週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    ドル円、日銀会合での議論に警戒

    ◆ドル円、日銀会合でのマイナス金利解除に関する議論に警戒

    11 月の米PCE 総合価格指数や日本のCPI にも注意

    ◆ユーロドル、独Ifo 景況感指数に注目

     

    予想レンジ

    ドル円 139.00-144.00 円

    ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル

     

    12 月18 日週の展望

    ドル円は、18-19 日の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除に関する議論に注目している。氷見野副総裁は6 日、大規模な金融緩和政策からの正常化の局面で家計や企業、金融機関に与える影響に言及し、「賃金と物価の好循環の状況を慎重に見極めた上で出口を適切に判断する」考えを示した。翌7 日には、植田日銀総裁が参院財政金融委員会での答弁で、「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる。丁寧な説明、適切な政策に努めていきたい」と述べ、一段と慎重な金融政策運営が求められるとの認識を示した。その後は、11 日に日銀関係者の話として「賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やYCC の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識」だと一部で報道。一方で、12 日には日経新聞が「12 月に解除を事前予告し、フォワードガイダンスを同時に修正する見方もある」とも報じており、予断を許さない状況となっている。

    米国では、来週22 日に11 月PCE 総合価格指数が発表されるが、10 月の前年比3.0%から伸び率鈍化基調が続いて2.8%と見込まれている。予想通りに米国のインフレ率が2%台に低下した場合、市場の利下げ開始予想の時期が来年3 月から1 月に前倒しされる可能性もあり警戒しておきたい。また、住宅ローン金利の上昇を受けた11 月の住宅着工許可件数、住宅建設許可件数、新築住宅販売件数などにも注目しておきたい。なお、日本の11 月のCPI は前年比2.6%と予想されており、10 月の2.9%からの伸び率鈍化が見込まれている。

    ユーロドルは、FRB の来年春辺りからの利下げ開始観測が高まっている一方で欧州中央銀行ECB)の政策金利の高止まり観測などから底堅い展開が予想される。ただ、ユーロ圏経済がリセッションに陥るとの警戒感から上値は限定的となりそうだ。ドイツ経済は、7-9 月期GDP がマイナス成長に転落。リセッションに陥るとの警戒感が高まっており、12 月の独Ifo 景況感指数に注目している。

     

    12 月11 日週の回顧

    ドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)でFF 金利の誘導目標レンジを5.25-5.50%で3 会合連続据え置くことを全会一致で決定したものの、ドットプロットの2024 年末の中央値が0.25%の利下げを3 回見込む水準まで下方修正されたことから140.97 円まで急落した。ただ、その後は142 円台半ばまで買戻されている。ユーロドルは、米10 年債利回りが3.88%台まで低下したほか、ECB 定例理事会でタカ派的な姿勢が示されたことから1.1009 ドルまで買われている。ユーロ円は、ドル円の下落につれて153.87 円まで大幅な下落となったものの、ECB 定例理事会後には156 円台まで買戻されている。(了)

     

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、対円では上値が重い

    ◆豪ドル、対ドルはもみ合いも対円では上値が重い

    NZ ドル、インフレ鈍化予想高まり上値は重い

    ZAR、食品インフレ上昇と小売りの低迷で軟調予想

     

    予想レンジ

    豪ドル円 91.00-97.00 円

    南ア・ランド円 7.30-7.80 円

     

    12 月18 日週の展望

    豪ドルは対ドルではもみ合いも、対円では上値が重くなりそうだ。今週は米、ユーロ圏、英国、スイスなどが今年最後となる政策決定会合を行ったこともあり、豪ドルもその動きに連れて神経質な動きを見せた。これらのビッグイベントを通過したことで、来週の豪ドル/ドルの値動きは限られたものになりそうだ。ただ、豪ドル円は日銀政策決定会合(18-19 日)の結果や植田日銀総裁の記者会見が終了するまでは予断を許さない状況だ。ゼロ金利政策を解除することはないとみているが、今後の解除を示唆した場合には上値を抑える要因となるだろう。

    例年、12 月最後の2 週間は、市場参加者が激減することで流動性の悪化が懸念されるが、そういった中で19 日には5 日に行われたRBA(豪準備銀行)理事会の議事要旨が公表される。声明文では判断できなかった踏み込んだ内容には警戒しておきたい。声明文では、タカ派色が後退したとされた前回声明をほぼ踏襲。豪金利の低下を招き豪ドル安となった。年明けに発表される12 月の消費者物価指数(CPI)を下方修正する予想も出てきているほか、13 日に発表された中期経済財政見通しでは、インフレ率について、23/24 年は3.75%、24/25 年は2.75%、25/26 年は2.5%へと低下する予想となっている。議事要旨で更にインフレ低下を示唆する文言があった場合は敏感に反応することになりそうだ。また、NZ ドルは上値が重いとみている。11 月の食品価格が3 カ月連続でマイナスとなったことを受けて、一部金融機関はNZ の10-12 月期インフレ予想を+0.5%から+0.3%まで引き下げた。また、今週発表された7-9 月期の国内総生産(GDP)がマイナスに転じたこともNZ ドルの重しになりそうだ。なお、NZ からは18 日に10-12 月期ウェストパック消費者信頼感、19 日に11 月貿易収支とANZ 企業活動見通し、企業景況感、20 日に半期の経済・財務アップデートが財務省から公表される。

