週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    ドル円、米利下げ観測も底堅い

    ◆ドル円、米利下げ観測台頭も円先安観が根強く底堅い
    ◆ 米感謝祭で週後半にかけては市場参加者が減少
    ◆ ユーロドル、米利下げ観測から底堅い展開が想定される 

     

    予想レンジ

    ドル円 149.00-153.00 円
    ユーロドル 1.0700-1.1100 ドル 

     

    11 月 20 日週の展望 

    ドル円は、来年の米利下げ観測が高まっているものの、根強い円先安観から底堅い動きとなりそうだ。14 日に発表された 10 月米消費者物価指数(CPI)は予想を下回る結果となり、12 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における政策金利の据え置きがほぼ確実視され、「米利上げサイクルは終了した」との見方が広がった。それに加え、早ければ来年の 3 月か 5 月には利下げを開始するとの観測も出ており、ドルの上値の重さが目立っている。ただ、10 月米雇用統計時と同様に、ドル円は大きく下落した後はほぼ全戻しの展開となるなど、本邦実需勢を中心とした押し目買い意欲の強さが改めて窺われている。上下しながらも下値の堅い動きが続きそうだ。 

    また、15 日に発表された 7-9 月期国内総生産(GDP)が大幅なマイナス成長だったことを受けて、市場では「日銀がマイナス金利を解除するのはまだ先なのでは」との思惑が浮上している。一段の円売りを見込む声が出ているうえ、米金利低下により日本をはじめ世界的に株価が堅調に推移していることも円売りの追い風となっている。 

    なお、来週は 23 日が勤労感謝の日で東京市場が祝日のうえ、米国も感謝祭で休場。翌 24 日も米株式・債券市場が短縮取引となるなど、週後半にかけては市場参加者が極端に減少して値動きは期待できない。ただ、24 日には米国の購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表されるため、薄商いの中で結果次第では荒い値動きとなることも想定しておかなければならないだろう。 

    ユーロドルは、来年の米利下げ観測の高まりから底堅い展開が想定される。200 日移動平均線を 9 月以来、2 カ月半ぶりに上抜けて来たことから、テクニカル面からみても買いが入りやすい地合いとなっている。経済イベントとしては、23 日に欧州各国の PMI 速報値が発表される。今週発表された 11 月 ZEW 景況感指数が強い内容だったことから、PMI の数値次第ではユーロ圏の景気減速懸念が後退しユーロの一段高にもつながる可能性がある。

     

    11 月 13 日週の回顧 

    ドル円は、一進一退の展開となった。週明けに一時 151.91 円と年初来高値を付けたが、10 月米 CPI が予想を下回ったことが伝わると米長期金利が急低下し急落。翌 15 日には弱い卸売物価指数を受けて 150.06 円まで売り込まれたものの、小売売上高などは強い結果だったため、米金利の一転上昇ともに 151.43 円まで買い上げられた。ただ、16 日には輸入物価指数などが低調だったことから 150.29 円まで再び値を下げるなど方向感が定まっていない。 

    ユーロドルは買いが優勢となった。週前半は 1.07 ドルを挟んだもみ合いが続いていたが、弱い米 CPI をきっかけに米金利の急低下とともに買いが活発化。その後も底堅い動きが続き、一時1.0896 ドルまで買い上げられた。

    (了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド) 

    ZAR、金融政策後の荒い値動きに注意

    ◆豪ドル、ドル相場主導の動きが継続
    ◆米国の感謝祭を控えて手控えムードが強まる可能性
    ◆ZAR、流動性低下する中で SARB 金融政策発表後の荒い値動きに注意 


    予想レンジ

    豪ドル円 96.00-100.00 円
    南ア・ランド円 8.00-8.50 円

     

     

    11 月 20 日週の展望

    豪ドルは神経質な展開が予想される。10 日に公表された豪準備銀行(RBA)の四半期金融政策報告では消費者物価指数(CPI)や CPI トリム平均などの見通しが軒並み上方修正され、CPI が RBAのインフレ目標である 2-3%のレンジ内に収まる時期についても 2025 年末へと後ずれした。豪金融引き締めの長期化観測が高まるなか、来週 21 日には 5 会合ぶりの追加利上げを決めた今月分の金融政策決定理事会議事要旨が公表予定。今後の金融政策に関してさらなるヒントが得られるか注目される。 

    もっとも、今週の豪ドル相場は総じて米経済指標やドル相場の動向に振らされ、豪州からの独自の材料に対しては反応が乏しかった。来週も外部要因に振らされる相場展開となる可能性が高く、警戒しておきたい。ただ、来週は 23 日に米国の感謝祭が控えていることから、全般に手控えムードが広がりそうだ。 

    なお、テクニカル的にみると、豪ドルは対ドル・対円ともに下値の堅さを確認した格好となっている。ドル円には政府・日銀による介入警戒感なども根強く残っているが、日銀の金融緩和方針を手掛かりした円売り圧力も続いているため、特に対円では豪ドルも下値を支えられそうだ。 

