米ドルとFOMCに関するまとめ
- 25bpsの利上げは90%織り込み済みで、6月にさらに25bpsの利上げを行う可能性は現在30%と見られている。
- FRBが予想通りに25bpsの利上げを実施すると仮定すると、FRBパウエル議長が記者会見で6月の決定に関するヒントを出すかどうかに即座に注目が移るだろう。
- 米ドルはこれまでのところ対ユーロで下落しているものの、ユーロ/米ドルの1年ぶりの高値へのブレイクアウト失敗は強気相場の勢いが失われている兆候かもしれない。
FOMC会合の開催日
米連邦準備制度理事会は、米国東部時間で5月3日(水)午後2時(英国夏時間午後6時)に5月の金融政策決定会合の決定を発表し、続く東部時間の午後2時30分からFRBのパウエル議長の記者会見が行われる。
FOMC会合での期待
CMEのFedWatchツールによれば、フェデラル・ファンドの先物トレーダーは中央銀行が政策金利を25bp引き上げて5.00~5.25%とする確率を90%と見ている。
出典:CME FedWatch
もう少し詳しく見ていくと、中央銀行が6月中旬の時点でさらに25bpの利上げを上乗せする確率は30%程度と見られている。今週の会合でFOMCが予想通りに利上げを実施すると仮定すれば、6月の利上げの可能性に変化があるかどうかで、今回の利上げが「タカ派的な利上げ」とみなされるか、より「ハト派的な利上げ」とみなされるかが決まるだろう。
FOMC会合のプレビュー
ジェローム・パウエルと仲間たちにとって、これまでのところ物事はおおむね順調に進んでいる。
近年記憶にある中で最も積極的な利上げサイクルが始まってから1年余りが経過し、労働市場は比較的強さを保っており、失業率は3%台半ばと数十年来の低水準を保っている。初回失業保険申請件数はようやく増加しはじめたところだ。
一方でインフレ率は中央銀行の目標に向かって緩やかに推移しており、ヘッドラインCPIは昨夏の9%超から5%を下回り、かねてからFRBが重視しているコアPCE指標は本稿執筆時点で4.60%まで低下している。最近、FRBはより難解な「住宅を除いたコアPCE」の数値が特に重要であると述べているものの、下のグラフが示すように、この「下がりにくい」インフレ指標でさえ一貫して低下傾向を見せている。
FRBによる積極的な引き締め政策が有害な波及効果をもたらすかどうかは依然として不透明で、今週末にファースト・リパブリック・バンクがJPモルガンに売却されるという事態は、金融引き締めによる銀行業界へのストレスが依然として重要な懸念事項であることを示している。だが今のところ、ジェローム・パウエルと仲間たちは、現在のマクロ経済の傾向に失望することはないだろう。
このような背景から、FRBが最近のシナリオに従って25bpsの追加利上げを行う可能性が高くとも驚きはない。FRBが予想通りに利上げを実施した場合、市場はすぐに今後の動きに注目するだろう。特にトレーダーは利上げサイクルが終了するか(あるいはいつ終了するか)を見極めようとするはずだ。
この点では、中央銀行は事前に特定の路線を明言することは避けると思われる。ウォール・ストリート・ジャーナルの「FRBのスポークスマン」と言われるNick Timiraosは今日、次のように指摘している。「...当局は将来の政策に関する発言が個々の金利変更と同じくらい重要であると考えている...(彼らは)選択肢を絞らずに保留しておくだろう...FRBの政策声明は、今週の当局にとって最も重要かつ活発な交渉が必要なステップとなるだろう」。
パウエルFRB議長はいつもどおり、FRBによる政策発表の30分後に登壇し、今回の決定内容や今後の見通しについて補足説明をする予定だ。最近はパウエル議長の記者会見が政策決定の内容以上にボラティリティを高める要因になっているため、読者各位は必ずチェックしておいてほしい。特にトレーダーが注目すべきなのは今後の金利動向、銀行業界に対するパウエル議長の懸念の度合い、そしてパウエル議長が最近の会合で繰り返し否定してきた今年後半の利下げの可能性を示唆する発言があるかどうかだ。
米ドルのテクニカル分析:ユーロ/米ドルの巻き返しはあるか
今年に入ってからの米ドルのパフォーマンスはまちまちで、欧州のライバル通貨を下回る一方、アジアの主要通貨をおおむね上回っている。世界で最も広く取引されている通貨ペアであるユーロ/米ドルは、先週1.1100ドル付近で年初来(およびここ1年)の最高値を更新したものの、この苦戦の末の値上がりを強気筋は維持することができず、現在このペアは2月初旬の高値1.1030ドル付近を下回る価格に戻っている。
出典:StoneX、TradingView
上のチャートが示すとおりユーロ/米ドルは直近の上昇チャネルを下抜けし、ここ最近の高値では日足のRSIが明確に弱気相場への移行を示している。木曜日のECB会合が今週のユーロ/米ドルの値動きに大きな影響を与えることは間違いないものの、もしFRBが(おそらく6月の追加利上げの可能性を残し、金融システムに対する懸念を抑える)比較的タカ派的な態度をとった場合、ユーロ/米ドルでは週明けの下落が加速し、 1.0900ドルを下回って1.0800ドル付近の100日間指数平滑移動平均線(EMA)に向かっていく可能性がある。
しかしFRBがハト派的姿勢を見せれば、ユーロ/米ドルはそれを触媒として昨年3月以来初めて1.1100ドルを明確に上抜けし、最近の強気な動きの継続につながるかもしれない。
-- 文責:Matt Weller、リサーチ担当グローバルヘッド
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