ブルッキングス研究所でのパウエル議長の講演は、11月2日のFOMC記者会見のハト派バージョンに
11月2日のFOMC声明発表に続いて行われた記者会見の中で、FRBのパウエル議長は、「現在入ってきているデータから、最終的な金利がこれまでの予想よりも高くなる可能性がある」と述べた。 それに加えて「金利をどこまで上げるかが、引きしめのペースよりも重要である」とも語った。 この時市場はパウエル議長の発言をタカ派的なメッセージとして受け取った。金利が当初の予想よりも高くなりうること、また利上げのペースはターミナル・レートほど重要ではないということに、パウエル議長が初めて言及したからだ。
ひるがえって本日ブルッキングス研究所で行われた、経済の見通し、インフレ、そして労働市場に関する講演を見ていこう。 パウエル議長は大筋で11月2日の発言と同じ内容を繰り返しつつ、「12月の会合あたりで、利上げのペースを緩和する時期が来るかもしれない」と付け加えた。 この発言でパウエル議長は、基本的にはFOMCの12月の利上げが50bpに「とどまる」ことを市場に伝えた形となり、これはハト派的な姿勢として受け止められた。市場が待ち望んでいた非公式な方向転換だ。 パウエル議長は加えて「市場予測への依存を下げるということは、リスク管理をより徹底するということであり、このタイミングで利上げのペースを落とすのは過剰な利上げのリスクを抑えてバランスを取るのに良い方法だ」とも述べた。 「過剰な引きしめは望ましくなく、だからこそペースを落とす」という一方、 「すぐに利下げに移ることは考えていない」という。
パウエル議長のこのハト派的な発言によって、ドル指数は積極的に売られた。パウエル議長の講演が始まる前、DXYは107付近で取引されていたが、 1時間半後には106よりも下で取引される形となった。
出典: Tradingview、Stone X
パウエル議長のハト派発言でもっとも恩恵を被ったのは日本円である。 米ドル/円は財務省による10月21日の最後の為替介入時に151.95円の高値を付けて以降、値下がりを続けている。 11月10日には1日で545ピップスという大きな売りがあり、さらに値を下げていた。 しかしその後、3月 4日の安値から10月21日の高値の38.2%のフィボナッチリトレースメントレベルにあたる137.70円付近で下げ止まっている。 パウエル議長の発言をきっかけに、この通貨ペアはさらに値下がりするだろうか。
出典: Tradingview、Stone X
次のサポートレベルは8月初旬の高値である135.58円付近。 そこを割ると200日間移動平均である134.30円、その後は先述の期間の50%リトレースメントである133.30円まで下落する可能性がある。 しかしサポートレベルが維持されれば、最初のレジスタンスラインは上向きのチャネルの下端を成すトレンドラインにあたる141円付近、その後は10月21日からの下向きのチャネルに相当する142.25円付近となる。 米ドル/円がそこを超えて上がれば、次のレジスタンスレベルは10月5日の安値である143.53円だ。
FOMCの今回の方向転換は市場が待ち望んでいたものだろうか。 市場の反応を見ると、どうやらそうらしい。 米ドル指数が今後も下がり続けるかに注目しよう。 もし下がるようなら株価が上がり、12月には景気よくサンタクロースがやってくるかもしれない。
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