    南アフリカ・ランド(ZAR)は引き続き上値が重そうだ。今週発表された11 月CPI は市場予想より低下。インフレに苦しむ南アにとっては良い結果となった。ただ、鳥インフルエンザの影響もあり、食品インフレ率は9%まで加速している。低所得者にとっては厳しい結果となった。また、10 月の小売売上高は前年が大幅に低下していたにもかかわらず、更に低下幅を広げるなど経済の停滞が顕著となっており、南アランドの重しになるだろう。なお、来週は南アからは主だった経済指標の発表等は予定されていない。

     

    12 月11 日週の回顧

    豪ドルは対ドルでは強含み、対円では横ばいだった。対ドルでは米連邦公開市場委員会(FOMC)後に米国の早期利下げ観測が高まったことで強含んだ。また、11 月の新規雇用者数が、常勤雇用者を中心に、市場予想を大幅に上回ったことも支えになった。ZAR は地合いが弱いまま。対ドルでは米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測の高まりがZAR を支えた。ただ、ZAR 買いの勢いは弱く、対円では7 円半ばから後半で上値が重く推移して地合いの弱さを示した。(了)__

     

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    ポンド、対ドルでは底堅い

    ◆対円では、日銀金融政策決定会合と植田日銀総裁の会見次第

    ◆ポンド、対ドルでは底堅い動きを予想

    ◆加ドル、米金融政策への優位性は限定的

     

    予想レンジ

    ポンド円 178.00-186.00 円

    加ドル円 104.00-109.00 円

     

    12 月18 日週の展望

    今週で主要国の中銀は年内の金融政策会合を終えて、残すは来週の日銀金融政策決定会合のみとなっている。日銀の政策決定をめぐる憶測で円相場は神経質な動きが続いているが、クリスマス休暇を迎え市場の流動性が低下するなか、来週の日銀会合と植田日銀総裁の会見次第では、値幅を伴った動きが見込まれる。

    イングランド銀行(英中銀、BOE)は今週の会合で市場予想通りに政策金利を5.25%に据え置いた。決定は6 対3 と前回同様に3 人が利上げを主張した。また、インフレ抑制のためには「十分に景気抑制的な金利が十分な期間が必要」とのガイダンスを維持し、来年の利下げを示唆した米連邦公開市場委員会(FOMC)と違って、高めの金利を長期化させる方針を堅持した。インフレ率の短期的な見通しについては「11 月時点での予想よりやや低い」とし、「賃金上昇率は下振れ」との見解を示す一方で、政府推奨の最低賃金の引き上げ計画にも言及して上振れリスクも指摘した。ベイリーBOE 総裁は、インフレ退治は「まだ道半ば」と強調し、「市場の早い段階での利下げ憶測は時期尚早」と述べた。BOE のタカ派寄り姿勢がポンドの支えとなりそうだが、10 月GDP は前月比で3 カ月ぶりのマイナスになるなど、根強い景気減速への懸念で上値も重い。政策イベントを通過し、ポンドは底堅い動きが予想されるが、来週は11 月の消費者物価指数(CPI)や小売売上高などの発表が予定されている。結果がBOE 政策見通しの憶測につながる相場展開が続きそうだ。

    加ドルは原油相場のさえない動きが重しとなりそうだ。カナダ中銀(BOC)は依然として利下げに踏み込んでおらず、追加利上げの可能性を残している。加ドルの下押し局面での値幅は限られそうだが、米連邦準備制度理事会(FRB)と比較して政策見通しに優位性があるとはいえず、対ドルでの大幅上昇は期待できない。足もとで原油相場は米国の増産基調と中国景気の回復ペース鈍化懸念で大きく上昇に転じる可能性は低く、産油国通貨である加ドルにとっては引き続き上値を圧迫する要因となりそうだ。来週、加国内では11 月CPI や、10 月GDP、小売売上高など複数の注目指標の発表が予定されている。10 月のCPI はBOC が重視する中央値とトリム平均値がともに前年比3%台まで伸びが鈍化し、市場では来年早い段階での利下げを織り込む動きが強まったが、BOC の12 月会合後に行き過ぎた利下げ観測に修正が入っている。BOC の政策姿勢が焦点となる相場展開が続くなか、11 月CPI の結果が注目されている。

     

    12 月11 日週の回顧

    米国のFOMC で来年の利下げに言及し、全般ドルが重い動きとなった。BOE のタカ派姿勢継続を支えにポンドドルは1.28 ドル手前まで上昇し、ポンド円は178 円前半から181 円半ばまで持ち直した。ドル/加ドルは1.34 加ドル割れまで加ドル高となったが、加ドル円はドル円の大幅安につられ一時104 円後半まで下押した。(了)

     


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