週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
9 月米CPI、下院議長人選を見極め
◆ドル円、9 月米CPI や次期下院議長の人選を見極め
◆円買い介入やUAW ストライキの拡大・長期化にも要注意
◆ユーロドル、引き続き下値リスクに警戒
予想レンジ
ドル円 145.00-150.50 円
ユーロドル 1.0200-1.0650 ドル
10 月9 日週の展望
ドル円は、9 月消費者物価指数(CPI)で31 日-11 月1 日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げの有無を見極めつつ、次期米下院議長の選任を見守っていく展開が予想される。
更に、全米自動車労組(UAW)によるストライキの拡大や終息に関するヘッドラインにも注意が必要だろう。ストライキが長期化した場合、米国の第4 四半期の国内総生産(GDP)への悪影響が懸念されるほか、11 月1 日のFOMC でのタカ派的据置きの可能性を高めることになる。
ドル円は13 日、NY 市場で150.16 円まで上昇した後、147.43 円まで急落した。市場では、今のところ本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入ではなく、レートチェックの可能性が指摘されているが、今後も150 円台に乗せた場合には、介入への警戒感が急速に高まることになりそうだ。
また、米国では来週の9 月CPI に注目が集まる。市場では前年比3.6%と予想されており、8 月の3.7%からの鈍化が見込まれている。予想通りに鈍化していた場合、11 月1 日のFOMC では、9月と同様にFF 金利の据え置き、すなわち、タカ派的スキップの可能性が高まりそうだ。
更に米国では、3 日にマッカーシー米下院議長が解任されたことで、次期下院議長の選任が注目されている。今年1 月の下院議長選でも、共和党強硬派の反対により、14 回にわたって就任に必要な過半数の票が得られず、強硬派の要求を次々と受け入れた経緯がある。
11 月17 日のつなぎ予算の期限に向けて、次期下院議長の下で2024 年度予算案が成立しなければ、米政府機関が閉鎖される。再び格付け会社ムーディーズによる米国債格下げの可能性を高めることになりそうだ。米下院(定数435 議席、欠員2 議席)は、共和党221 議席、民主党212 議席なので、過半数217 議席の賛成が必要となっている。
ユーロドルは、欧州のインフレ高進と景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感や米長期金利の高止まりへの思惑から、引き続き下値を探る展開が想定される。欧州中央銀行(ECB)の追加利上げ観測が後退する中、8 月のユーロ圏鉱工業生産などに注目しておきたい。
10 月2 日週の回顧
ドル円は、8 月米雇用動態調査求人件数が予想を大幅に上回る結果となったことから米長期金利が急騰すると一時150.16 円まで上昇した。ただ、その後は当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が高まる中、レートチェックの噂などで147.43 円まで急落するなど荒い値動きとなった。マッカーシー米下院議長が解任されたことも、NY 株式市場の下落やリスク回避による円の買い戻し要因となっている。ユーロドルは、米長期金利の急上昇を受けて、1.0592 ドルから1.0448ドルまで下落したが、その後は米金利が調整に入ると1.0552 ドルまで買い戻されている。(了)__
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
豪ドル、リスク回避で上値重い
◆豪ドル、RBA とFRB の利上げスピードの差異で上値が重い
◆豪ドル、ZAR とも、株安によるリスク回避が上値を抑える
◆NZ、週末の総選挙を控え神経質な動きに
予想レンジ
豪ドル円 91.50-96.00 円
南ア・ランド円 7.40-7.80 円
10 月9 日週の展望
豪ドルは上値が重くなりそうだ。米金利が上昇傾向を辿り、米豪の利上げペースにも差がでてきていることが重しとなっている。また、金利上昇で株式市場が軟調な動きを示していることも、リスク回避の動きに敏感な豪ドルにとっては売り要因となるだろう。
今週3 日にブロック豪準備銀行(RBA)新総裁の元で初めて開催された理事会は、市場予想通り政策金利を4.10%に据え置いた。また、同時に発表された声明文も「インフレ率はピークを過ぎたが、依然として高水準」「多くのサービス価格は引き続き急上昇しており、燃料価格も最近顕著に上昇している」と、タカ派的な据え置きだったが、ロウ前総裁時とほぼ変わらない内容でサプライズが無かった。市場では、「今月25 日発表予定の7-9 月期CPI や来月15 日発表予定の同期賃金指数を確かめるまでRBA は動きにくい」という声が多い。一方で、今週に入り4 人の米連邦準備理事会(FRB)関係者が、「高金利の長期据え置き(Higher for longer)」について言及している。RBA とFRB の利上げスピードなどの差異が豪ドルの重しとなる。また、米金利の上昇が急ピッチで進んでいることで、各国の株式市場が弱含んでいる。金利上昇による信用収縮問題も徐々に表面化し、市場では「今年3 月の米地銀破綻のような問題が再燃する」との声もある。今週は多くの株式市場に売り圧力がかかったが、来週国慶節の休場明けとなる中国市場が世界的な株安の影響を受けて続落するようなことがあれば、豪ドルは更に下げ幅を広げる可能性があるため注意したいところだ。なお、来週の経済指標は、10 日に10 月ウェストパック消費者信頼感指数、9月NAB 企業信頼感・景況感、11 日にはケントRBA 総裁補佐の講演が行われる。また、隣国NZ では市場を動意づけるような経済指標の発表などは無いが、総選挙が14 日に行われることもあり、世論調査などでNZ ドルは乱高下する可能性があることに注意したい。
