週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    日米の金融政策や中東情勢に警戒

    ◆ドル円、日米の金融政策や中東情勢に警戒する展開

    ◆ジョンソン米下院議長の下での議会運営や本邦通貨当局による円買い介入などにも警戒

    ◆ユーロドル、10 月ユーロ圏消費者物価指数や7-9 月GDP に注目

     

    予想レンジ

    ドル円 148.00-152.00 円

    ユーロドル 1.0300-1.0700 ドル

     

    10 月30 日週の展望

    ドル円は、日米の金融政策を見極めながら、中東情勢の緊迫化を受けた有事のドル買いと本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開が予想される。30-31 日の日銀金融政策決定会合では、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2023 年度24 年度のコア消費者物価指数の見通しが上方修正となる可能性が警戒されている。市場の予想では、23 年度が7 月時点の2.5%から3.0%付近、24 年度が1.9%から2.0%以上に引き上げられると見込まれている。さらに、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)も、7 月の1.0%への上限引き上げに続く再修正の可能性の憶測も台頭している。一方、31-11 月1 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米国中長期金利の上昇が利上げの代替となるとの見立てや中東情勢の不透明感から、政策金利据え置きの観測が高まっている。米10 年・30 年債利回りが一時5%台まで上昇するなど、長期金利が急上昇しており、FF 金利誘導目標5.25-50%を引き上げる必要性が後退している模様だ。また、中東の地政学リスクとしては、先週も指摘したが、イスラエルがガザへの地上侵攻を本格的に開始した場合、イスラム組織のハマスを支援しているイランが参戦して、第5 次中東戦争に発展し、イランがホルムズ海峡を封鎖することで石油ショックとなる可能性に引き続き警戒しておきたい。円建て資産のトリプル安(円安、株安、債券安)の可能性が高まることになりそうだ。ドル高・円安が加速した場合は、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒したいところだ。更に、米下院ではジョンソン米下院議長が選出されたものの、11 月17 日のつなぎ予算の期限に向けて2024 年度予算案が成立しなければ、米政府機関が閉鎖される可能性が高まるほか、格付け会社ムーディーズによる米国債格下げの憶測も再浮上することになりそうだ。

    ユーロドルは、10 月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)や7-9 月域内総生産(GDP)速報値に注目する展開となる。ユーロ圏は10-12 月期にリセッション(景気後退)に陥る可能性が警戒されており、インフレの高止まりによるスタグフレーションへの警戒感を高めることで、ユーロ売り要因となっている。

     

    10 月23 日週の回顧

    ドル円は、好調な米国住宅指標や低調な米5 年債入札を受けた米10 年債利回りの上昇を背景に、149.32 円から年初来高値となる150.78 円まで上昇した。その後も150 円台前半での推移が続いている。ユーロドルは、米10 年債利回りの上昇やECB 理事会の政策金利据え置きを受けて、1.0694ドルから1.0524 ドルまで下落した。ユーロ円は、159.92 円から158.10 円まで下落したものの、その後は158 円台後半まで買い戻されている。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、インフレ高進も株安が重し

    豪ドル、CPI 上振れで3 年債利回りは2011 年以来の水準まで上昇

    ◆豪ドル、中東情勢の悪化懸念によるリスク回避の動きが重しに

    ZAR、米金利動向と中期予算発表に注目

     

    予想レンジ

    豪ドル円 93.00-96.50 円

    南ア・ランド円 7.60-8.10 円

     

    10 月30 日週の展望

    豪ドルは神経質な動きとなりそうだ。今週発表された、7-9 月期の豪消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、豪準備銀行(RBA)が重要視する、(総合品目の中から最も価格変動の大きい30%の品目を除いた)トリム平均値も予想を上振れた。この結果を受けて豪3 年債利回りは、2011年以来となる4.3%台まで上げ幅を拡大。また、オーバーナイト・インデックス・スワップから算出した次回の利上げ確率は一時7 割を超えた。来週11 月1 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置き観測が高まる中で、RBA の利上げ期待が対ドルでの支えになる。

    ただ、下値リスクにも依然として警戒は必要だ。CPI の翌日に議会証言を行ったブロックRBA総裁は「CPI の上昇は想定内」と発言するなど、市場ほどインフレへの警戒感は強くない。また、中東でイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が避けられない状態であることも懸念材料。特に、イスラエルがガザへ本格的な地上侵攻を実行した場合には、イランが参戦する可能性もあり、戦火が拡大し原油急騰や株価がさらに下げ幅を拡大する可能性が高くなるだろう。戦火の拡大は、リスク回避の動きに敏感な豪ドルの重しになる。

    なお、来週の経済指標では30 日に9 月小売売上高、11 月1 日に住宅建設許可件数、11 月2 日に貿易収支が発表予定。また、隣国のニュージーランドからは11 月1 日にNZ 準備銀行(RBNZ)の金融安定化レポートが公表されるほか、7-9 月期雇用統計が発表される。雇用統計は失業率や雇用者数増減だけでなく、平均賃金や民間賃金にも注目したい。

