週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    ドル円、12 月米CPI に注目

    ◆ドル円、日銀の政策修正期待後退や需給面から底堅い

    12 月米CPI はじめ、週後半のインフレ指標に注目

    ◆ユーロドル、米金利の動向次第

     

    予想レンジ

    ドル円 142.00-147.00 円

    ユーロドル 1.0700-1.1150 ドル

     

    1 月8 日週の展望

    ドル円は、日銀の金融政策修正への思惑後退や需給面からの円売り・ドル買い期待から底堅く推移しそうだ。

    1 日に発生した能登半島地震を受けて2024 年の取引開始となる2 日の早朝取引でドル円は仕掛け的な売りが持ち込まれたものの続かず。下攻めに失敗したことで一転してその後はショートカバーの動きとなった。その背景の1 つにあるのは、震災により「日銀が早期に政策修正をしづらくなったのでは」との思惑が浮上したことだ。昨年12 月初旬の植田日銀総裁によるチャレンジング発言をきっかけに早期マイナス金利解除期待が高まり、日銀金融政策決定会合後の定例記者会見では総裁自身が否定したものの、思惑は完全に拭えることはなく年末にかけてドル円はさえない動きが続いた。ただ、震災によって「少なくとも1 月会合での政策修正はない」との見方から円全面安の展開となっている。

    また、2 つ目の背景としては2024 年から開始される新たな少額投資非課税制度(NISA)への思惑。外国株などを購入する際に生じる円売り・ドル買い取引が多くなることで、「中長期的にみてドル円の上昇圧力になる」との市場の期待は一段と高まっている。

    来週は11 日に12 月米消費者物価指数(CPI)や前週分の米新規失業保険申請件数、12 日に12月米卸売物価指数(PPI)と週後半に重要イベントが控えている。現時点でも3 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利下げが6 割程度織り込まれ、さらに5 月には0.25%の追加利下げ5 割程度織り込んでいる。市場と米当局の認識の乖離が縮まらないなかで、米CPI の結果次第では急速に調整が進む可能性があるだろう。

    ユーロドルは神経質な展開が想定される。週後半に予定されている米インフレ指標の結果次第で米金利が大きく動意づく可能性があり、対ドルではその動きに振り回されることになりそうだ。欧州のイベントとしては、8 日に11 月独製造業新規受注や11 月ユーロ圏小売売上高、9 日に11月独鉱工業生産が予定されている。

     

    1 月1 日週の回顧

    ドル円は、2 日早朝に仕掛け的な売りが持ち込まれ、一時140.82 円まで下落したが、その後は一転してショートカバーが活発化。円が全面安となったほか、米長期金利の上昇も追い風に一時144.85 円まで買い上げられた。

    また、ユーロドルは、米長期金利の上昇を受けて年初から上値の重い動きとなった。3 日には一時1.0893 ドルまで下落した。ただ、その後は欧州各国の12 月サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値が良好な結果だったことで1.09 ドル台後半まで値を戻している。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、方向感の定まらない流れ

    ◆豪ドル、方向感の定まらない流れが続く

    ◆豪ドル、11 月CPI に注目

    ZAR、テクニカル的な下値リスクに警戒

     

    予想レンジ

    豪ドル円 94.00-99.00 円

    南ア・ランド円 7.40-7.90 円

     

    1 月8 日週の展望

    豪ドルは神経質な展開となりそうだ。1 日に発生した能登半島地震を受けて日銀の政策修正時期が後ずれするとの思惑が広がるなか、目先はドル円では円売り方向に傾きやすいとの見方がある一方、豪ドル米ドルでは昨年末まで続いたドル売りの流れが一服したように見受けられる。豪ドル円はドル円と豪ドル米ドルの綱引きとなり、しばらくは方向感の定まらない流れとなることが予想される。

    来週は9 日に11 月住宅建設許可件数や11 月小売売上高、10 日に11 月消費者物価指数(CPI)、11 日に11 月貿易収支が発表予定。注目は11 月CPI の行方となるだろう。豪準備銀行(RBA)は昨年まで1 月を除いて毎月(年11 回)理事会を開催していたが、今年からは年8 回の開催に変更。

    初回は2 月5-6 日の日程で開催されるが、それまでに発表される来週の11 月CPI や、12 月CPI、10-12 月四半期CPI(いずれも発表は31 日)で、次回以降の金融政策を占うことになりそうだ。昨年12 月に公表された四半期金融政策報告では、12 月末のCPI とCPI トリム平均予想をともに4.5%としており、RBA 予想と比較したインフレの鈍化具合が焦点となる。

    隣国のニュージーランド(NZ)では11 日に11 月住宅建設許可件数の発表が予定されているが、NZ ドル相場への影響は限られるだろう。NZ ドルも対ドルでは年始からドルの買い戻しが進んでおり、対ドルでの下げ幅をドル円の上昇でどの程度相殺できるかが鍵となる。豪ドルと同様に対円では方向感が出にくくなるかもしれない。

