米ドルの話題:
- 先週米ドルは巻き返しを見せたものの、今週の後半には米国でインパクトの大きいイベントが2つあり、そこに向けて舞台が整えられている。水曜日にはFOMCの金利決定、金曜日にはFRBが重視するインフレ指標であるコアPCEが発表される。
- 2週間前、米国の消費者物価指数(CPI)発表後に米ドルは弱気のブレイクダウンを見せた。弱気筋はこの動きを続けることができず、その後は揺り戻しが進んだ。しかしこの揺り戻しでは過去の弱気の動きの一部が戻ったにすぎず、弱気トレンドを確立するために弱気筋がより安い高値でのレジスタンスラインに反応する可能性は残っている。弱気筋の戦略が成立するか、あるいは強気筋が引き続き短期的な強さを保つのかは、今週の価格要因で決まるだろう。
米ドルは、消費者物価指数(CPI)の発表に伴って2週間前に為替市場を席巻したブレイクダウンから持ち直した。
今年前半の米ドルはレンジ相場が続き、米ドル指数(DXY)チャートの100.80~101付近のサポートを維持しつつ推移していたが、ヘッドラインCPIが3.0%と発表されたことで弱気筋が攻勢に出た。その結果ユーロ/米ドルは今年の高値を更新し、ポンド/米ドルも同様の動きを見せた。米ドル/円は劇的な下落を見せて140円を割り込んだ。相場のトレンドが引き継がれる中、わずか1週間前に145円でレジスタンスラインが現れたばかりだった。
しかしブレイク直後に書いたように、この段階での大きな問題は弱気筋がどれだけ攻勢を続けるかで、当時の記事では過去のサポートライン周辺のエリアを強調し、ここがより安い高値でのレジスタンスラインとなる可能性を検討した。そのエリアは2023年前半のサポートエリアで、DXYチャート上の100.80~101付近にあたる。
先週木曜日にはこのレジスタンスエリアが視野に入り、その日の高値を維持するのに役立った。しかし強気派が引き続き主導権を握っており、水曜日のFOMC金利決定を前に、DXYの短期的なトレンドとしては高値も安値も上がり続けている。
これにより、101.50付近でレジスタンスが形成される可能性、そして長期的に注目される102のハンドルに焦点が当たる。
米ドル - DXY 4時間足チャート (参照用。FOREX.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
米ドル長期
先週の水曜日、米ドルが今年の安値から戻り始めたときにこのテーマを扱ったが、弱気筋の判断ポイントとして100.80~101付近に焦点を当て、より深い戻りの可能性を強調した。安値圏で相場を売ることは困難であるため、プルバックの際に弱気筋の売り手がどれだけ残っているかが大きな問題だった。
今週はまず米ドルの101付近での迅速なサポートテストから始まったが、このサポートは維持されてた。水曜日のFOMCの金利決定を前に、依然としてより深いプルバックの可能性は残っている。
政策金利決定についてだが、本稿執筆時点では低めの見通しとなっているようだ。CME Fedwatchツールは利上げの可能性が高いとしながらも、利上げ後に何が起こるかについては疑問符を付けている。現在、水曜日の利上げ確率は98.9%と見込まれている一方、年内にさらに利上げが行われる確率は33.7%にとどまっている。
というわけで水曜日の大きな関心事は、これがFRBの2023年最後の利上げになるか、それとも9月にもう一回利上げがあるかだ。FRBが利上げに踏み切った場合、論理的には米ドルは強気相場となる可能性があるが、翌朝にかけて別の問題が残る。FRBが利上げに踏み切ってから24時間以内に、欧州中央銀行(ECB)も政策金利を発表するからだ。ここでの問題はECBがどれだけタカ派的な姿勢を続けるかで、今朝発表された欧州のPMIからは、利上げがすでに経済データに影響を与え始めていることがうかがわれる。ドイツと欧州全体の製造業PMIは予想を大きく下回っていた。
しかし、ECBはもはやフォワード・ガイダンスを発行していないため、目先のセンチメントには幅を持たせることができるかもしれない。一方、FRBは今回の利上げに伴いって経済予測サマリーを発表する。2023年の追加利上げが示唆されなければ、米ドル(DXY)の弱気トレンドを推し進めながら、より安い高値でのレジスタンスラインを維持しようとする米ドル弱気筋のモチベーションにつながる可能性がある。
下のチャートで注目すべき大きなレベルは102周辺で、これは2021年~2022年の主要な動きの50%にあたり、6月の間安値を保持していた場所である。注目すべきことに、ここは数週間前のブレイクダウンの後まだレジスタンスとして試されておらず、ここでレジスタンスを試すことになれば、弱気筋にとっては下降トレンドを継続させるためにより安い高値でのレジスタンスラインを形成するチャンスとなる。
