週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By: フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    ドル円、米指標に改めて焦点

    ◆ドル円、インフレなど米経済指標の結果が一段と重要視される

    ◆ドル円、週末の米雇用統計で大きく動意づく可能性

    ◆ユーロドル、9 月以降の利上げ観測が急速に後退

    予想レンジ

    ドル円 135.00-142.00

    ユーロドル 1.0600-1.1150 ドル

    7 31 日週の展望

    ドル円は、日米金融イベントを終えて改めて米経済状況に焦点が向けられることから、経済指標に対して敏感に反応する神経質な展開となりそうだ。

    まず、2526 日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り 0.25%の利上げが決定され、声明文は前回からほぼ同じ内容となった。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が定例記者会見で「9 月会合では追加利上げも現状維持もあり得る。今後の会合について何も決めていない」との見解を示し、6 月時点での「年内あと 2 回の利上げ」との姿勢からはハト派寄りの発言となった。この発言を受けて外国為替市場ではドル安が進んだわけだが、FRB 議長は同時に「6 月の CPI は歓迎されたが、1 カ月分の報告に過ぎない。今後入手されるデータでさらに行う必要が示されればさらに行う」としている。市場に対して安易に利上げ見通しへの思惑を高めない意図もあったようだ。

    WSJ 紙のニック・ティミラオス記者は「フォワードガイダンスからの脱却を図ろうとしているようだ。今後は経済指標全体、特にインフレを重視」と述べているように、9 月 19-20 日の会合までにあと 2 回予定されている CPI や雇用統計の結果が非常に重要視されることになるだろう。

    来週は早速、週末に 7 月米雇用統計が発表されるため、市場の注目がこれまで以上に集まることになる。雇用統計の他にも 8 月 1 日に 6 月雇用動態調査(JOLTS)求人件数や 7 月 ISM 製造業景況指数、8 月 2 日に 7 月 ADP 雇用報告、8 月 3 日に 7 月 ISM 非製造業指数が予定されている。ユーロドルは、9 月以降の利上げ観測が急速に後退したことで上値の重い展開が想定される。

    欧州中央銀行(ECB)は理事会後の声明で次回以降の利上げを示唆しなかったほか、ラガルド ECB総裁は定例記者会見で 9 月以降の金融政策方針について「据え置きもあり得る」とし、データ次第の姿勢を強調した。

    7 24 日週の回顧

    ドル円は、週前半は 141.50 円を挟んで推移していたが、FOMC の結果公表を前に持ち高調整の売りに押され 140 円台前半まで下落した。パウエル FRB 議長のハト派発言を受けて米利上げ観測が後退するとさらに売りが強まり、27 日の東京市場では一時 139.38 円まで売り込まれた。4-6 月期米国内総生産(GDP)速報値など強い米指標を受けて 141.32 円まで反発したが、「日銀は 27-28 日に開く金融政策決定会合で YCC 修正案を議論」との報道が伝わると 138.71 円まで急落した。

    また、ユーロドルは低調な欧州各国の PMI 速報値を受けて週明けから売りが強まり、25 日には一時 1.1022 ドルまで下落。米利上げ観測の後退から 1.1150 ドルまで反発したが、ECB の利上げ観測後退から 1.0965 ドルまで再び売られた。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    RBA の金融政策に注目

    ◆豪ドル、RBA 四半期金融政策報告でのインフレ見通しがポイント

    ◆豪ドル、CPI でインフレ鈍化傾向を確認

    ZAR、商品価格の上昇が相場を下支え

    予想レンジ

    豪ドル円 91.00-97.00

    南ア・ランド円 7.60-8.20

    7 31 日週の展望

    豪ドルは神経質な展開となりそうだ。注目は 8 1 日に公表される豪準備銀行(RBA)の金融政策。前回の議事要旨では「8 月理事会で改めて追加利上げの必要性を協議する方針」などが示されており、RBA が利上げを再開するか注目される。

    もっとも、今週に発表された 4-6 月期の四半期消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回り、前期からのインフレ鈍化傾向も確認された。同時に公表された 6 月 CPI は前年比 5.4%となり、依然としてインフレ目標(2-3%)を上回っているものの、5 月に公表された四半期金融政策報告内の見通し(6 月時点で 6.25%)は下回っている。市場ではインフレ鈍化により利上げ圧力は弱まったとの見方が大勢となり、金利先物市場では 8 月理事会での利上げ織り込み度が急低下している。声明文などでインフレ警戒姿勢が弱まれば豪ドルにとって重しとなるだろう。

    今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見では、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が次回会合での金利据え置きの可能性に言及したが、来週の RBA 理事会通過後に豪・米の金融政策を受けた相場の方向性を改めて探りたいところだ。

    なお、来週は理事会のほかにも 8 1 日に 6 月住宅建設許可件数、8 3 日に 6 月貿易収支、8月 4 日に RBA 四半期金融政策報告が公表される。特に四半期金融政策報告では最新のインフレ見通しを確認しておきたい。