    南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が重そうだ。国外要因としてはFOMC とその後に行われるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見が重要になる。ここ最近のZAR 相場は米金利動向に左右されており、FOMC 前後は対ドルで激しく動くことが予想される。南アのイベントは来週30 日9 月財政収支、31 日に貿易収支が発表されるが、最も重要なのが11 月1 日の中期予算政策声明(MTBPS)の発表。財政がひっ迫しており、緊縮財政案が公表されるとの予想だが、労働組合は緊縮財政に対してストライキを示唆している。来年の選挙を控え、財政バランスを無視し、国民受けの良い政策を発表した場合はZAR 売りに反応する可能性が高い。なお、今週はハト派だったナイドゥ南ア準備銀行(SARB)副総裁が辞任を表明した。ZAR の支えにはなるものの、すでに市場は11 月の利上げを織り込みつつあることから、影響は限定されそうだ。

     

    10 月23 日週の回顧

    豪ドルは対円では横ばい、対ドルでは軟調だった。7-9 月期豪CPI が予想を上回ると豪ドルに買いが集まった。ただ、その後はRBA 総裁のハト派寄りの議会証言や世界的な株安の動きで戻り売りが優勢となった。対ドルでは昨年11 月以来となる0.62 ドル後半まで弱含んだ。ZAR はもみ合いとなった。週前半は米金利が上昇基調を辿ると、ドル買い・ZAR 売りが優勢になりZAR の頭を抑えた。しかし、週後半はZAR の買い戻しが入り行って来いとなった。(了)

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    英中銀、政策金利を据え置きか

    ◆対円では、日米の金融政策会合や介入懸念に絡んだドル円の動きに左右

    ◆ポンド、英中銀の政策会合に注目も金利は据え置き予想

    ◆加ドル、年内利上げの思惑後退で上値は重い

     

    予想レンジ

    ポンド円 179.00-185.00 円

    加ドル円 107.00-111.00 円

     

    10 月30 日週の展望

    来週のポンドはイングランド銀行(英中銀、BOE)の金融政策委員会(MPC)が注目ポイントとなるが、日米の金融政策会合も開催されることで、結果公表を受けた円とドルの動きも大きな影響を受ける可能性がある。特に年初来高値を更新中のドル円は介入警戒感も絡んで神経質な動きになる可能性があり、ドル円につれたクロス円全般の値幅を伴った動きにも警戒したい。BOE 会合では、政策金利は5.25%での据え置きが見込まれる。9 月会合では4 人が利上げを主張。1 票の僅差で据え置きが決定され、タカ派寄りの据え置きとの見方もできる。今後中東の地政学リスクが高まればエネルギー価格が一段と上昇し高インフレが長期化するとの観測が再燃するなど、追加利上げを必要とする新たな判断材料が出てくる可能性は残されているが、9 月会合後に発表された英経済指標はおおむね金融政策の現状維持を支持する内容となった。

    6-8 月の賃金は伸びが鈍化し雇用者数も減少と、インフレ圧力に緩和の兆しが見られた。9 月消費者物価指数(CPI)は前年比6.7%と伸びの鈍化予想に反して前月から横ばいとなるも、BOE が8 月に予想した6.9%は下回った。BOE の14 回連続の利上げが経済に重くのしかかり始めた今、利上げ見通しを高めるほどではない。また、10 月サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は49.21 月以降で最低水準となり、3 カ月連続で景気判断の分岐点とされる50 を下回った。製造業PMI45.2 と3 カ月ぶりの高水準となるも、依然として生産の急速な縮小を示している。

    加ドルは、今週にカナダ中銀(BOC)の金融政策会合を通過し、来週は中東情勢に絡んでの原油相場を睨みながら日米の金融政策と週末の米・加雇用統計に注目する展開となる。BOC は今週の会合で政策金利を2 会合連続で5%に据え置いた。成長見通しを今年は1.2%、来年は0.9%に下方修正した一方で、来年のインフレ見通しは7 月時点の2.5%から3%に引き上げた。声明では「過去の利上げが経済活動を抑制し、物価圧力を緩和させているという証拠が増えている」と指摘した一方、物価安定に向けた進展が鈍くインフレの高止まりを想定しており、追加利上げの可能性に含みを持たせる文言を維持した。ただ、短期金融市場では年内の追加利上げ確率は1 割超まで低下しており、加ドルは来週も上値の重い動きが見込まれる。

    また、中東の動向次第では原油相場が大きく動く可能性がある。今のところは地域的な広がりは限られ、宗教、民族的な対立にエスカレートしていないこともあり、地政学リスクが一段と強まっていない。ただ、先行き不透明感は高く、楽観視は禁物だ。

     

    10 月23 日週の回顧

    米長期金利の上昇に伴うドル高の流れが継続。ポンドドルは英経済の先行きに対する懸念も重しに1.20 ドル後半まで下落した。また、加ドルはBOC の年内利上げ観測が後退したことも重しとなり、ドル/加ドルは1.38 加ドル前半までドル高・加ドル安となった。ポンド円は183 円後半で伸び悩み181 円前半に押し戻され、加ドル円は小動きも108 円半ばまで上値を切り下げた。(了)

     


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