この水準は、直近のブレイクダウンの動きの61.8%のフィボナッチリトレースメントと合流する地点だ。この水準と現在の価格との間では、さらに同じ値動きの50%のリトレースメントが101.50の過去のスイングと合流している。
米ドル - DXY 日足チャート (参照用。FOREX.comプラットフォームでは利用できません)
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのデータによる
ユーロ/米ドル
ユーロ/米ドルは消費者物価指数(CPI)にともなうブレイクアウトの後、重要なレジスタンスにぶつかっていた。1.1000~1.1100ドルのエリアは依然として重要となっている。ここは今年前半に何度もこのペアの高値を維持していたエリアだ。米国のCPIが発表された日、強気筋がようやくブレイクアウトを果たし、この動きは翌朝、さらには翌週の始めまで続いた。これにより、先週火曜日にはユーロ/米ドルは1.1250ドルの心理レベルまで上昇した。
しかし、月曜日に警告したように、ここはこのペアにとっては大きなレジスタンスだ。この新たなレジスタンスを試している間に価格がいくぶん伸びたため、強気筋は難しいかじ取りを迫られる。ここから先週にはプルバックが起こり、今週も続いている状態だ。ユーロ/米ドルは現在、この過去のレジスタンスゾーンに再突入しており、ここがサポートとなる可能性はまだ残っている。
これまでのところ、4月上旬の1.1068ドルの水準が今朝の安値の維持に役立っているが、強気筋は力強い上値追いの動きを見せることができず、1.1000付近に向けたもう少し下のサポートが焦点となる。
ユーロ/米ドル日足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのユーロ/米ドル
ユーロ/米ドル短期
下の2時間足チャートでは高値も安値も下がり続けており、価格は1.1068ドルの水準を試し続けている。また、以前のサポートからのレジスタンスも維持ており、短期的な弱気相場のテーマをさらに際立たせている。短期的な弱気の三角持ち合いが形成されており、大局的な強気トレンドの中でもより深いプルバックが起きる可能性がある。次のサポートエリアは1.1000ドルの心理レベルだが、1.0943ドルも注目に値する。
先週上値を捉えた水準は、2021-2022年の大きな動きの61.8%のフィボナッチリトレースメントで、同じフィボナッチスタディの50%が1.0943ドルに位置している。強気筋が1.0943のサポートを維持できなければ、大局的な強気トレンドの見方は揺らぎ始め、7月初めのブレイクアウトは偽のブレイクアウトということになるかもしれない。
EUR/USD 2時間足チャート
チャート作成:James Stanley、Tradingviewのユーロ/米ドル
米ドル/円
USD/JPYは数週間前に大きく売られた後、回復を継続している。CPI(米消費者物価指数)発表後に引き戻されて始まった相場は、新たな展開を見せ、急落してチャート上の重要エリアである140.00付近を割り込んだ。
2週間前にここでの記事で、私は、安値はどの辺りになるか、と質問した。また、137.68付近がそのレベルになるとし、USD/JPYのチャート上でその辺りの価格に注目した。これは昨年11月の安値の1つであり、その後3回にわたって高値を維持するようになった。
直近のレジスタンスとなったのは、日銀の金利決定直後で、上田新総裁の初会合のときだった。上田新総裁が就任して初めての日銀金融政策会合では、日銀の混乱はほとんどないと思われたため、市場は歓声ムードだった。これまで日本では、依然としてインフレの問題は残ってはいるものの、変化の兆候はほとんどない。
この価格は140円付近を通って下落した後、戻ったもので、これが動きの停滞につながって、先週には強気が再び台頭した。
USD/JPY日足
Chart prepared by James Stanley, USD/JPY on Tradingview
米ドル/円
先週、米ドル高、円安が戻ってきた。今週の大きな問題はそれがどの程度継続するかだ。木曜日の夕方(アジア時間では金曜日の朝)には日銀の金融政策会合があり、日銀が政策変更の要素のシグナルを出すかどうかが問題として残っている。ンフレは引き続き高水準を維持しているが、今のところ日銀が揺れている様子はない。先週のマーケットの反応を見ると、それが日銀を取り巻く一般的な期待であるようだ。
今週、米ドル高が決定的な動きを見せるとすれば、最近の円安の再来から、USD/JPYはそうしたテーマを追うにはかなり魅力的なマーケットの1つとなるだろう。
USD/JPY4時間足
Chart prepared by James Stanley, USD/JPY on Tradingview
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