    南アフリカ・ランド(ZAR)は下値リスクに注意。ZAR 円は昨年12 月からレンジ取引が続いているが、重要な下値目処である昨年8 月9 日安値の7.51 円や7 月7 日安値の7.46 円などが比較的近い水準に位置しており、これらの水準を下抜けるとテクニカル的には7.00 円近辺まで下値余地が拡大する。来週は南アフリカから特段のイベント・経済指標の発表などは予定されておらず、ドル相場などの外部要因次第の展開となりそうだが、警戒が必要な局面にあることは頭に入れておきたい。

     

    1 月1 日週の回顧

    豪ドルは対ドルでは弱含み、対円ではもみ合いとなった。昨年末から米長期金利の低下基調が一服したことに伴い、為替市場全般でドルの買い戻しが進むなか、豪ドルも対ドルでは売りに押された。一方で、豪ドル円は方向感の乏しい動き。対ドルでの下落分をドル円の上昇が相殺する格好となったため、狭いレンジ内で上下する神経質な動きが続いた。

    ZAR も対ドルで下落、対円では横ばい気味の推移となった。南アフリカから独自の材料などがなかったこともあり、米長期金利やドル相場などの動向に振らされる展開。ZAR 円は昨年12 月後半から続く7.70 円を挟んだレンジ内取引が続いた。(了)__

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    ポンド、金利先安観の程度を見定め

    ◆ポンド、日米英の金融政策に対する思惑で上下

    ◆ポンド、英金利先安観の程度を見定め

    ◆加ドル、カナダ金利低下は重しも日銀の政策修正後ずれの可能性が支えに

     

    予想レンジ

    ポンド円 180.00-187.00 円

    加ドル円 106.00-110.00 円

     

    1 月8 日週の展望

    ポンドは、英国だけでなく日米の金融政策に対する思惑で上下する展開となりそうだ。英国発で動意付きそうな材料は週末12 日の11 月鉱工業生産や月次国内総生産(GDP)まで待たねばならず、週前半は5 日発表の12 月米雇用統計を受けた流れが続くことになる。市場では、すでに昨年から、米連邦準備理事会(FRB)見通しよりも前のめりで米金利低下を織り込んできた。米雇用データ後のリスクとしては、先走った分の反動に金利市場が振れた場合かもしれない。

    日銀の金融政策は先行き不透明感が増している。年明けに能登半島を襲った大地震による被害を受け、市場では日銀による早期のマイナス金利解除観測が後退。依然として地震の被害状況を見極める必要はあるものの、金融正常化に簡単には舵を切ることはできない雰囲気が広まるようであれば、ポンド円を売りづらくなるのは確かだろう。

    また、英中銀が今年最初に金融政策委員会(MPC)の結果を公表するのは2 月1 日。会合に影響を与えそうな英賃金データや12 月消費者物価指数(CPI)などの発表は今月半ばに予定されている。昨年後半にかけてのインフレ鈍化を背景に短期金融市場では「5 月MPC から利下げが開始」との見方が優勢だ。5 月を含む12 月までの6 会合中、最低5 会合での0.25%引き下げ実施が織り込まれている。今後は、この金利先安観の程度を見定めることになりそうだ。

    加ドルも日米カナダの金利動向に左右されそうだ。9 日にカナダの11 月貿易収支や住宅指標が発表されるものの、相場へのインパクトは弱い。そうなると、米雇用データや12 月カナダ雇用統計の結果を受けたセンチメントが長引くことになるかもしれない。

    カナダ中銀(BOC)の2024 年第1 回目の金融政策決定会合は24 日。その1 週間ほど前に12 月CPI が発表予定だ。カナダも金利低下圧力が強まっており、今のところ「今年3 回目となる4 月会合から利下げサイクル開始」が有力視されている。短期金融市場では、4 月から秋口までの4会合連続で0.25%引き下げを織り込み、年末までに更にもう1 度の利下げもあり得るという予測だ。加ドル円にとってカナダ金利の低下基調は重しだが、日銀の政策修正の後ずれの可能性が支えとなり、綱引き状態のなかで方向感が掴み難い状況だ。

     

    1 月1 日週の回顧

    年明けのポンド円は178 円後半まで下落した。能登半島地震や欧米株安を受けたリスク回避の動きが先行。もっとも下値の堅さを確認すると一転上昇した。大地震による被害で、「日銀が早期にマイナス金利を解除できない」との見方から円売りが進んだ。週後半には183 円後半まで上げ幅を拡大している。ポンドドルは1.26 ドル前半から反発も、1.27 ドル前半では伸び悩んだ。

    加ドル円も上値重く始まったが、106 円前半の200 日移動平均線が支持水準として働いた。その後は円安の流れに沿って、108 円半ばまで加ドル買い円売りが進行。加ドルは対ドルで1.32 加ドル前半から1.33 加ドル後半まで加ドル安に振れた。(了)__

     


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