週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    米地区連銀経済報告に注目

    ◆ドル円、9 月FOMC での判断材料となる地区連銀経済報告に注目

    ◆本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には引き続き警戒

    ◆ユーロドル、7 月ユーロ圏PPI や小売売上高を見極め

    予想レンジ

    ドル円 143.00-148.00 円

    ユーロドル 1.0500-1.1000 ドル

    9 月4 日週の展望

    ドル円は、19-20 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの有無を見極める意味でも地区連銀経済報告(ベージュブック)やブラックアウト期間入りを控えた米連邦準備理事会(FRB)高官の発言に注目する展開となりそうだ。

    また、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には引き続き警戒しておきたい。昨年は、9 月22 日に145 円台、10 月21 日に150-151 円台、10 月24 日には147 円台でドル売り・円買い介入を断行したが、今年は147 円台まで上昇しているにも関わらず、口先介入に留まっている。介入レベルが150 円付近まで上がっているとの見方もあり、150 円に接近する局面では警戒が必要となってくるだろう。

    米国では、地区連銀経済報告(ベージュブック)で9 月FOMC での利上げの有無を見極めることになりそうだ。前回の報告では、全米では「著しい物価上昇が見られた」ものの、一部地域では「インフレの伸び率減速の兆候」が指摘され、「リセッションリスクの高まりを巡る懸念」にも言及した。また、パウエルFRB 議長は、8 月25 日のジャクソンホール会議での講演で、「適切であればさらに金利を引き上げる用意がある。インフレ率が2%に持続的に低下すると確信できるまで、金利を引き締め寄りな水準に据え置く」とタカ派的な見解を述べつつも、「FRB は経済指標に基づき、次の金利の道筋を決定する。追加利上げか据え置きか慎重に決定する」とハト派的な見解も述べており、引き続き米金融政策のスタンスを見極めることになりそうだ。日本では、7 月の本邦国際収支速報で、ドル円の下値を支えている経常赤字の金額を確認することになる。

    ユーロドルは、14 日の欧州中央銀行(ECB)理事会に向けて、ユーロ圏7 月の生産者物価指数PPI)や小売売上高を見極めることになる。ラガルドECB 総裁は7 月理事会後に、「9 月は利上げの可能性も一時停止の可能性もある」と述べていたが、理事会議事要旨では、スタッフ予想は追加利上げに否定的な見解が示されていたことが判明している。また、今週発表された8 月ユーロ圏HICP コア速報値は前年比5.3%。7 月の5.5%から伸び率は鈍化した。

    8 月28 日週の回顧

    ドル円は、米10 年債利回りが4.2%台後半まで上昇したことで年初来高値となる147.37 円まで上昇したものの、弱い米労働関連指標を受けて米金利が4.08%まで低下に転じると145.35 円

    まで反落した。ユーロドルは、8 月独CPI 速報値が予想を上回ったことで1.0782 ドルから1.0945ドルまで上昇したものの、ECB 理事会議事要旨で9 月追加利上げの必要性を否定する見解が示されると1.08 ドル台前半まで反落している。ユーロ円は、159.76 円まで上昇した後、157.62 円まで戻り売りに押された。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、RBA のサプライズに警戒

    豪ドル、RBA は据え置き予想も声明文などでのサプライズには警戒

    ◆豪ドル、中国の経済指標も相場を左右

    ZAR、財政赤字拡大が懸念材料

    予想レンジ

    豪ドル円 92.00-96.00 円

    南ア・ランド円 7.40-8.00 円

    9 月4 日週の展望

    豪ドルはもみ合いを予想している。米経済の先行き不透明感が強まり、この数週間、豪ドルは方向感がつかめないでいる。当面、この流れが続くことが予想され、豪ドルは対ドル・対円ともにレンジ中でのもみ合いが繰り返される可能性が高い。

    ただ、その中でも来週大きく豪ドルを動意づかせる可能性があるとすれば、5 日に予定されている豪準備銀行(RBA)理事会だろう。市場では25bp の利上げ予想もあるが、大半は据え置き予想となっている。今週8 月30 日に発表された、7 月の豪消費者物価指数(CPI)が、6 月の5.4%や予想の5.2%を大きく下回り4.9%まで低下した。住宅価格が7.3%、アルコール飲料を除く食品が5.6%上昇したものの、燃料価格が7.6%低下したことがインフレ率低下に寄与した。8 月に入り原油価格が上昇しているものの、インフレ抑制効果が出ていることでRBA が利上げに傾くとの予想は少数派。声明文などでサプライズが無ければ無風で終わる可能性もある。しかし、当局から引き続きタカ派寄りの見解が繰り返されるか、または、逆にハト派寄りに大きく傾いた場合には警戒が必要だ。

    RBA 理事会以外には、4-6 月期の国際収支が5 日に発表され、翌6 日には国内総生産(GDP)が公表される。7 日には7 月貿易収支が予定されているほか、ロウRBA 総裁が講演する。また、中国からは5 日に8 月Caixin サービス部門PMI、7 日に貿易収支、9 日にCPI と卸売物価指数(PPI)などが発表されるが、これらの指標結果も豪ドルに影響を与えることになりそうだ。なお、RBA総裁については、18 日よりブロック副総裁が新総裁に就任する予定だ。

