週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
日銀総裁講演などに注目
◆ドル円、植田日銀総裁の講演と日銀会合「主な意見」に注目
◆12 月の米シカゴ購買部協会景気指数や中国製造業・サービス業PMI にも注目
◆ユーロドル、ユーロ圏リセッション懸念で上値限定か
予想レンジ
ドル円 140.00-144.50 円
ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル
12 月25 日週の展望
ドル円は、25 日の植田日銀総裁の講演と27 日に公表される日銀金融政策決定会合(18‐19 日開催)での「主な意見」に注目している。植田日銀総裁は、7 日の参院財政金融委員会での答弁で、「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる。丁寧な説明、適切な政策に努めていきたい」と述べ、一段と慎重な金融政策運営が求められるとの認識を示した。ただ、18-19日の日銀金融政策決定会合で大規模な金融緩和政策の継続が決定された後の会見では、チャレンジング発言について、「国会で仕事への取り組み姿勢を問われ、一段と気を引き締めてというつもりだった」と説明した。また、マイナス金利解除の時期としては「1 月会合までの新しい情報次第にならざるを得ないが、新しいデータはそんなに多くない」と1 月説を否定している。
来週、25 日の植田日銀総裁の講演では、マイナス金利解除のタイミングや、政府経済見通しで2024 年度の消費者物価指数(CPI)が2.5%だったことへの見解を見極めることになりそうだ。また、27 日に公表される日銀金融政策決定会合の「主な意見」では、市場のマイナス金利解除への思惑に対して、11 日に関係者の話として「賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やYCC の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識」と一部で報じられたこともあり、実際の会合内での意見を確認したいところだ。米国経済指標では、29 日に発表される12 月シカゴ購買部協会景気指数、中国経済指標では年末の12 月製造業・サービス業PMI に注目している。
欧州では、ユーロ圏経済とドイツ経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性が高まりつつあるなか、来年の欧州中央銀行(ECB)による利下げ開始観測が浮上している。そのため、ユーロドルの上値は限定的だと予想される。
12 月18 日週の回顧
ドル円は、18-19 日の日銀金融政策決定会合で大規模な金融緩和政策の継続が決定されたことから一時144.96 円まで上昇したが、米10 年債利回りが3.8%台前半まで低下したこともあり141.87 円まで反落するなど荒い値動きとなった。年末で市場参加者が少なく、値幅を伴った動きが繰り返されている。植田日銀総裁の発言を巡り、様々な思惑が交錯する相場。
ユーロドルは、米長期金利の低下を受けて底堅い展開。週末にかけては、目先の戻り目処として意識されていた14 日の高値1.1009 ドルを上抜けて一時1.1013 ドルまで値を上げている。ユーロ円は、154.78 円から158.57 円まで上昇した後、ドル円の反落を受けて156.13 円まで反落した。(了)__
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
年末年始相場、方向感出にくい
◆年末年始は注目イベントも少なく、方向感出にくい
◆豪ドル、植田日銀総裁講演や米雇用統計など国外要因に警戒
◆ZAR、財政収支に注目も年末のフローに注意
予想レンジ
豪ドル円 93.00-98.00 円
南ア・ランド円 7.50-8.00 円
12 月25 日週の展望
豪ドルは小幅な値動きとなりそうだ。年末年始は地政学リスクで動く可能性はあるものの、市場を動意づけるのは難しいだろう。昨年末から今年の年始での2 週間の値動きを見ても、豪ドル円は2 円弱程度、豪ドル/ドルは約150 ポイントのレンジで上下を繰り返した程度で終わっている。豪州からは、年末年始の2 週間を通しても主だった経済指標の発表予定はない。また、隣国ニュージーランドからも同様に主だった指標の発表予定がない。豪ドルが主体性をもって相場を動意づけるのは、1 月9 日に発表される11 月小売売上高や1 月10 日の消費者物価指数(CPI)、1月18 日の12 月雇用統計までは難しそうだ。
そのため、オセアニア通貨は上述の地政学リスク以外では、他国の動向が左右する相場展開となるだろう。日本からは、25 日に植田日銀総裁が経団連の会議で講演する予定になっているほか、26 日には11 月の本邦雇用統計、2 年債入札、28 日には11 月小売売上高、鉱工業生産などが発表される。植田日銀総裁の発言次第で再び豪ドル円が動意づくことには警戒しておきたい。
