米国経済データの影響、中央銀行の動きよりも大きく
水曜日、FOMCは50bpの利上げを実施して政策金利を4.5%とし、金利が十分な引きしめ水準に達し、インフレが2%に向かっていると確信できるまで利下げを開始しない、と述べた。FOMCのタカ派的な姿勢に対し、市場の動きは比較的小さなものだった。 火曜日にはイングランド銀行も50bpの利上げを実施して借り入れ時の金利を3.5%とした。 BOEのベイリー総裁は、MPCの最新の予測はCPIがピークに達したことを示唆しているものの、今後数ヶ月は「非常に高い」状態の継続が見込まれると述べた。 結果として今後のガイダンスではさらなる利上げの実施が示唆されている。欧州中央銀行(ECB)も50bpの利上げを行い、預金利息を2.0%とした。続く記者会見でECBのラガルド総裁は「今後一定の期間、50bpsの利上げを続ける見込みは明白である」と述べ、これに応じてユーロ/米ドルはなんと100ピップスの値上がりを見せた。
米国株は一晩で値下がりし、米ドルも買われていた。ラガルド総裁の発言によるユーロ/米ドルの急騰で、米国株式市場の開場前に米ドル指数は大幅な下落を見せた。 しかし米国株式市場が開くと株価の値下がりが勢いを増し、米ドル指数は再び激しい買い展開となった。 米国株式市場開場後の激しい値動きは、中央銀行の会合というよりは米国での多くのデータ発表に関連するものだ。
今日発表された米国のデータは景気後退の兆候を示すものだった(一方で、FRBはまだ利上げの脅しをかけている)。 11月の米国小売売上高は前月比-0.6%。予想は前月比-0.1%、10月は前年比+1.3%だった。 これは2021年12月以来最大の下落となる。 車を除いた小売売上高は前月比-0.2%。予想値は前月比+0.2%、11月は前月比+1.2%だった。こちらも同様に、2021年12月以来最大の下落だ。連邦準備制度理事会が発表した最初の地域別製造業景況指数となるフィラデルフィア製造業景況指数は-13.8で、予想の-10を下回った。なお10月の値は-19.4。 雇用率、新規注文数、支払い価格もすべて前月を下回る結果となった。 加えてNY連銀製造業景況指数は予想-1、先月4.5に対して-11.2にまで落ち込み、8月以来最も急な縮小を見せた。 11月の鉱工業生産は前月比-0.2%で、予想は前月比+0.1%、10月は前年比-0.1%。11月の製造業生産は前月比-0.6%で、予想は前月比-0.1%、10月は前年比+0.3%だった。
このように火曜日に発表された米国のデータは、いずれも予想を下回るものだ。ついこの間までの市場であれば、FRBの利上げペースの鈍化を期待してこうしたデータをポジティブにとらえていたかもしれない。 しかしドット・プロットではターミナル・レートの見通しを5.1%としており、FRBはまだ利上げが必要だと述べている。
下記に米国ドル指数(DXY)の15分足のチャートを示している。 米国株式市場の開場時、米国株価の急落に続いてDXYが上昇したことに注目してほしい。 ラガルド総裁のタカ派発言によるユーロ/米ドルの値動きは、1時間もたたないうちに完全に逆転した。
出典: Tradingview、Stone X
EUR/USDも見てみよう:
出典:Tradingview, Stone X
EUR/USDは9月28日に安値0.9536を付けて以降、大きく上昇している。 このペアは上昇ウェッジを推移している。 価格は上限に達したが、さらに上昇を継続中だ。 本日、EUR/USDは2月の年初来高値~9月の年初来安値までの 61.8%フィボナッチリトレースメントである1.0747付近で揉み合い。日足は陽線包み足で引けており、今後下落が示唆される。 最初のサポートは12月7日安値の1.0455だ。 そこを割ると、価格は1.0349~1.0366の間の長期サポートまで下落する可能性がある。 次のサポートレベルは11月21日安値の1.0223付近だ。 一方、EUR/USDが上昇すれば、最初のレジスタンスは前回述べた61.8%フィボナッチリトレースメントレベルとなる1.0747、その次が1.0787および1.0936の水平レジスタンスだ。
出典:Tradingview, Stone X
米国はリセッション手前なのだろうか? 判明するには時間がかかるだろう。 しかしながら、木曜日の経済指標の悪化、そしてFRBがまだ利上げを継続している(ただしペースは減速)ことを考えると、米国のカードにはリセッションがあるかもしれない。
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