    南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が限られそうだ。この数カ月のZAR 相場は、需給的な動きから月序盤はZAR 安になる傾向が強い。また、今週発表された南アの財政赤字拡大を懸念し、10 月25 日に予定されている中期予算政策にも影響を与える可能性が高まっていることも重し。経済指標では、5 日に4-6 月期GDP、6 日に7-9 月期BER 企業信頼感、7 日に7-9 月期BER 消費者信頼感、4-6 月期経常収支が発表される。

    8 月28 日週の回顧

    豪ドルは対ドル・対円ともに小高く推移した。米経済指標がさえない結果だったことをきっかけに、豪ドル買いが進行した。また、米金利低下により、株式市場が底堅い動きを見せたことも、リスク選好の動きが支えとなった。中国国家発展改革委員会(発改委)が内需拡大のためにマクロ政策の調整を強化すると表明したことも、豪ドル買いにつながった。なお、豪州の月次CPI が市場予想より弱い結果となったことで、一時上値を抑える場面もあったが反応は限られた。ZARは対円、対ドルともに上値が抑えられた。豪ドル同様に米金利低下によるドル売り・ランド買いと、株価上昇のランド円買いが支援材料になった。ただし、月末にかけては、ロンドンフィックスなどでの需給のZAR 売りが上値を抑えた。(了)__

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    BOC、金利据置きを予想

    ◆ポンド、中銀の引締めと景気懸念の綱引きで方向感が出にくい

    ◆ブロードベントBOE 副総裁とピル英MPC 委員、引締め長期化の必要性を力説

    ◆加ドル、BOC の政策金利据置きを予想

    予想レンジ

    ポンド円 182.00-188.00 円

    加ドル円 106.00-110.00 円

    9 月4 日週の展望

    来週、英国内では8 月建設業購買担当者景気指数(PMI)や8 月総合PMI 改定値などの発表が予定されている。英国のインフレは引き続き深刻な状況であり、イングランド銀行(BOE、英中銀)は主要中銀のなかで金融引き締めを続ける一番手だが、同様に主要国のなかで経済の先行きに対する懸念も一番強い。景気減速への根強い懸念がポンドの上値を圧迫する動きが続いており、英経済指標結果に一喜一憂しながらBOE の利上げ観測をめぐる動向に振らされる相場展開となる。

    BOE が発表した7 月の消費者向け融資は前年比7.3%と昨年12 月以来の低い伸びとなり、7 月住宅ローン承認件数は前月比で5000 件以上減少した。金利上昇で家計が借り入れに慎重になっていることが示された。ブロードベント副総裁は「インフレ高が急速に鈍化する可能性は低く、金融政策は景気抑制の領域にとどまらざるを得ない」との認識を示し、「高金利を長く維持する必要がある」と述べた。また、英金融政策委員会(MPC)のピル委員は「利上げによる借入コストの上昇が英経済に打撃を与えるリスクがある」との認識を示した一方で、「政策金利を引き上げすぎるリスクがあっても、インフレ率目標を達成するために仕事をやり遂げる」と表明した。市場ではBOE が9 月会合で政策金利を0.25%引き上げ5.50%にすると予想されている。

    加ドルは6 日のカナダ中銀(BOC)会合での政策金利決定と声明文の内容次第の動きとなりそうだ。BOC は根強いインフレに対応するために6 月会合で利上げを再開。7 月会合でも追加利上げに踏み切り、政策金利を22 年ぶりの高水準となる5.00%とした。声明文から「政策金利は十分に制約的ではない」との文言を取り下げたが、今年の成長率見通しを上方修正したほか、インフレ率の目標達成見込み時期を2025 年半ばに遅らせた。また、「インフレ目標達成に向けて一段の利上げを実施する用意がある」と表明し、「入手可能な情報に基づき、その都度決定する」とした。

    BOC の7 月会合後に発表されたカナダの経済指標は強弱まちまちの結果となっている。小売上高と雇用データは消費の弱さを浮き彫りに。景気後退の前兆が示され、利上げの国民生活への影響が見えてきた。一方で、7 月消費者物価指数(CPI)は2 年3 月ぶりの低水準だった6 月から予想外に伸びが加速し、インフレの長期化に懸念を強める結果となった。市場では来週の会合で追加利上げはいったん見送るとの見方が強いが、一部では利上げ観測も根強い。据え置きが決定されたとしても、さらなる金融引き締めの扉を閉ざしていないことが強調される可能性が高く、8日の8 月雇用データにも注目したい。

    8 月28 日週の回顧

    今週の米経済指標は予想比下振れの結果が目立ち、週末の米雇用統計を控えドル高に調整が入った。ポンドドルは1.27 ドル半ばまで切り返し、ドル/加ドルは1.35 加ドル近辺まで加ドルの

    買い戻しが進んだ。対円ではリスクオンの円売りが見られるも方向感は出ず、ポンド円は186 円前半、加ドル円は108 円前半で失速した。(了)

     


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