また、米国からは27、28、29 日にそれぞれ2 年、5 年、7 年債入札が控えているほか、複数の重要指標が年末までに予定されている。年明けの1 月5 日には12 月雇用統計が発表される。入札結果や経済指標の結果次第では、米金利が動意づき豪ドル/ドル相場に大きく影響を与えることになるだろう。なお、米国の経済指標が強い結果となった場合は、豪州の12 月CPI を下方修正する予想も出てきていることもあり、豪ドル/ドルの重しになる。
南アフリカ・ランド(ZAR)もレンジ取引となりそうだ。南アからは29 日に11 月貿易収支、11月次財政収支が発表される。7-9 月期の経常赤字が大幅に減少したことで、11 月の財政赤字が市場予想よりも減少していればZAR の支えになるだろう。もっとも、29 日は月末、年末ということもあり、ロンドンフィキシングなどを中心に大きなフローが出る可能性がある。市場が想定している以上に大きな値動きとなることには注意が必要だろう。
12 月18 日週の回顧
豪ドルは対ドルでは小動き、対円では買いが優勢となった。日銀金融政策決定会合で緩和策が維持されたほか、フォワードガイダンスなどの文言変更もなかったことで、早期マイナス金利解除への思惑後退から豪ドル円は97 円半ばまで反発した。しかしながら、円売りの勢いも徐々に弱まり上値も抑えられた。また、RBA 議事要旨では「インフレは低下し続けたが、依然として高い」とインフレへの警戒感が維持されたが、今後の政策については「データ次第」としたこともあり、
市場の反応は限定的だった。
ZAR は対ドルでは横ばい、対円では反発した。豪ドル円同様に、日銀政策決定会合後に円安が進んだ影響で下値が支えられ、一時1 日以来となる7.89 円まで買い戻される場面もあった。対ドルでは18ZAR 前半でのもみ合いとなった。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
年末で取引閑散、方向感出にくい
◆年末で流動性低下に注意、手がかり難で方向感出にくい
◆ポンド、来年の利下げ思惑の高まりで上値重い
◆加ドル、動意に欠ける動きが続きそう
予想レンジ
ポンド円 178.00-185.00 円
加ドル円 105.00-109.00 円
12 月25 日週の展望
今週、主要国の中銀のなかでも日銀が今年最後の会合を行い、来週は相場全体に手がかりが乏しい。日銀は緩和策の継続を決定したものの、マイナス金利解除をめぐってはなお不透明感が強い。また、市場は米連邦準備制度(FRB)だけではなく、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)、カナダ中銀(BOC)など、他の主要中銀も来年早い段階で利下げに踏み切ると見込んでおり、相場に方向感が出にくい。ただ、クリスマス・年末休暇入りで流動性が低下し閑散取引となるなか、突発的な動きには注意が必要だ。
BOE は12 月会合で「インフレ退治はまだ道半ば」と、来年の利下げに言及したFRB と対照的なシグナルを発信した。今週もブロードベントBOE 副総裁は「政策転換には賃金上昇率減速の確信が必要だ」と強調した。また、ブリーデンBOE 副総裁も就任後初めての講演で、「賃金の伸びは依然として高すぎる」とし、「景気抑制的な金融政策を当面維持する必要がある」との考えを示すなど、市場で高まっている利下げ観測を改めてけん制している。
ただ、11 月消費者物価指数(CPI)が予想以上に伸びが鈍化したことを受けて、市場では来年の利下げを織り込む動きが一段と強まっている。11 月CPI は前年比3.9%と市場予想を大幅に下回り、2021 年9 月以来の低水準となった。ハント英財務相は、「インフレ率は半分以下に低下しており、経済からインフレ圧力が取り除かれつつある」と述べた。市場では来年3 月までの利下げ確率が5 割まで上昇。来年少なくとも5 回の利下げを実施すると見込んでいる。中銀と市場の利下げ見通しにズレが生じていることが、今後のポンドの動きに影響を与えそうだ。加ドルの動意は限られそうだ。
今週の原油相場は買い戻しが優勢となるも、中国の景気懸念や米原油生産量の増加が上値を圧迫。積極的な買いは見込めず、加ドルの支えにはなりにくい。また、11 月CPI は予想を上回る結果になったものの、来年早い段階でBOC が利下げに踏み切るとの市場の思惑は根強い。11 月CPI は前年比3.1%と鈍化予想に反して前月から横ばいとなった。市場では、依然としてBOC が来年の4 月にも利下げを開始すると見込んでいる。マックレムBOC 総裁は、「インフレ率が従来予想より早い来年末までに2%の目標に近づく」との見方を示し、「来年のある時点で、金利が低下し始める可能性がある」と述べたが、具体的な時期を示すことは控えた。
12 月18 日週の回顧
ポンド円は、日銀の緩和策継続の決定を受けて円売りが先行。一時184 円前半まで上昇したが、予想比下振れの英CPI やドル円の失速も重しに179 円後半まで押し戻された。ポンドドルも上値が重くなるも、全般ドルの重い動きが継続し1.26 ドル前半で下げ渋った。加ドルは予想比上振れの11 月CPI が支えに底堅い。ドル/加ドルは小動きながら1.33 加ドル割れまで加ドル高となったが、加ドル円はドル円につれた動きとなり、108 円前半から106 円半ばに失速した。(了)
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