週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、南ア・ランド)

Article By フィナンシャルアナリスト

    週間展望・回顧(ドル、ユーロ、円)

    ドル円、米 CPI に注目

    ◆ドル円、週後半に予定される米 CPI の結果待ち

    ◆ドル円、東京市場は日銀の臨時指値オペの有無に一喜一憂

    ◆ユーロドル、最新のインフレ指標は強い結果も上値の重さ続く

    予想レンジ

    ドル円 140.00-145.00

    ユーロドル 1.0600-1.1150 ドル

    8 7 日週の展望

    ドル円は、市場が最も注目する最新の米インフレ指標の結果を待ちながら、日米長期金利の動向に左右される神経質な展開が想定される。

    来週の注目は 10 日に明らかになる 7 月米消費者物価指数(CPI)となる。パウエル米連邦準備理事会(FRB)は「今後入手されるデータでさらに利上げを行う必要が示されればさらに行う」と発言しており、今回の CPI 次第では利上げ観測が高まる可能性はあるだろう。ただ、9 月会合までにはあともう 1 回、CPI の発表が予定されていることから、今回の結果だけで追加利上げを織込む動きにはなりづらいかもしれない。

    また、東京市場では日本の長期金利を睨みながら日銀による臨時の国債買い入れオペの有無に一喜一憂しそうだ。日銀が 7 月 27-28 日の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の運用見直しを発表。長期金利にある程度の柔軟性を持たせる姿勢を示したわけだが、今週に入ってすでに臨時指値オペを 2 回通知している。金利上昇を抑制しようとする積極的な姿勢が来週以降も見られれば、引き続きドル円の下支え要因となりそうだ。

    ただ、リスク要因としては米格付け会社フィッチの米国債格下げの影響だろう。イエレン米財務長官は「強靭な米経済情勢が考慮されておらず、全く正当な根拠がない」と異論を唱えたが、格下げ発表後の日欧米株式相場は大きく下落する展開となっており、投資家の投資意欲を冷やしていることは確かだろう。来週以降も株価動向には要警戒となりそうだ。

    来週は 10 日の米 CPI までは主だった米重要指標の発表はないが、翌 11 日には 7 月米卸売物価指数(PPI)や 8 月ミシガン大学消費者態度指数・速報値が予定されている。ユーロドルは、米 CPI の結果を受けたドルの動向に大きく左右されるだろう。今週発表されたユーロ圏のインフレ指標などに改善が見られたため、欧州中央銀行(ECB)の利上げ打ち止め観測はやや後退する形となっているが、ユーロの反発力は弱い。

    7 31 日週の回顧

    ドル円は、日銀による臨時の指値オペ通知をきっかけに週明けから買いが優勢となった。7 ADP 全米雇用報告が市場予想を上回り、10 年債利回りが昨年 11 月以来の水準まで上昇すると上げ幅を拡大。3 日に日銀が再び臨時の指値オペを通知すると一時 143.89 円まで上値を伸ばした。一方、欧州株をはじめ株式相場が崩れるとクロス円とともに売りが強まり 142.07 円まで失速した。

    また、ユーロドルは 7 月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)コア速報値や 46 月期ユーロ圏 GDP速報値が予想を上回ったことで週明けに 1.1046 ドルまで上昇したが、その後は徐々に上値が重くなった。米長期金利の上昇でドル高が進むと一時 1.0912 ドルまで値を下げている。(了)

     

    週間展望・回顧(豪ドル、南ア・ランド)

    豪ドル、利上げサイクル近く終了か

    ◆豪ドル、RBA が予想外の金利据え置き

    ◆豪ドル、RBA 新総裁の下で利上げサイクルも終わりが近づくとの見方

    ZAR、リスク回避基調が継続するか見極める必要

    予想レンジ

    豪ドル円 90.00-96.00

    南ア・ランド円 7.40-8.00

    8 7 日週の展望

    豪ドルは上値の重い展開となりそうだ。1 日に公表された豪準備銀行(RBA)の金融政策は市場予想(4.35%への利上げ)に反して、金利据え置きとなった。声明文では「インフレ率は低下しているが、依然として高過ぎる」「今後の経済・インフレ次第だが、さらなる引き締めが必要になるかもしれない」などの見解が示された。

