週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)
米国のインフレ率と雇用統計に注目
◆ドル円、米国7 月PCE 総合価格指数と8 月雇用統計に注目
◆本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には引き続き警戒
◆ユーロドル、8 月ユーロ圏CPI を見極め
予想レンジ
ドル円 143.00-148.00 円
ユーロドル 1.0500-1.1000 ドル
8 月28 日週の展望
ドル円は、9 月19-20 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの有無を見極める意味で、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視している7 月のPCE 総合価格指数や8 月の雇用統計に注目する展開となる。
また、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には引き続き警戒しておきたい。本邦通貨当局は、昨年9 月22 日に145 円台、10 月21 日に150-151 円台、10 月24 日には147 円台でドル売り・円買い介入を断行したが、今年は146 円台まで上昇しているにも関わらず、口先介入に留まっている。介入レベルが150 円付近まで上がっているとの見方もあり、150 円に接近する局面では警戒したい。
来週の指標では、米7 月のPCE 総合価格指数は前年比3.3%と予想されており、6 月の3.0%からの伸び率の上昇が見込まれている。PCE 総合価格指数は昨年6 月の6.8%をピークに、原油価格の低下基調に沿って伸び率が鈍化傾向にあったが、原油価格の上昇により下げ止まりつつある。
また、米8 月雇用統計の予想は、失業率が3.6%で、7 月の3.5%から上昇。非農業部門雇用者数は前月比16.3 万人の増加で、7 月の18.7 万人から増加幅の減少が見込まれている。なお、米労働統計局が発表した年次ベンチマーク改定の速報値によれば、2023 年3 月までの1 年間の雇用者増が30 万6000 人下方修正される見込みとなっており、労働市場が鎮静化に向かっていることが示されている。その他、4-6 月期国内総生産(GDP)の改定値、8 月の消費者信頼感指数、ISM 製造業景気指数、シカゴ購買部協会景気指数なども予定されており、景況感や雇用情勢、物価情勢などを見極めていくことになる。
ユーロドルは、9 月14 日の欧州中央銀行(ECB)理事会に向けて、ユーロ圏8 月の消費者物価指数(CPI)が7 月の前年比5.3%から低下基調にあるのか、それとも反発しているのかを見極めることになる。ラガルドECB 総裁は、7 月の理事会後に、「9 月理事会では、利上げの可能性も一時停止の可能性もある」と述べており、CPI が低下基調だった場合は、利上げ停止の可能性が高まることになりそうだ。
8 月21 日週の回顧
ドル円は、米10 年債利回りが4.36%台まで上昇したことから146.40 円まで買われたものの、その後は8 月米PMI 速報値が弱い結果となったことから米金利が一転4.18%台まで低下。144.54円まで反落した。ただ、新規失業保険申請件数の改善などを受けて再び146 円まで反発している。
ユーロドルは、ユーロ圏の景況感悪化などから、1.0930 ドルから1.0803 ドルまで下落した。ユーロ円は、159.49 円から156.87 円まで下落後、158 円台に反発している。(了)
週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)
豪ドル、経済指標に左右
◆豪ドル、CPI・民間設備投資など複数の経済指標発表で動意付く可能性
◆豪ドル、引き続き中国経済の動向で左右
◆ZAR、BRICS 後の西側諸国の対応に注意
予想レンジ
豪ドル円 90.00-96.00 円
南ア・ランド円 7.50-8.00 円
8 月28 日週の展望
豪ドルは経済指標に一喜一憂する展開となりそうだ。今週は豪州から主だった経済指標の発表が無かったこともあり、豪ドルはトレンドをつかむのが難しい動きだった。ただ、9 月5 日の豪準備銀行(RBA)理事会を前に、来週は豪州から多くの経済指標が発表され、指標の結果次第で動意付く可能性が高い。
来週は28 日に7 月小売売上高、29 日にブロックRBA 副総裁講演、30 日に7 月住宅建設許可件数と消費者物価指数(CPI)が発表されるほか、31 日には国内総生産(GDP)を形成する要素の1つである4-6 月期民間設備投資などが予定されている。注目度が高いCPI は、昨年末に前年比で8.4%まで上昇したが、年明けには7%台、そして5 月には5.6%、6 月は5.4%まで低下。RBA 議事要旨でも「これまでの大幅な引き締めが意図したとおりに機能している兆候がある」と公表されたように、中銀の思惑通りにインフレが抑えられている傾向が示された。しかし、前月のRBA理事会では利上げも検討されていたように、インフレが再び上昇傾向を辿った場合は、来月の理事会で再利上げの可能性もある。豪ドルは指標結果次第で上下しそうだ。