    隣国のニュージーランドでは 21 日に 10 月貿易収支、24 日に 7-9 月期小売売上高が発表される。ただ、前述したように来週は感謝祭ウィークで相場全般に様子見ムードが広がることが想定されるほか、翌週の 29 日には NZ 準備銀行(RBNZ)による年内最後の金融政策決定会合が控えていることもあり、持ち高を積極的には傾けにくくなるだろう。 

     南アフリカ・ランド(ZAR)は荒い値動きに注意が必要となる。来週は 22 日に 10 月消費者物価指数(CPI)、翌 23 日には南アフリカ準備銀行(SARB)の金融政策と重要イベントが数多く予定されている。SARB は 8.25%で金利据え置きの予想となっているが、感謝祭当日で流動性の低下が予想される中での発表となるため、金融政策公表後は荒い値動きとなる可能性に警戒しておきたい。なお、国営輸送会社トランスネットは前週に返済期限を迎えた 44 億ランド債務を借り換えることで合意したが、今週に入って米格付け会社ムーディーズが同社の流動性の低下と借り換えリスクの高さを懸念しているとして、「トランスネットの信用格付けを格下げ方向で検討に入った」と報じられた。こちらは南アフリカ経済にとって中長期的なマイナス材料となる可能性があり、続報に注目しておきたい。 

     

    11 月 13 日週の回顧 

    豪ドルは強含み。14 日に公表された 10 月米消費者物価指数(CPI)が予想比で下振れたことを受け、米長期金利の急低下とともにドルが全面安となり、豪ドルも対ドルを中心に上昇。豪ドル円もつれ高となった。ZAR も強含み。14 日の米インフレ指標をきっかけに対ドル・対円で ZAR 買いが強まり、ZAR 円は連日で年初来の高値を更新した。(了) 

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル) 

    加ドル、CPI に振らされる展開

    ◆ポンド、英金利先安観が重しに 
    ◆リスクセンチメントの強弱の見定めが必要 
    ◆加ドル、10 月 CPI に振らされる展開か 

     

    予想レンジ

    ポンド円 184.00-190.00 円 
    加ドル円 107.50-111.50 円 

     

    11 月 20 日週の展望

    ポンドは英インフレ鈍化を受けた英金利先安観の強まりによる上値の重さと、米インフレ減速に端を発したリスク・オンの流れの綱引き状態となりそうだ。 

    14 日発表の 10 月消費者物価指数(CPI)は前年比 4.6%となった。9 月分 6.7%からの大幅鈍化は、既に英中銀チーフエコノミスト・ピル MPC(金融政策委員会)委員が 5%割れを示唆していたためサプライズではない。ただ、市場予想の 4.8%さえも下回ったことは、英中銀(BOE)による金融引き締めの打ち止めだけでなく、来年以降の政策金利引き下げ幅拡大の思惑を強めた。CPIの結果を受けて、短期金融市場は来年 3 回の 0.25%利下げを織り込んでいる。 

    一方、中銀がインフレ目標とする 2%とは距離があり、ベイリーBOE 総裁は金融緩和について「時期尚早である」とキッパリと否定している。一時は市場の利下げ観測を否定しなかったピル中銀チーフエコノミストも、「政策金利の維持が重要だ」と総裁に口調を合わせてきた。金融当局の懸念材料は、賃金上昇率が依然として高過ぎること。ボーナスを除いた 7-9 月期平均賃金は前年比7.7%と過去 2 四半期を下回ったものの、減速は小幅に留まった。今後の金融政策を巡り、市場の思惑と当局との駆け引きが続くことになりそうだ。 

    また、今週は米国の 10 月インフレ指標が想定より弱かったことを受け、米金融引き締めの長期化懸念が大きく後退し、リスク・オン地合いが強まった。円売りやドル売りが優勢となる状況はポンドにとってポジティブ要因。もちろん相場の行き過ぎには注意しながらの取引とはなるだろうし、ドル円の水準次第では本邦金融当局による円買い介入にも警戒が必要となる。加ドルに対しても同様だろう。 

    加ドルは 10 月 CPI の結果に振らされる展開となりそうだ。カナダ中銀(BOC)の 12 月会合の前としては最後の主要インフレ指標となる。12 月 1 日には 11 月の雇用統計が発表されるものの、今回の CPI が金融政策に与える影響は大きいだろう。前回の BOC 会合では、追加利上げの可能性を指摘する声も出ていたなか、2 会合連続の据え置きが決定された。今週の米国に続き、加インフレが弱めの結果だった場合には、カナダ金利の低下圧力が増すことになる。加ドルの買いづらさに繋がりそうだ。

     

    11 月 13 日週の回顧

    ポンドは対円で 184 円後半から年初来高値となる 188 円前半まで上昇。米金利の先安観を背景 に株式市場が堅調となり、クロス円はリスク・オンの円売りが優勢となった。米金利低下を受け て、対ドルも 1.22 ドル台から 1.25 ドルまで上値を伸ばした。ただ、その後は英インフレ指標の 予想比下振れが重しとなり、対円・対ドルともに伸び悩んでいる。 加ドルは対円で 9 月末以来の高値となる 110.60 円台まで強含み。対ドルでも 1.36 加ドル半ば まで加ドル高に振れた。もっとも、その後は原油安に引きずられて戻り売りが進んでいる。(了)

     


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