週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
CPI など米重要指標に注目
◆ドル円、8 月CPI など米重要指標に一喜一憂
◆FOMC を翌週に控えて様子見ムードが広がる可能性も
◆ユーロドル、ECB 理事会およびラガルド総裁の会見内容に注目
予想レンジ
ドル円 145.00-149.00 円
ユーロドル 1.0400-1.0900 ドル
9 月11 日週の展望
ドル円は、米経済指標に一喜一憂しながらも米連邦公開市場委員会(FOMC)を翌週に控えて神経質な展開になりそうだ。
来週は13 日に 8 月消費者物価指数(CPI)、14 日に8 月卸売物価指数(PPI)や8 月小売売上高、15 日には9 月NY 連銀製造業景気指数や9 月米ミシガン大消費者態度指数速報値が予定されているなど、週半ばから後半にかけて米重要指標が発表される。ドル円はこれら指標に振らされる展開となりそうだが、19-20 日にFOMC を控えて明確な方向感が出るとは想定しづらい。また、今回のFOMC では政策の現状維持がほぼ織り込まれており、指標云々で利上げ確率が高まる可能性は低いことも値動きを抑制させる要因となりそうだ。なお、週末の9 日からブラックアウト期間に入るため、米当局者からの金融政策に関する発言は期待できないが、FED ウォッチャーであるWSJ紙のニック・ティミラオス記者の発言などには注意したいところだ。
また、ドル円は昨年11 月以来の円安・ドル高水準とあって、やはり意識されるのが政府・日銀による円買い介入になる。神田財務官は6 日に「急激な為替変動が続いた場合はあらゆる選択肢を排除しない」とこれまでよりも強めの発言をしたが、為替相場への影響は限定的だったことを考慮すると、市場参加者の間での介入警戒感はまだそれほど高まっていないことが窺える。
ユーロドルは、14 日の欧州中央銀行(ECB)理事会次第となるが、現時点では利上げの可能性を残しつつ、据え置きを予想する声の方が多い。足もとの欧州経済指標が弱く、景気先行き懸念が高まるなかで、たとえ利上げを決定したとしても、定例記者会見でラガルドECB 総裁から弱気な見解が示されればユーロ売りが一気に進むことも想定される。チャートを見ると、3 カ月ぶりの安値水準であるうえ、200 日移動平均線を明確に下抜けていることから、テクニカル面からも下落リスクが高まっており、仕掛け的な売りには気を付けたい。
9 月4 日週の回顧
ドル円は、5 日にゴトー日に絡んだ買いが観測されたほか、海外時間に入ると米長期金利の上昇を受けて3 連休明けのNY 勢が買いで参入。メスター米クリーブランド連銀総裁が「政策金利をやや引き上げる必要があるかもしれない」と発言したことも買いを促した。その後も底堅さ保ちながら7 日の東京市場では一時147.87 円と年初来高値を更新した。一方、節目の148 円を前に上値を抑えられると147 円台前半まで伸び悩んでいる。
ユーロドルは8 月ユーロ圏サービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値が弱い内容だったうえ、米金利の上昇も重しとなった。その後の反発力も弱く、一時1.0686 ドルと6 月7 日以来の安値を付けた。(了)__
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
豪ドル、利上げサイクル終了の思惑も
◆豪ドル、政策金利は据え置きも利上げサイクル終了の思惑台頭
◆RBA、ロウ総裁任期満了で退任、ブロック新体制へ移行
◆ZAR、過去最大規模の停電が重し
予想レンジ
豪ドル円 92.00-96.00 円
南ア・ランド円 7.40-7.90 円
9 月11 日週の展望
豪ドルは上値の重い展開となりそうだ。豪準備銀行(RBA)は5 日に開催された理事会で政策金利を市場予想通り4.10%に据え置いた。声明文でも「金融政策の幾分かの引き締めが必要になるかもしれない」などの見解を示すなど前回から大きな変化は見られなかった。
もっとも、これで3 会合連続での金利据え置きとなったため、市場では「RBA の金融引き締めサイクルがすでに終了した」との思惑が徐々に広がりつつある。実際、短期金融市場ではあと1回分の追加利上げも織り込んでおらず、来年以降に利下げに転じると見込んでいるようだ。それに伴って豪ドルは対ドルを中心に上値の重い動きとなっている。来週公表の8 月米消費者物価指数(CPI)などを受けて米金利上昇とドル高が進めば、豪ドルの下値リスクも一段と高まるだろう。
なお、ロウRBA 総裁は17 日に任期満了となり、翌18 日からブロック副総裁が新たに総裁に就任する。来月の理事会ではブロック新体制の下で金融政策が決定される。ブロック副総裁は先月、「インフレ抑制のために金利を再び引き上げる必要があるかもしれないが、政策立案者はデータを注意深く見ており、当面は月ごとに判断することになる」との見解を示しており、大きな政策転換が図られる兆しはないようだ。
