為替マーケットと大統領任期
(1)米ドルと大統領の所属政党
多くのトレーダーはまず、大統領と為替マーケットとの間には、直接的でシンプルな関係はまず存在しないという事実に驚きを覚えます。しかし、米国大統領はあくまでも米国政府の一部を代表するだけの存在であること、どの通貨ペアであっても米国以外の (少なくとも) 一国の政府全体関わっていること、その他多くの重要なマーケットの動き (新型コロナ... 咳払い) は個人の政治家の力が及ぶ範囲ではないということを踏まえると、米国大統領は考慮すべき数多くの要因の一つに過ぎない、ということが分かってきます。
とはいえ、1980年代までの記録をさかのぼってみると、米ドルの動きには一定のパターンがあり、民主党から大統領が選ばれた場合には米ドル高に、共和党から選ばれた場合には米ドル安になる傾向が、現在まではみられています。以下のチャートに示すように、米ドルインデックスが全体的に高くなっていた時期には、民主党のビル・クリントン氏とバラク・オバマ氏が大統領を務めていました。一方、ジョージ・HW・ブッシュ氏、ジョージ・W・ブッシュ氏、ドナルド・トランプ氏が大統領を務めていた時期には、米ドルは安値になっています。
出典:TradingView、GAIN Capital
このように見ると、過去 30 年にわたるチャートから、グローバル市場で出回っている通貨に関する、一目瞭然とも言える情報 (民主党大統領の任期中は米ドルを買い持ち、共和党大統領の任期中は米ドルを空売り) が入手できるような気にさせられますが、このパターンを深読みすることは危険です。つまり、1 回の取引で購入した外貨をたった 1 つの指標に基づき 4~8 年にわたり持ち続けるというのは、多大な忍耐が必要となる可能性が高い、ということです。さらに大事なことは、このサンプルサイズ全体でも、大統領を個人レベルでわずか 5 人しかカバーできていないため、このデータは第一印象ほど重要でない可能性がある、ということです。長期トレーダーは、このひょっとしたらあり得る関係を米ドルの見通しを検討する際の材料として念頭に置く、というスタンスに留めるべきでしょう。
2)世論と政策
4 年前に散々期待を裏切られたにもかかわらず、11 月の選挙の結果を予測する際に最も有用なツール (もしくは、少なくともマーケット予想の分析用のツール) の 1 つとして、世論が未だに用いられています。8 月中旬に本記事を執筆している段階で、レースはまだ先が長く、4 年前と同様に今後接戦となる可能性があるものの、ジョー・バイデン氏は主要な世論調査全体の平均で 8 ポイントと大きくリードしています。
出典:RealClearPolitics
8 月中旬に本記事を執筆している段階で、次期大統領候補両者の活動は具体的な経済政策の提案まで踏み込んでいません。その理由は、両者とも現時点では、対抗相手の大統領としての資質や新型コロナウイルスへの対応に注力しているからです。しかし、これからの数か月で、より現実的な政策の詳細が発表されることと期待しています。為替トレーダーから最も関心を集めることになるのは、国際貿易全体の見通しに加え、世界最大の 2 国家である米国と中国の貿易関係に対して大統領選の勝者が見せる最終的な姿勢でしょう。米ドルについては、為替トレーダーは大統領選候補者の財政政策へのスタンスに注目していくことになるでしょう。近年連邦予算は急速に膨らみ、縮小のめどがまったく立たない状態であるものの、最近は両候補者ともリップサービス程度の発言もしていません。
(3)2020 年大統領選挙今後の動き
為替トレーダーは今後、新型コロナウイルスの感染収束へ向けた道のりから 2021 年 1 月に誕生する世界最大の権力を持つ政治家が誰になるのかといったことまで、多くの不確定要素に向き合うことになります。過去の実績からは、投票日における民主党の勝利が米ドルにとって追い風となることが示されているものの、柔軟な思考を維持して、個人の政治的嗜好をトレードに影響させないようにしましょう。
弊社は現在までの 20 年以上の期間にわたり、世界中の選挙の様子を目にしてきましたので、11 月の選挙結果にかかわらず、皆様が今後のマーケットを読み、勝ち抜いていく上で役立つ、頼れるツール、サポート、インサイトを引き続き提供していきます。
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