週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    有事のドル買いと円買い介入に警戒

    ◆ドル円、中東情勢を意識しつつ次期米下院議長選出や米インフレ指標に注目

    ◆有事のドル買いと本邦通貨当局による円買い介入の可能性に警戒

    ◆ユーロドル、ECB 理事会に注目

     

    予想レンジ

    ドル円 148.00-152.00 円

    ユーロドル 1.0300-1.0700 ドル

     

    10 月23 日週の展望

    ドル円は、中東情勢の緊迫化を受けた有事のドル買いと本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開が予想される。

    中東の地政学リスクのリスクシナリオとしては、イスラム組織のハマスを支援しているイランが参戦を警告していることでから、第5 次中東戦争に発展し、イランがホルムズ海峡を封鎖することで石油ショックとなることである。日本は、中東の原油に90%以上依存しており、1973 年の4 次中東戦争による第一次石油ショックの再現、すなわち、円建て資産のトリプル安(円安、株安、債券安)の可能性が高まることになる。ドル高・円安が加速した場合は、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性が高まるが、資金の流れは昨年秋のような投機的な円売りではなく、日本からの資本逃避による円売りとなることもあり、円安を阻止できるのかどうかの見極めが重要となってくるだろう。

    また、米下院では、次期下院議長の選任が難航して、ウクライナやイスラエルへの支援の決議が遅れている。11 月17 日のつなぎ予算の期限に向けて、次期下院議長の下で2024 年度予算案が成立しなければ、米政府機関が閉鎖される可能性が高まる。格付け会社ムーディーズによる米国債格下げの可能性を再び高めることになり、ドルの上値を抑えることになりそうだ。経済指標では、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視している9 月のPCE 価格指数が発表され

    る予定。月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定が、利上げになるのか、あるいはパウエFRB 議長や複数の高官が言及しているように、「タームプレミアムの上昇が利上げの代替になる」ことによるタカ派的据置きとなるのかどうかを見極めることになるだろう。

    ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)理事会での政策金利の据え置きが見込まれているが、注目ポイントは、ラガルドECB 総裁による中東有事を受けた金利見通し。中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の上昇は、ユーロ圏のインフレの高止まりと景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感を高めることで、ユーロ売り要因となっている。

     

    10 月16 日週の回顧

    ドル円は、日銀の物価見通し上方修正の報道を受けて一時148.84 円まで値を下げたものの、本邦実需の買い意欲が強いなか、パウエルFRB 議長のタカ派発言などから149.96 円まで買い戻された。ただ、150 円が近づく度に本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が強まったことから、上値は限定的となっている。ユーロドルは、独金利の上昇などにつれて1.0507 ドルか1.0616 ドルまで上昇したものの、米長期金利の急騰を受けて上値は抑えられている。ユーロ円は、156.98 円から158.93 円まで上昇した。(了)__

     

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、インフレ指標に注目

    豪ドル、CPI とPPI に注目

    ◆中東情勢の悪化懸念によるリスク回避の動きが重しに

    ZAR、インフレ進行で利上げ期待も景気にはネガティブ要因

     

    予想レンジ

    豪ドル円 93.00-96.00 円

    南ア・ランド円 7.60-8.10 円

     

    10 月23 日週の展望

    豪ドルは引き続き神経質な動きが続くだろう。来週も今週同様に予断を許さないイスラエルの動向が最も注目されることに変わりはない。イスラエルはガザへの地上侵攻を目指しているが、欧米諸国からの説得で辛うじて踏みとどまっている。事態を複雑化させているのは、プーチン露大統領がパレスチナ寄りの姿勢を示し、中国も同様な動きを見せていること。中東情勢が欧米諸国と露中の代理戦争に陥りつつある。リスク回避の動きに敏感な豪ドルにとっては、中東情勢の悪化懸念が上値を抑える要因になっている。

    豪州の指標で来週最も注目されるのは、25 日に発表される7-9 月期消費者物価指数(CPI)。今月3 日に行われた豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨では、「インフレ率が依然として目標を大幅に上回っており、しばらくはその状態が予想される」と指摘されている。同議事録で「さらなる金利引き上げが必要かどうかは、今後のデータに依存する」とされたが、市場ではこのCPIと来月15 日発表予定となっている同期の賃金指数次第との声が高い。CPI 以外では、27 日に卸売物価指数(PPI)も発表される。CPI とあわせて、豪ドルを動意付けさせるきっかけとなりそうだ。また、24 日にはブロックRBA 総裁の講演も予定されている。