来週は12 日に9 月ウエストパック消費者信頼感指数や8 月NAB 企業景況感指数、14 日に8 月雇用統計の発表が予定されている。RBA は声明文の中で「金融政策の決定を下す際にインフレと労働市場の見通しに引き続き細心の注意を払う」としており、特に雇用統計の動向には注意が必要となる。
南アフリカ・ランド(ZAR)はさえない動きとなりそうだ。国営電力会社エスコムは5 日に電力負荷制限をステージ6 に引き上げることを発表。同日には過去最大規模の停電に見舞われたほか、最大都市ヨハネスブルクでは電力故障に対する処置が全く追いついていないなど、電力網が崩壊の危機にさらされている。
電力制限は南ア経済を押し下げる要因となる可能性が高く、国内のディーゼル・ガソリン価格基準値が上昇したことによるインフレ懸念も相場の重しとして意識されるだろう。なお、来週は南アフリカから目立った経済指標の発表などは予定されていない。
9 月4 日週の回顧
豪ドルは対ドルを中心に弱含み。5 日のRBA 金融政策公表後には全般に豪ドル売りの動きが進んだほか、米金利の上昇を手掛かりにドルが全面高となった影響を受けた。売り一巡後も戻りの鈍い動きが続いている。
ZAR もさえない動きとなった。米金利の上昇によるドル買い・ZAR 売りに加え、5 日に発生した南アフリカで過去最大規模の停電も相場の重しになった。景気減速懸念が高まる中で同国からの資金流出が進み、対ドルでは週を通じて売りの流れが目立った。(了)__
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
BOE 総裁、利上げサイクルの終了示唆
◆ポンド、英賃金データに注目
◆ベイリーBOE 総裁、利上げサイクルの終了を示唆
◆加ドル、BOC 追加利上げに含みも経済減速への懸念高まる
予想レンジ
ポンド円 181.00 -186.00 円
加ドル円 106.00-110.00 円
9 月11 日週の展望
ポンドは12 日に英国国家統計局(ONS)が公表する雇用関連指標に動意付けられる展開となりそうだ。失業率で労働状況を見定めるのは大切だが、最も注目されるのはやはり「ボーナスを除く平均賃金」だろう。前回の4-6 月分は前年比7.8%と、2001 年に統計を開始して以来最高の伸び率を記録。その後に発表された7 月英消費者物価指数(CPI)は前年比6.8%まで減速したが、コアインフレへの上昇圧力は高まったまま。イングランド銀行(英中銀、BOE)が金融引き締めを強化するとの思惑は薄まっていない。市場は英中銀が今月、または遅くとも11 月の金融政策委員会(MPC)で0.25%の利上げを決定し、来年第1 四半期には追加利上げに踏み切ると見ている。
ただし、ベイリーBOE 総裁は先行きインフレについて楽観的とも言える見方をしている。6 日に英議会財務委員会で行われた年次報告では「金融引き締め政策はおそらく、サイクルの頂点付近にある」との見解を示した。その理由として、「インフレの低下がかなり顕著になる可能性がある」とし、「最新指標はBOE の予想通りに推移」と述べ、「たとえ次回CPI が上昇したとしてもインフレ見通しは変わらない」とした。一方、賃金上昇ペースの減速度合いについては「不透明」としている。そのため、今回の賃金データの重要度がより増すことになる。
加ドルは8 日の8 月カナダ雇用統計を受けた動きを週前半まで持ち越すことになりそうだ。前回7 月分では、増加が予想された新規雇用者数が0.64 万人減に落ち込んだ。また、1 日に公表された4-6 月期カナダ国内総生産(GDP)も予想以上に低調だったということもあり、雇用指標がさえないようだと、6 日のカナダ中銀(BOC)声明で述べられた「必要に応じて政策金利をさらに引き上げる用意がある」という文言に対して懐疑的な見方が広がってしまうだろう。なお4-6 月期GDP はプラスが予想された前期比が0.2%減まで落ち込み、前回値も0.5 ポイント下方修正された。
また、BOC は6 日、政策金利を市場予想通りに5.00%に据え置いた。22 年ぶりの高水準で2 会合連続据え置いた理由として、「過剰な需要が緩和していることを示す最近のデータと、金融政策の効果は遅れて出てくることを考慮した」と述べている。インフレについては、「最新CPI は、依然として広範囲にインフレ圧力の存在を示唆」と警戒感を緩めていない。もし雇用指標を無風で通過するようであれば、BOC の次の一手を探ることになる19 日の8 月CPI までは、米金利や原油価格などを眺めながら方向感をやや掴みづらい展開が続くかもしれない。
9 月4 日週の回顧
ポンドは上値が重かった。年初来高値を更新したドル円につれて対円では買いが先行も、185円後半を頭に183 円前半まで反落。対ドルでは3 カ月ぶりの安値となる1.24 ドル半ばまで弱含んだ。ベイリーBOE 総裁の利上げサイクル停止示唆が重しとなった。加ドル円は、ドル円の買い先行につれて108 円半ばまで上昇したものの一巡後は伸び悩み。米金利上昇を背景に全般ドル買いが強まるなか、加ドルは対ドルで1.37 加ドル手前まで加ドル安に振れた。(了)__
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