週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
FOMC、ECB の金融政策に注目
◆ドル円、FOMC での利下げ時期言及の有無に注目
◆ドル円、日銀関係者の発言に警戒
◆ユーロドル、ラガルドECB 総裁の発言に注目
予想レンジ
ドル円 140.00-147.00 円
ユーロドル 1.0500-1.0950 ドル
12 月11 日週の展望
ドル円は、12-13 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に注目。政策金利の据え置きが見込まれているが、市場が織り込んでいる来年3 月~5 月の利下げ開始観測への見解やパウエルFRB 議長の定例記者会見での言及がポイントとなりそうだ。
パウエルFRB 議長は、ブラックアウト期間直前に「十分に景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論づける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早」とタカ派的な見解を述べつつも、「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMC は慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランス(more balanced)がとれてきている」とハト派的な見解も述べている。また、日本側でも、植田日銀総裁が7 日に「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と述べたことから、市場では18-19 日の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測が急速に高まっている。今週も、日銀関係者の発言を見極めつつ、マイナス金利解除の可能性を探ることになりそうだ。13日に公表される日銀短観12 月調査では、大企業製造業DI が予想通りに改善した場合、金融政策正常化観測が高まることになるだろう。米国11 月の消費者物価指数や小売売上高にも注目しておきたい。アトランタ連銀の経済予測モデル『GDP ナウ』では、10-12 月期GDP 予想が+1.2%を示しており、景況感悪化が示唆されている。
ユーロドルは、14 日の欧州中央銀行(ECB)理事会で政策金利の据置きが予想されていることで、上値が重い展開が予想される。5 日には、ECB で最もタカ派と見なされていたシュナーベルECB 専務理事がハト派的な見解を述べたこともあり、市場では来年第1 四半期に金融緩和サイクルを開始するとの憶測が高まっている。現在5 回の0.25%の利下げが完全に織り込まれており、さらに6 回目の可能性も80%あるとみられている。ECB 理事会やラガルドECB 総裁の会見では、利下げ時期への言及に注目しておきたい。ユーロ圏のリセッション(景気後退)入り懸念やECBの早期利下げ開始観測から、ユーロの下値リスクが高いとみている。また、経済指標では、リセッション(景気後退)入りが警戒されているドイツの12 月ZEW 景況指数に注目しておきたい。
12 月4 日週の回顧
ドル円は、2024 年3 月からの利下げ開始観測や今月の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測などを受けて、147.50 円から一時141.71 円まで急落した。ユーロドルも来年早期の利下げ開始観測が台頭すると、1.0895 ドルから1.0755 ドルまで下落したものの、その後は1.08 ドル台まで値を戻している。ユーロ円は、荒い値動き。159.93 円から153.23 円まで急落後、155 円まで買い戻される場面もあったが再び上値は抑えられた。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
豪ドル、利上げ打ち止め観測高まる
◆豪ドル、利上げ打ち止め観測高まり上値は重い
◆豪ドル、11 月雇用統計に注目
◆ZAR、対円では下値リスク拡大の可能性
予想レンジ
豪ドル円 93.00-97.50 円
南ア・ランド円 7.40-7.90 円
12 月11 日週の展望
豪ドルは上値が抑えられそうだ。今週行われた豪準備銀行(RBA)理事会では、市場予想通りに政策金利を据え置いた。注目された声明文では、追加利上げについてはデータ次第とし、最重要となる結びの最終段落の部分も全くの変化なし。タカ派色が後退したとされた前回声明をほぼ踏襲した。一方、「中国経済の見通しや海外の紛争の影響に関しては、依然として高いレベルの不確実性が存在している」としているものの、「サービスのインフレが低下している」ことや、「生産性の伸びが回復すれば、賃金上昇はこれ以上大きくは伸びず、インフレ目標と整合的になる」などの見解も示した。
これまでの声明よりもタカ派ではないと受け止められ、発表後に豪金利は低下傾向を辿った。市場では欧米同様に利上げ打ち止め観測が高まっている。これまで1-2 回の更なる利上げを予想していただけに、豪ドルは上値が抑えられる展開を予想する。
来週の注目は14 日に発表予定の11 月雇用統計。10 月の失業率は3.7%となり、9 月にRBA が発表した見通しとほぼ変わらない水準を保っている。RBA の予想は12 月にかけて3.75%、来年5月は4%となっているが、このまま雇用情勢が悪化しない場合は豪ドルの支えになるだろう。なお、その他では12 日に12 月NAB 企業信頼感・景況感、14 日にメルボルンインスティテュートが公表する12 月インフレ期待にも注目。また、12 日にブロックRBA 総裁、14 日にジョーンズRBA総裁補が講演を予定している。