    隣国ニュージーランド(NZ)では、31 日に 7 ANZ 企業信頼感、8 1 日に 6 月住宅建設許可件数、8 月 2 日に 4-6 月期雇用統計が公表予定。8 月 2 日の雇用統計が予想と乖離した場合は、発表が早朝の商いが薄い時間帯ということもあり NZ ドルが動意づく可能性に注意しておきたい。

    南アフリカ・ランド(ZAR)も神経質な展開となりそうだ。南アフリカからは来週に 6 月貿易収支の発表が予定されているが、相場への影響は限られるだろう。足もとでは世界的な利上げサイクルが一服しつつあることを手掛かりに金やプラチナなどの商品価格が上昇。資源産出国であるZAR を下支えする構図となっている。

    対ドルでは ZAR 買い基調が維持されているが、対円については日銀金融政策決定会合を通過した来週以降に円相場全般の動向を見極める必要がありそうだ。

    7 24 日週の回顧

    豪ドルは伸び悩み。中国の景気支援策への期待から中国・香港株などが上昇したことを受け、リスクに敏感な豪ドルは買いが先行した。もっとも、27 日には対ドル・対円で豪ドルが戻り売りに押されるなど買いの勢いも長続きはしなかった。

    ZAR も週央以降は伸び悩んだが、対ドルでは 2 月以来の水準まで ZAR 高が進むなど底堅い地合いを維持。対円でも一時年初来の高値を更新する場面が見られたものの、週末にかけては値を消した。(了)

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    ポンド、利上げ確実も総裁見通しに注目

    ◆ポンド、追加利上げは確実もベイリーBOE 総裁の金利見通しに注目

    ◆対円では日銀金融政策決定会合の影響残る

    ◆加ドル、重要な雇用統計を待つ展開

    想レンジ

    ポンド円 175.50-182.50

    加ドル円 103.50-107.50

    7 31 日週の展望

    来週のポンドは、週前半は前週末に発表される日銀金融政策決定会合や植田日銀総裁の記者会見を踏まえた円相場全般の動きに追随することになりそうだ。政策決定や総裁発言の内容(特にイールドカーブ・コントロール、YCC に関し)に「サプライズなし」となれば、日英金利差の拡大がより意識され、円売りポンド買いに勢いがつくかもしれない。逆に、日銀がこれまで頑なに維持してきた超金融緩和に「修正の兆しが見えた」となれば、円買いが強まりそうだ。いくら両国の金利差は広がったままと言っても、円相場全般の流れにはポンド円も抗えないだろう。

    もっとも、ポンドにとってのメインイベントは、8 3 日のイングランド銀行(英中銀、BOE金融政策委員会(MPC)による金利決定。今月 19 日に発表された 6 月のインフレ指標は想定以上に鈍化していたものの、追加利上げはほぼ確実とされている。ただし、政策金利の引き上げ幅は6 月会合の半分、現行 5.00%から 5.25%までとの見方が優勢だ。

    また、政策金利と同時に明らかとなる議事要旨でまず注目したいのが、今回からテンレイロ前委員に代わり英中銀 MPC 委員として会合に参加するグリーン氏の金融スタンス。前委員はハト派として知られたが、新委員は逆にタカ派寄りと見られている。市場では、減速した 6 月英消費者物価指数(CPI)の結果を受け、英中銀による金融引き締め長期化・強化への思惑は後退しつつある。初会合のためグリーン委員は目立つことはしないと思われるが、同委員の政策金利に対する投票行動やインフレへの見解は気を付けて見ておいたほうが良いだろう。

    より重要なのは政策金利発表後のベイリーBOE 総裁の会見。今のところ短期金融市場は、次回 9月 MPC で 25 ベーシスポイントの追加利上げ、そして 11 月か 12 月会合で更に同程度の金利引き上げを織り込んでいる。米欧中銀トップが今後の利上げについて言及を避けるたびにドル売りやユーロ売りに傾いたなか、英中銀総裁の金利見通し次第ではポンドも上下することになるりそうだ。

    加ドルにとって重要な材料は、8 4 日に発表される 7 月の雇用統計。新規雇用者数は前月から減少見込み、失業率も前回から悪化が予想されている。また失業率については、過去 3 カ月連続で市場予想より悪い結果であり、今回も警戒感を緩めることはできない。たとえ予想通りだとしても、昨年 2 月以来の弱い結果となる。いずれにせよ、週末の指標であり、それまでは市場のリスクセンチメントの強弱や原油相場をにらみながらの取引となりそうだ。

    7 24 日週の回顧

    ポンド、加ドルともに、対円では日銀の YCC に関する報道で上下した。週前半は、前週末に YCC修正なしとの観測報道で円安が進行した影響が残った。ただ、週後半には YCC 上限を一定程度超えることを容認する可能性が報じられ、急ピッチで円買い戻しが進んだ。対ドルではポンドは 1.30ドル手前から 1.27 ドル後半まで下落。米欧金融政策を受けた相場全般の流れに追随した。加ドルは 1.32 加ドルを挟み上下した。(了)

     


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