週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
日銀金融政策決定会合に注目
◆ドル円、日銀声明や日銀総裁の定例記者会見を見極め
◆ドル円、PMI 速報値など米実体経済を占う指標が目白押し
◆ユーロドル、欧州景気先行き不安から上値重い
予想レンジ
ドル円 146.00-150.00 円
ユーロドル 1.0700-1.1000 ドル
1 月22 日週の展望
ドル円は、米早期利下げ観測の後退や日銀の政策変更への思惑が薄らいでいることを背景に底堅い動きが継続しそうだ。
まず、今週は日銀の金融政策決定会合が予定されている。先月の植田日銀総裁のチャレンジング発言をきっかけに早期マイナス金利解除への思惑が急速に高まっていたが、1 日の能登半島地震、12 月毎月勤労統計による賃金の伸び鈍化を受けて政策修正の可能性はほとんどない状態になっている。声明や日銀総裁の定例記者会見でハト派色を強めることもあり得るため、その場合は一段と円安が進むことになりそうだ。
また、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が16 日、インフレ目標の達成は射程圏内にあるとの見方を示しながらも「政策変更は慎重に調整されるべきで急いではならない」と発言したことを受けて、3 月の米利下げ観測がやや後退していることもドル円の支援材料となりそうだ。ウォラーFRB 理事は昨年11 月、2024 年からの利下げ開始を示唆し、米長期金利の急速な低下やドル売りを招いたが、ここへきて慎重な姿勢を示したことで米利下げへの市場の過度な期待感を冷やす格好となっている。
来週は23 日に1 月リッチモンド連銀製造業指数、24 日に1 月購買担当者景気指数(PMI)速報値、25 日に10-12 月期国内総生産(GDP)、26 日に12 月PCE コアデフレーターなど米国の実体経済を占う上で重要な指標が多く発表されるため、結果を受けた米長期金利の動向に注目が集まる。
ユーロドルは、引き続き米金利動向を眺めながらも上値の重い動きとなりそうだ。注目となるのは12 月の欧州各国PMI 速報値であり、欧州の景気先行き懸念が一段と高まるなかで、それを裏付ける結果となればユーロ売りが加速しそうだ。今週発表された12 月の欧州新車販売は昨年7 月以来の前年比マイナスとなるなど、消費面からみても落ち込みが目立つ。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は「夏ごろに利下げする可能性がある」と具体的な時期に言及したが、市場は4 月から利下げを開始すると見込んでおり、依然として市場との認識の乖離がある。
1 月15 日週の回顧
ドル円は、日経平均先物の上昇をきっかけに週明けの欧州時間から買いが強まる展開となった。ウォラーFRB 理事のタカ派的な発言でドル高が進んだほか、12 月米小売売上高が予想を上回ったことが伝わると昨年11 月28 日以来の高値となる148.52 円まで上値を伸ばした。一方、その後は利食い売りなどから147.60 円台まで伸び悩む場面もみられている。
ユーロドルはドル円や米長期金利の上昇に伴って売りが優勢となり、5 日安値の1.0877 ドルを下抜けると1.0845 ドルと昨年12 月13 日以来の安値を付けた。(了)__
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
ZAR、SARB 会合に注目
◆豪ドル、対円では日銀金融政策決定会合で動意づく可能性
◆NZ ドル、10-12 月期 CPI でインフレ鈍化が確認できるか
◆ZAR、SARB 会合に注目
予想レンジ
豪ドル円 95.00-100.00 円
南ア・ランド円 7.50-8.00 円
1 月22 日週の展望
豪ドルは対円で神経質な展開が続きそうだ。今年に入ってから米長期金利の上昇とともに為替市場ではドル買いの流れが強まっており、豪ドルも対ドルでは売りに押される展開が続いている。
一方、豪ドル円はドル円の上昇によって相殺される格好となり、足もとでは方向感を欠いた動き。来週も基本的には米金利やドル相場などの動向をにらんだ動きとなりそうだ。ただ、来週は22-23 日に日銀金融政策決定会合が控えていることから、円相場が全般に動意づく可能性もある。日銀による早期の政策正常化観測は後退しているが、次回(3 月18-19 日)以降の政策修正を見据えて思惑的な動きが進む可能性もあり、豪ドル円も含めてクロス円全般でやや荒い値動きとなることに警戒しておきたい。植田日銀総裁の記者会見にも注意が必要。植田総裁はこれまで「物価安定の確度はなお不十分であり、目標実現の確度高まれば政策の変更を検討」「今年の春闘ではっきりとした賃上げが続くかが重要なポイント」などの見解を示しているが、今回の会見から改めて金融政策のヒントを探りたい。なお、来週は豪州では23 日に12 月NAB 企業景況感指数が発表されるほか、26 日はオーストラリア・デーの祝日で休場となる。
隣国のニュージーランド(NZ)では24 日に10-12 月期消費者物価指数(CPI)の発表が予定されている。NZ 準備銀行(RBNZ)はインフレ率が2024 年後半までに目標範囲内(1-3%)に低下するとの予測に基づき、2025 年半ばまで利下げはないとの見通しを示しているが、RBNZ の思惑通りにインフレ鈍化が確認できるか注意しておきたい。
