックから始まり、注目すべきことに、先週のブレイクアウトの起点となったレジスタンスラインはまだはっきりとしたサポートラインになっていない。このサポートラインが視野に入ってくると、強気筋がモチベーションを示す水準になるはずだ。より深いサポートラインが1.2584ドルに位置しているが、Webセミナーで触れた通り、ここを維持することは1.2667を維持するほど重要ではなく、このサポートラインに到達すると動向によっては短期的に弱気相場の可能性を開くかもしれない。

英ポンド/米ドル週足価格チャート


チャート作成:James Stanley Tradingviewの英ポンド/米ドル

 

米ドル/円

 忘れてはいけないが、先週は日銀でも金利決定が実施された。それに応じて、さまざまな分野にわたって全体としては円安が進行し、米ドル/円は140円から週末には142円まで上昇した。今週はさらに、11月中旬のスイングハイにあたる142.30円のレジスタンスレベルまで押し上げられている。

現在のところは今日の高値を維持しており、日足のローソク足が含み線を形成しつつあるところに注目したい。これは包み足に似ているが前日のヒゲを完全にカバーするものだ。今日の終値のローソク足によっては、イブニングスターになる可能性もある。

これによって反転の可能性も出てくるが、強気相場のトレンドを踏まえると、このプルバックはむしろ強気筋のモチベーションがどの程度残っているかを示すものと言えるだろう。これにより、140.30円と140.92円の両方がより高値圏での安値のサポートとなる可能性がある。

米ドル/円日足チャート

チャート作成:James Stanley,  Tradingviewの米ドル/円




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