また、豪ドルは中国経済の動向にも左右されるだろう。今週に入り、中国は1 年物の最優遇貸出金利(LPR)を引き下げたが、住宅ローン金利の目安である5 年超のLPR は据え置いた。中国が新たな景気刺激策を示すことが出来ず、31 日に予定されている8 月製造業購買担当者景気指数(PMI)も低下した場合は、中国株安からの豪ドル売りには注意が必要となる。
南アフリカ・ランド(ZAR)は下落リスクに警戒したい。ZAR は今週開催された新興5 カ国(BRICS)首脳会議の間は強含んだが、BRICS 後の西側諸国の対応次第では、南アとしてこれまでの中立姿勢を保てないリスクがある。ラマポーザ南ア大統領は、中露の米国批判には同調していないが、与党アフリカ民族会議(ANC)の幹部からは、ロシアやキューバ要人との会談後に反米と捉えられる言動も見受けられた。西側諸国による南アに対しての制裁には注意が必要であり、恩恵を受けていたアフリカ成長機会法(AGOA)などの除外リスクには備えておきたい。なお、来週は、南アからは23 日に7 月の卸売物価指数(PPI)と貿易収支が発表される。
8 月21 日週の回顧
豪ドルは対ドル・対円ともに小高く推移した。週初は米10 年債利回りが2007 年11 月以来の水準まで上昇したことで、豪ドル売り・ドル買いに動く場面もあった。しかし、週末のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を前に、徐々に米金利が低下し始めたことや、底堅さを取り戻した株式市場の動きを支えに、リスク選好の動きに敏感な豪ドルは買い戻しが優勢となった。ZAR は対円で小幅高、対ドルでほぼ横ばいだった。BRICS 首脳会議で、多くの参加国が通商面でドルを介さず、自国通貨での取引へシフトすることに賛成したことなどが支えになった。なお、7 月の南アCPI は市場予想よりも大幅に低下した。(了)
週間展望・回顧(ポンド、加ドル)
英、マイナス成長リスク再燃
◆ドル高・円安の流れは続くと見込む
◆ポンド、英経済成長への懸念が再燃し上値は重い
◆加ドル、9 月会合前の重要指標となる4-6 月期GDP に注目
予想レンジ
ポンド円 182.00-188.00 円
加ドル円 106.00-110.00 円
8 月28 日週の展望
米経済状況が他の主要国より良好との見方が強いことや、米長期金利の上昇基調が続いていることで、全般ドルの堅調地合いが続くと見込まれる。中国の景気減速により世界経済への懸念が高まり、リスクオフの円買いには注意が必要だが、金融政策格差を背景とした円売りの動きは変わらず、対円では上方向を意識した動きが続く可能性が高いと見ている。
先週に発表された英8 月製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は42.5 と2020 年5 月以来の低水準となったほか、サービス部門PMI は48.7 と前月から予想以上に鈍化した。総合PMI は47.9と、以来景気判断の分岐点とされる50 を割り込み2021 年1 月以来の低水準となった。エネルギー価格の下落などで家計消費と企業投資が好調となり、景気後退懸念が和らいていたが、8 月PMIの結果を受けて、英経済成長が第3 四半期にマイナスに転じる可能性が再燃している。インフレへの懸念は根強く、イングランド銀行(英中銀、BOE)の引き締めは当面続くとの見方が強いものの、PMI の結果は、インフレとの闘いが景気後退リスクという重い代償を伴っていることを示唆している。今週は英国内で主な経済指標や注目のイベントは予定されておらず、さえない8 月PMIの余韻が残り、ポンドは上値の重い動きが見込まれる。
また、人材コンサルタント会社XpertHR が今週に発表した調査によると、英5-7 月賃上げ率は前年比+5.7%と、これまで6 四半期連続で記録していた過去最高の+6.0%から鈍化した。賃上げ率はピークに達した公算が高く、今後賃上げ率と物価上昇率の格差は縮小する可能性が示された。ポンドは次回のBOE 会合を9 月21 日に控え、英インフレ・雇用データとともに景気動向に一喜一憂する相場展開が続きそうだ。
加ドルは9 月6 日にカナダ中銀(BOC)の金融政策会合を控え、政策金利の見通しに変化が出るかどうかが注目される。7 月会合後に発表されたカナダの経済指標は強弱まちまちで判断が難しい。6 月の雇用データは予想を下回り、5・6 月小売売上高も伸びが鈍化した。一方で、7 月CPIは予想外に伸びが加速し、BOC がインフレの長期化に懸念を強める可能性がある。今週末には9月会合前の最後の注目指標となる4-6 月期GDP の発表が予定されているが、6 月の貿易収支は37.3億加ドルの赤字と赤字額は予想を大きく上回り2020 年10 月以の水準まで膨らんだ。海外需要の弱まりが輸出に打撃を与え、外需の低迷で第2 四半期のGDP は第1四半期から伸びの鈍化が予想される。更には、中国リスクへの懸念が高まるかどうかにも注目したい。
8 月21 日週の回顧
英8 月PMI が弱い結果になったことを受けて、ポンドドルは1.26 ドル割れまで下押し。ポンド円は186.77 円まで年初来高値を更新した後、一時183 円前半まで失速した。加ドルは新規の手がかりが乏しいなか、方向感に欠ける動き。ドル/加ドルは1.35 加ドル台、加ドル円は107 円台を中心に小幅の上下に始終した。(了)
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