週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
次期米下院議長選任の行方を注視
◆ドル円、次期米下院議長選任の行方を注視
◆150 円乗せでは、円買い介入の可能性に警戒
◆ユーロドル、独10 月ZEW 景況指数に注目
予想レンジ
ドル円 147.00-151.00 円
ユーロドル 1.0300-1.0700 ドル
10 月16 日週の展望
ドル円は、地区連銀経済報告で31 日-11 月1 日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げの有無を見極めつつ、中東情勢の地政学リスクや次期米下院議長の選任を注視していく展開が予想される。
次期米下院議長の選任が今年1 月のように遅れた場合、イスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルへの支援の決議が遅れるため、大統領選などに強い影響力を持つユダヤ系有権者から共和党への圧力が強まることになる。11 月17 日のつなぎ予算の期限に向けて、次期下院議長の下で2024 年度予算案が成立しなければ、米政府機関が閉鎖される。再び格付け会社ムーディーズによる米国債格下げの可能性を高めることになり、ドルの上値を抑えることになりそうだ。
中東の地政学リスクのリスクシナリオとしては、第5 次中東戦争に発展し、原油生産量の多いイランが関与することで石油ショックとなることである。日本は、中東の原油に90%以上依存しており、ホルムズ海峡が封鎖された場合は、トリプル安(円安、株安、債券安)の可能性が高まることになる。
また、日本の9 月のコア消費者物価指数は前年比2.7%と予想されており、8 月の3.1%からの伸び率鈍化が見込まれている。8 月の政府による電気・ガス価格激変緩和対策事業の影響を除いたコアCPI は4.1%上昇、日銀が注視している生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPI は4.3%となり、1981 年以来の高水準だった5 月と7 月に並んでいる。一部報道で「日銀が物価見通しを上方修正する方向」と伝わっており、伸び率が予想に反して上昇していた場合には警戒が必要だろう。更に、日本の9 月の貿易収支では、本邦実需筋による円売り圧力を確認することになる。ドル円が再び150 円台に乗せる局面があれば、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性が高まることになる。
ユーロドルは、ユーロ圏のインフレの高止まりと景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感や米長期金利の高止まりへの思惑から、引き続き下値を探る展開が想定される。欧州中央銀行(ECB)の追加利上げ観測が後退する中、10 月の独ZEW 景況指数などに注目しておきたい。
10 月9 日週の回顧
ドル円は、相次ぐ当局からの発言を受けて金利据置きの観測が高まったことから米長期金利が急低下。一時148.17 円まで値を下げたが、9 月米CPI が予想を上回ると一転して金利が急騰。149.83円まで買い戻されている。ユーロドルは、1.0520 ドルから1.0640 ドルまで上昇したものの、米長期金利の反転を受けて1.0520 ドル台まで反落した。ユーロ円は、156.52 円から158.61 円まで上昇した後、157.65 円まで反落した。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
NZ ドル、総選挙の結果に警戒
◆豪ドル、RBA 要人の講演や9 月雇用統計に注目
◆NZ ドル、週末の選挙結果に警戒
◆ZAR、米金利の上下につれて神経質な動き
予想レンジ
豪ドル円 93.50-97.00 円
南ア・ランド円 7.60-8.10 円
10 月16 日週の展望
豪ドルは神経質な動きを見せるが、上値は限られそうだ。今週は中東情勢の混迷を嫌気しリスク回避の動きで米債買い(利回り低下)となっただけでなく、米連邦準備理事会(FRB)関係者が相次いでハト派と捉えられる発言を繰り返したこともドル売りの原因になり豪ドルを支えた。6日には米10 年債利回りが4.88%台まで上昇したが、この水準は金融危機時を超えている。FRB 高官が金利上昇による弊害を警戒しているとの観測が高い。もっとも、米国のインフレ傾向は依然として根強いことから、急速に上昇した米金利の調整が終わった後は、改めて米豪の金融政策の方向性の相違が意識されることになるだろう。豪ドルの重しであることに変わりはない。来週は16 日にジョーンズRBA 理事、18 日にブロックRBA 総裁がそれぞれ講演する。また、17 日には3日に開催されたRBA 理事会の議事要旨が公表される。理事会では政策金利を4.10%に据え置き、声明文もタカ派的な据え置きだったが、ロウ前総裁時とほぼ変わらない内容でサプライズはなかった。ただ、今回の講演などで声明文と相違ある発言が出た場合、豪ドルは動意づきそうだ。経済指標では19 日に発表される9 月の雇用統計に注目が集まる。NZ では、今週末に行われる総選挙が最大の注目。現与党・労働党がNZ 準備銀行(RBNZ)の責務として、インフレ率を1-3%に維持するという目標に加え、FRB のように持続可能な最大雇用も追加した。しかし、中道右派の野党・国民党は、雇用目標の追加でインフレ低下が後手に回ったとし、雇用目標を責務から削ろうとしている。選挙は接戦となり、両党ともに単独過半数獲得が難しい情勢。国民党勝利で連立政権をすぐに樹立できれば、雇用目標削除によるインフレ対策強化でNZ ドル買い、一方、連立政権が難航し、いわゆる、ハングパーラメントの状況となれば、NZ ドル売りの反応となりそうだ。なお、NZ では17 日に7-9 月期消費者物価指数(CPI)、20 日に9 月貿易収支が発表される。