南アフリカ・ランド(ZAR)は引き続き上値が重そうだ。今週発表された、7-9 月期国内総生産(GDP)は市場予想を下回り、マイナスに転じた。市場では10-12 月期も景気停滞となってマイナスに陥るとの予想となっており、南アは景気後退(リセッション)入りの可能性が高まっている。来週は13 日に11 月消費者物価指数(CPI)が発表されるが、国内エネルギー基準価格が低下していることからインフレは抑えられている可能性が高い。ただ、市場予想を上回った場合には、インフレ下の景気後退でスタグフレーション懸念も高まりそうだ。なお、11 日には10 月小売売上高、14 日には卸売物価指数(PPI)も発表される予定。
12 月4 日週の回顧
豪ドルは対ドル・対円ともに弱含んだ。対円では前週に98.54 円まで上昇したが、年初来高値を上抜けられずに下落。週末にかけては10 月1 日以来の93.73 円まで急落した。RBA 理事会での声明文で、利上げ打ち止め観測が高まったことが重し。ただ、7-9 月期設備投資の伸びが大きかったことは豪ドルの支えになっている。ZAR は弱含んだ。対円では11 月中旬に年初来高値を更新後から戻り売りが続いている。7 日にはドル円の暴落もあり一時7.56 円と8 月半ば以来の安値まで下げ幅を広げた。対ドルでも10 月26 日以来となる19ZAR 台まで一時ZAR 安が進んだ。7‐9 月期GDP が弱い結果となったことも売り要因となった。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
ポンド、BOE 議事要旨に注目
◆対円ではFOMC と日銀のマイナス金利解除をめぐるヘッドラインなどに注目
◆ポンド、BOE の議事要旨に注目
◆加ドル、原油相場の動きに注意
予想レンジ
ポンド円 178.00-186.00 円
加ドル円 103.50-108.50 円
12 月11 日週の展望
来週は米国で11 月消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)、同月小売売上高など注目の経済指標のほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表も控えており、ドルが主役の相場展開が予想される。市場では来年の米利下げを織り込む動きとなっており、利下げ開始の適切な時期をめぐる議論があるかどうかも注目だろう。しかしながら利下げ期待に行き過ぎ感も出ているため、為替相場全体がドルの荒っぽい動きに振り回される可能性がありそうだ。また、今週は日銀がマイナス金利解除に動くとの憶測で円買いが進み、来週も関連のヘッドラインに注視したい。
ポンドは、引き続き英景気の下振れとインフレ上振れの二つのリスクに振り回される相場展開が続いている。今週発表の英経済指標は強弱まちまち。11 月サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値は50.9 と速報値から上方修正され、4 カ月ぶりに景気判断の分岐点とされる50 を上回った。サービス部門全体では雇用は改善し、短期的なインフレ見通しについて警戒感を示す内容となった。一方で、11 月建設業PMI は45.5 と3 カ月連続で50 を下回り、建設部門の低迷が他部門より顕著になっていることが示された。住宅ローン金利は夏以降低下傾向にあるものの、住宅建設は利上げの影響が強く残されている。また、イングランド銀行(英中銀、BOE)の半年に一度の金融安定報告書では、「生活費の増加と金利の上昇が依然として家計を圧迫している」と指摘されたほか、「経済活動の低迷、世界の成長とインフレ見通しへのさらなるリスク、地政学的緊張の高まりを反映し、全体的なリスク環境は引き続き厳しい」との見方を示した。
来週のBOE 会合では3 会合連続で政策金利の据え置きが予想されているが、議事要旨の内容に注目している。市場では利上げサイクルは終焉を迎えたとの見方が多く、利下げ時期に目を向けているが、インフレ再加速への警戒感は根強く利下げを織り込むのはまだ早いだろう。
加ドルは、来週主な経済指標の発表や注目のイベントは予定されておらず、ドルと原油相場及び日銀の金融政策関連のヘッドラインに絡んだ円相場に左右される動きとなる。カナダ中銀(BOC)は今週の会合で予想通りに政策金利を5.0%に据え置いた。声明では景気減速への懸念を示し、物価圧力は緩和しつつあるとの認識を示した一方で、インフレ懸念を踏まえ追加利上げの可能性に含みを残した。ただ、短期金融市場では早ければ来年3 月にも利下げに踏み切る可能性があるとの観測が強まっている。また、今週のNY 原油先物が6 月以来の水準まで下落するなど原油相場の下落が続いており、加ドルは上値の重い動きが見込まれる。
12 月4 日週の回顧
7 日に日銀の早期マイナス金利解除への思惑が高まり、円ショートポジションの調整が再燃。ポンド円は一時179 円割れ、加ドル円は一時104 円前半まで暴落した。また、ポンドドルは一時1.25 ドル半ばまで押し戻された。ドル/加ドルは、BOC 会合は無風通過となったが、原油安が加ドルの重しとなると1.36 加ドル前半まで加ドル安となった。(了)__
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