南アフリカ・ランド(ZAR)も上値が重くなりそうだ。豪ドル同様に、世界的な株安がZAR を圧迫している。先週に引き続き今週も南アからは主だった経済指標の発表予定はない。9 月のアブサ購買担当者景気指数(PMI)が8 月の49.8 から45.4 に低下したが、なかでも9 月の新規受注指数が、8 月の45.7 から35.3 に低下。2021 年半ば以来の最低水準となった。この傾向が他部門でも顕著になれば、第3 四半期(7-9 月期)の国内総生産(GDP)がかなり落ち込むのではとの予想も出ており、ZAR 安の要因になりそうだ。
10 月2 日週の回顧
豪ドルは軟調推移。株安などを嫌気し、リスク回避の動きが豪ドルの押し下げ圧力になった。対円では8 月後半以来となる93 円割れ手前まで下落。対ドルでは0.62 ドル後半まで弱含み、年初来安値を更新した。なお、RBA は政策金利の据え置きを決定している。
ZAR も米金利上昇を嫌気し、対ドルでは6 月以来となる19.63ZAR 台まで弱含んだ。対円でもリスク回避の動きで上値が重かった。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
ポンド、一段の利上げ期待後退に注意
◆ポンド、年内の追加利上げ期待の一段の後退に注意
◆ポンド、足もとでは指標のネガティブ結果に反応しやすい
◆加ドル、上昇一巡の原油相場の動きに注目
予想レンジ
ポンド円 178.00-183.00 円
加ドル円 106.50-110.50 円
10 月9 日週の展望
ドル買い圧力の高い状況が続いており、ポンドは対ドルで引き続き売りが強まりやすい。対円でも日本当局の円買い介入への警戒感が根強いことを背景に上値の重い動きが見込まれる。
イングランド銀行(英中銀、BOE)の9 月会合後に「利上げサイクルが終焉した」との見方が高まりつつあるが、市場では依然として年内の追加利上げを5 割超織り込んでいる。ただ、労働市場に緩和の兆候がみられ、今後は物価指数の伸びが再加速するなど追加利上げを必要とする新規の手がかりが出ない限り、目線はBOE が現状の金利水準をいつまで維持するかに向けられそうだ。市場の利上げ期待が更に後退すれば、ポンドには売り圧力が加速しそうだ。10 月からは英国の標準的な世帯の光熱費支払額が約 7%減少することが見込まれており、これもインフレ率の低下につながる可能性がある。ベイリーBOE 総裁は、インフレ圧力が年内に急速に弱まると予想した一方で、インフレ退治は「まだ終わっていない」と強調している。
また、最近発表された英経済指標は強弱まちまちも景気減速への懸念は根強く、足もとでポンドはネガティブな結果に反応しやすい。9 月の製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値はともに速報値からわずかに上方修正され8 月から上昇したものの、建設業PMI は前月や市場予想を大幅に下回る結果となり、大幅な景況悪化が続いていることが示された。先月末に発表された4-6 月期GDP 確報値は前期比+0.2%と速報値と変わらずとなり、コロナ禍前の2019 年10-12 月期を1.8%上回った。これはドイツやフランスを上回るも、他の主要国に比べると景気回復はまだ出遅れている。来週は8 月のGDP や鉱工業生産、貿易収支などの発表が予定されている。
加ドルは9 月の原油相場が堅調な動きになったことも支えに底堅い動きが続いたが、10 月は原油高に調整が入り、加ドルへの売り圧力が強まっている。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で構成するOPEC+は供給を制限する現行の政策を維持すると表明しているが、中国や欧米などを中心とした世界経済見通しの変化に注意したい。また、9 月発表の8 月加雇用者数は7月から増加に転じ、8 月消費者物価指数(CPI)は前年比+4.0%と伸びが加速したことを鑑みると、カナダ中銀(BOC)が年内に後1 回利上げに動く可能性が残されている。ビンセントBOC 副総裁は、「企業がコストを消費者に転嫁する動きが加速していることが、インフレを助長させかねない」と懸念を示した。
10 月2 日週の回顧
米長期金利の上昇に伴ったドル高地合いが続くなか、ポンドドルは1.20 ドル半ばまで下押したが、その後は1.21 ドル後半まで買い戻されている。加ドルは原油相場の下落も重しに対ドルで1.37 加ドル後半まで加ドル安が進んだ。対円ではドル円が150 円台から一時急落した局面でポンド円は178 円前半、加ドル円は107 円半ばまで下落する場面が見られた。その後はドル円同様に持ち直すも、日本当局の円買い介入への警戒感でクロス円は全般的に上値の重い動きとなった。(了)__
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