    南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が限られそうだ。流動性が悪化していることもあり、今週はZAR が売られるような状況下でも、まとまった買いが入るとZAR は支えられた。今週発表された9月の南アCPI は前年比で予想を上振れ、インフレが再び上昇基調に戻っていることが確認された。11 月の南アフリカ準備銀行(SARB)の会合では、利上げを予想する声が高まっており、利上げは短期的にはZAR 買いになる。ただ、中長期的には景気への大きな足かせになり、南ア経済およびZAR の売り要因にもなり得る。すでに、家計が高金利の悪影響を受け、8 月の小売売上高も8 カ月連続の減少となっている。国内の景気低迷は深刻でZAR を深追いして買う地合いではないだろう。中東情勢が悪化した場合は、新興国通貨から資金が流出するリスクが高いこともZAR にはネガティブな要因。また、南アの指標では来週26 日に9 月の卸売物価指数(PPI)が発表予定となっている。

     

    10 月16 日週の回顧

    豪ドルは限られた値幅での取引となった。RBA 議事要旨で利上げも選択肢だったことが判明すると強含む場面はあったが、中東情勢の泥沼化を嫌気したリスク回避の動きが重しになった。なお、9 月の豪雇用統計は、失業率は予想より改善したものの、新規雇用者数は予想を下回った。内訳をみても、常勤雇用者数の減少を非常勤雇用者数の増加でどうにかカバーした状態。豪ドルの上値を抑えている。ZAR も上値が抑えられた。週半ばにまとまったZAR 買い・ドル売りが入ると、ZAR 円も連れて8 円を付ける場面があった。ただ、中東情勢の悪化によるリスク回避の動きが上値を抑えると7.82 円まで弱含んだ。(了)

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    BOC、政策金利の据え置きを予想

    ◆ポンド、9 月CPI は予想を上回るも、利上げ再開の思惑は高まらず

    ◆加ドル、BOC は来週会合で政策金利の据え置きを見込む

    ◆加ドル、中東情勢の緊迫化が続くなか原油相場の動きにも注目

     

    予想レンジ

    ポンド円 179.00-185.00 円

    加ドル円 107.0-111.00 円

     

    10 月23 日週の展望

    今週発表された英経済指標は強弱まちまちの結果となった。来週は英国内で10 月のPMI 速報値の発表が予定されているが、イングランド銀行(英中銀、BOE)が再び利上げを行う可能性が低いと見込まれているなか、ポンドは上値の重い動きが続きそうだ。対ドルでは2007 年以来の高水準となっている米長期金利の動き、対円では介入警戒レベルに近づいているドル円の動きに左右されそうだ。

    17 日発表の6-8 月の賃金(除賞与)は前年比+7.8%と5-7 月の+7.9%を下回り、1 月以降初めて伸びが鈍化した。賃金の伸びはBOE にとってはまだ高すぎるが、ピークを過ぎた可能性が出ている。求人件数も減少しており、労働市場に失速の兆しが出ている。一方で、18 日に発表の英9月消費者物価指数(CPI)は前年比で前月同様の+6.7%となった。予想を上回る結果で、インフレ率は主要先進国のなかで依然として最も高いものの、BOE が8 月に予想した+6.9%は下回っており、次回11 月会合で再び利上げに踏み切る可能性は低い。ただ、基調インフレとサービス価格の上昇圧力は根強く、長期間で現在の金利水準が維持される可能性がある。

    加ドルは25 日のカナダ中銀(BOC)の金融政策会合に注目。9 月の雇用統計で、雇用者数が予想を大きく上回り、賃金上昇率も予想より上振れしたことを受けて追加利上げ期待が高まっていたが、17 日に発表された9 月消費者物価指数(CPI)は予想に反して伸びが鈍化。利上げの思惑は後退している。9 月CPI は前月比でプラス予想に反して-0.1%となり、前年比では+3.8%と前月の+4.0%から伸びが鈍化した。BOC が重視するコアインフレ率も減速し、短期金融市場では来週のBOC 会合での利上げ確率は4 割超から1 割台に低下した。政策金利の決定と声明内容が高インフレへの懸念を緩める内容になるかどうかにも注目したい。

    加ドルは、原油相場の動きが引き続き下支えとなりそうだ。7 日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃によって生じた中東情勢の緊迫が続いており、原油価格は一段と上昇する可能性がある。また、石油輸出国機構(OPEC)プラスによる大規模減産が継続することや米シェールオイルの増産ペースは緩やかにとどまることから原油供給の増加は限られ、需給の引き締まりが意識されやすいことも原油相場の支えとなりそうだ。

     

    10 月16 日週の回顧

    ポンドドルは予想比上振れの英9 月CPI の結果を受けて一時買いが入ったものの、米長期金利の上昇に伴うドル高の流れが続くなか1.21 ドル割れまで押し戻された。加ドルは中東情勢を背景とした原油高が支えとなるも、ドル高と9 月加CPI が予想を下回ったことが重しとなり、ドル/加ドルは1.37 加ドル半ばまでドル高・加ドル安となった。149 円台でドル円のこう着相場が続くなか、クロス円の方向感は限られた。ポンド円は182 円を挟んで上下し、加ドル円は110 円手前で上値が抑えられ109 円台を中心に小幅な上下にとどまった。(了)__

     


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