南アフリカ・ランド(ZAR)は荒い値動きに警戒が必要となりそうだ。今週は南アフリカ準備銀行(SARB)の金融政策決定会合が25 日に予定されており、注目を集めるだろう。市場では政策金利は8.25%で据え置かれるとの見方が大勢を占めており、ポイントはSARB によるインフレ見通しなどになる。クガニャゴ総裁は前回(昨年11 月23 日)の会合後に「インフレ見通しに対して深刻な上振れリスクが依然として残る」「MPC は強い警戒を維持しており、リスクが現実化し始める場合には行動する用意がある」などと言及していたが、今回もインフレ警戒姿勢を維持するか注目しておきたい。また、24 日には12 月CPI、25 日には12 月卸売物価指数(PPI)なども控えているため、同国のインフレ動向も併せて注意したいところだ。
1 月15 日週の回顧
豪ドルは対ドルで弱含み、対円ではもみ合いとなった。米長期金利の上昇に伴うドル買いの動きが目立つなか、豪ドルも対ドルでは売りに押された。一方、対ドルでの下落分をドル円の上昇が相殺する格好となったため、対円ではやや方向感を欠いた動きとなった。
ZAR も対ドルではさえない動きとなったが、対円では比較的狭いレンジ内でのもみ合いが続いた。今週は南アフリカから重要なイベント・経済指標などがなかったこともあり、ドル相場など外部要因につれた動きとなった。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
加ドル、カナダ中銀の声明に注目
◆対円では本邦金利動向を見極め、植田日銀総裁の会見を注視
◆ポンド、足もとのでインフレ加速も春頃の鈍化見通し根強い
◆加ドル、カナダ中銀の声明内容に注目
予想レンジ
ポンド円 184.50-191.50 円
加ドル円 108.00-112.00 円
1 月22 日週の展望
ポンドや加ドルは、対円では本邦金利動向を見極めながらの動きとなりそうだ。23 日には日銀金融政策決定会合の結果公表と植田日銀総裁の定例記者会見が予定されている。超金融緩和の現状維持が大方の予想のなか、総裁会見において「正常化に舵を切る時期」を探ることになる。年初から政策修正は後ずれとの見通しが広まったが、今年の春闘では着実なベースアップが見込まれており、それを確認後の4 月会合で「マイナス金利の解除が決定」との見方もでている。日銀会合は3 月にも予定されており、今回の会見で植田総裁が明確に時期を示すとは思えない。ただ、何らかのかたちで修正に含みを持たせるようだと、今年に入って進んだ円安基調に変化が生まれるかもしれない。逆に、緩和の強調となれば円売り外貨買いが加速することになる可能性が高い。
英国では、足もとでインフレ減速が一服し、金利先安観が後退しつつある。こちらはポンドの下値を支える要因。17 日発表の12 月英消費者物価指数(CPI)は、前回から下振れ予想だったところから前年比4%と10 カ月ぶりに加速した。コアも5.1%と予想を上回り、11 月分から横ばい。結果を受けて英・中長期金利は大幅に上昇し、市場では5 月利下げの可能性はほぼ半々との見立てに。一時は確実視された6 月利下げでさえも、その織り込み度は足もとで65%程度まで縮小している。いずれにせよ、今回のCPI に対する当局の考えは来月1 日の金融政策委員会(MPC)を待たねばならない。もっとも市場では、インフレの鈍化基調は変わらないとする向きはまだ多いもよう。4 月から5 月にかけて英中銀インフレ目標2%に到達するとの見方は根強い。英経済指標では1 月の製造業/サービス部門購買担当者景気指数(PMI)が発表予定。製造業はサービス部門が好調な分だけ弱さが目立っており、どれだけ持ち直せるかがポイントか。
カナダでは24 日に中銀が政策金利を公表する。予想は5.00%で据え置き。4 会合連続の据え置き決定にサプライズは無いだろう。注目は、前回「依然としてインフレ見通しに対するリスクを懸念」と述べた声明内容。12 月カナダCPI は前年比3.4%と見込み通りではあったが、前回から加速しており、中銀の懸念を和らげる結果ではなかった。金利市場では、4 月利下げの可能性も低下しつつあるなか、声明内容を見定めながら加ドルは神経質な展開となりそうだ。
1 月15 日週の回顧
ポンド円は184 円後半で始まり、英賃金データの低下を受けて伸び悩む場面はあったものの、円安基調に沿って上値を試す展開に。その後は英CPI の上振れを追い風に昨年11 月以来の188 円台を回復した。ポンドドルは、ドル高地合いが重しとなり1.27 ドル半ばから1.26 ドル割れまで下落。しかし予想外の英インフレ加速が支えとなり、1.27 ドル前半まで切り返した。
加ドルは対円では108 円付近から110 円手前まで買い優勢となった。日銀の政策修正が遅れるとの見通しや、バブル後の最高値を更新した日経平均を好感した円売りの流れに後押しされた。対ドルでは、1.33 加ドル後半から1.35 加ドル半ばまで加ドル安ドル高に振れた。(了)
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