南アフリカ・ランド(ZAR)はもみ合いか。国内のインフレ傾向が鮮明となっていることから、11 月の利上げ予想が高まっているが、ZAR は基本的には米金利動向に左右されている。今週のように米金利が低下傾向をたどれば、FRB の利上げスピードに南アの金融政策が追いつくことになり、金利面ではZAR 買い要因。ただ、インフレ高進で雇用や景気が悪化傾向となっていることから、利上げは中長期的にZAR の重しとなる。経済指標では18 日に8 月小売売上高が発表予定。
10 月9 日週の回顧
豪ドルは行って来いの動きだった。米長期金利が急激な低下となったことから全般ドル売りが先行。対ドルでは0.64 ドル半ばまで買われる場面もみられたが、週末にかけては、強い米CPI をきっかけに米金利が一転して急騰すると戻り売りに押されている。ZAR は堅調な動きになった。中東情勢の混迷を嫌気し、週明けこそ対ドル・対円とも安く始まったが、米金利の低下を受けて買い戻しの動きとなった。ただ、週末にかけては米金利が一転して急騰しており、上値を押さえている。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
ポンド、雇用・物価データに注目
◆対円では、介入警戒感も絡んだドル円の動きがポイント
◆ポンド、9 月雇用・物価データに注目
◆加ドル、原油相場の動向と9 月CPI に警戒
予想レンジ
ポンド円 179.00-185.00 円
加ドル円 107.50-111.50 円
10 月16 日週の展望
ドル高・円安の流れは変わらず、クロス円にとっては介入警戒感も絡んだドル円の動きが来週もポイントになりそうだ。最近の英経済指標は強弱まちまちの結果が続いているが、来週は9 月の雇用・物価データの発表が予定されている。8 月の雇用データでは、賃金の伸びが高水準を維持したものの、8 月消費者物価指数(CPI)は予想外に7 月から伸びが鈍化。イングランド銀行(英中銀、BOE)は9 月会合で約2 年ぶりに利上げを見送った。市場ではBOE がリセッションを回避するため近い将来に引き締め方針を反転させるとの見方が強まった。
ただ、英国のインフレ率は2022 年10 月の11.1%をピークに緩和傾向にあるが、依然として他の主要国に比べ高い水準にある。BOE も9 月会合での金利据え置きは「利上げの一時停止に過ぎず、インフレ率が予想通りに低下しなければ対応する」と示唆した。来週の雇用・物価データ次第では追加利上げ観測が強まる可能性がある。国際通貨基金(IMF)は、「BOE は少なくともあと1回の利上げに踏み切り、来年の大半を通じてその水準を維持する必要がある」との見解を示し、近く利下げを開始する可能性があるとの市場の思惑に冷や水を浴びせた。英国の経済成長の勢いはかなり弱く、今後労働市場は冷え込む一方。インフレが極めて根強い状況になる可能性が高いなか、BOE は難しい舵取りを強いられそうだ。
加ドルは来週も原油相場の動きに注目。先週の原油相場は週明けにイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を背景に急反発したが、その後は中東の地政学リスクへの過度な警戒感が緩むと売りに押された。今週も中東情勢には留意したい。
また、加国内では8 月小売売上高・卸売売上高や9 月住宅着工件数などの発表が予定されているが、9 月CPI に一番注目が集まっている。6 日に発表された9 月雇用統計では雇用者数が予想を大きく上回り、賃金上昇率も予想より上振れした。カナダ中銀(BOC)の積極的な金融引き締めにも関わらず、需要は好調で企業の採用も続いていることが示された。市場ではBOC が今年あと1回利上げに踏み切るとの見方を強めている。BOC は年内、今月の25 日と12 月6 日に金融政策会合を残しているが、来週のCPI 次第では今月の会合で追加利上げを実施する可能性が出てくる。8月のCPI は前年比4.0%と市場予想を上回り7 月の3.3%から伸びが加速した。BOC は「インフレ圧力が続いた場合には追加利上げの可能性がある」と表明している。
10 月9 日週の回顧
今週はFRB 高官らの発言を受けて米長期金利が低下しドル売りが先行したが、米9 月CPI を受けて再びドル買いに傾き、ポンドドルは1.23 ドル前半を頭に失速した。ドル加ドルは週明けの原油高の上昇が一服したことやドルの買い戻しが支えとなり、1.35 加ドル後半で下げ渋った。対円では週明けこそ中東の地政学リスクを背景にリスクオフの円買いが先行するも、株高を支えにクロス円は底堅い動きとなり、ポンド円は183 円後半、加ドル円は110 円手前まで上昇した。(了)
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