    声明文は総じて前回とほぼ同様の内容となったが、RBA の利上げサイクルは終わりに近づいているとの思惑が広がり、短期金融市場では利上げ織り込み度が低下。年内にあと 1 回の利上げを幾分織り込む程度となっている。一部市場では 9 月 18 日に RBA の新総裁に就任する予定のブロック RBA 副総裁はロウ総裁よりも「ややハト派側のスタンスではないか」との見方もあり、金利先高観の後退は対ドルなどで豪ドルの重しとなりそうだ。

    なお、来週は豪州から 8 日に 8 月ウエストパック消費者信頼感指数や 7 NAB 企業景況感指数などの発表が予定されているが、相場への影響は限られる見込み。10 日に 7 月米消費者物価指数(CPI)の発表が控えていることもあり、基本的には米インフレ動向をにらみながら、ドル相場などの推移に振らされることになるだろう。

    隣国ニュージーランド(NZ)からは来週、主だった経済指標の発表が予定されていないことから、市場の注目は 16 日に公表される NZ 準備銀行(RBNZ)の金融政策へと徐々に移行していく見込み。市場参加者が夏季休暇入りし始めることもあり、金融イベントを前に積極的な売買は手控えられるかもしれない。

    南アフリカ・ランド(ZAR)は神経質な展開となりそうだ。南アフリカでは 9 日が女性の日の祝日で休場となるものの、その他に目立った指標・イベントなどは予定されていない。フィッチによる米格下げを受けて世界的に株安の流れが強まったことは、市場のリスク志向全般に左右されやすい ZAR にとってマイナス要因。足もとで米金利が大きく上昇している影響もあって対ドルを中心に ZAR 安が進んでおり、現在のリスク回避基調がどこまで続くかを見極める必要があるだろう。

    7 31 日週の回顧

    豪ドルは上値の重い動き。週初の 7 31 日こそリスクオンの流れに沿って買い先行となったが、その後は米金利の上昇を受けて対ドルを中心に伸び悩んだ。米格下げ報道が伝わった 2 日以降は投資家がリスク回避姿勢を強めたことで、リスクに敏感な豪ドルは売りに押される展開に。RBAが市場の利上げ予想に反して金利据え置きを決めたことも相場の重しになった。

    ZAR は軟調推移となった。足もとで ZAR 買いが進んでいた反動もあり、週初から持ち高調整目的とみられる ZAR 売りが先行した。その後は米金利上昇の影響で対ドルを中心に売りが加速。同時に欧州株安も進んだことで対円でも次第に売りが強まった。(了)

     

    週間展望・回顧(ポンド、加ドル)

    ポンド、中銀の政策スタンス模索

    ◆ポンド、英中銀の政策スタンスを探りながらの動き続く

    ◆対円では本邦長期金利、対ドルでは米金利の方向性を注視

    ◆加ドル、加雇用統計の影響残る

    予想レンジ

    ポンド円 177.50-184.00

    加ドル円 105.00-109.00

    8 7 日週の展望

    イングランド銀行(英中銀、BOE)の金融政策イベントを通過したポンドだが、今後の政策スタンスを探りながらの動きが続きそうだ。ただ、来週は対円では、市場のリスクセンチメントや本邦長期金利の動向、対ドルでは米金利の方向性を見据えながらの売買となるだろう。英中銀は 10日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を 5.00%から 5.25%に引き上げることを決定した。引き上げ幅は市場の予想通りだった。ただ、MPC 内で 0.25%利上げに同意したのは 9 人中、ベイリーBOE 総裁も含めて 6 人。他はハスケル、マン両委員が前回に続いて 0.5%利上げを主張。一方で、ディングラ委員は据え置きを主張した。MPC 内で意見が 3 つに分かれたのは今年初めてであり、見解の相違が浮き彫りとなった。声明では、足もとで 7.9%まで低下してきた消費者物価指数(CPI)が「今年末に 5%付近まで鈍化すると」述べている。また、「インフレは 2025 年第 2 四半期には目標の 2%まで戻る」との見通しを示している。インフレのリスクは減少したものの、24 年と 25年の英成長率は下方修正。住宅投資なども大幅に減少するとの予想だ。また、今後 2 年間の失業率は悪化基調が続くとしており、ベイリー総裁にとって気を抜けない状況が続きそうだ。

    ポンド円は、日銀会合の結果公表後から荒い値動きが続いており、引き続き神経質な動きとなりそうだ。今週は買い優勢が続くも、週半ばから広がったリスク回避ムードで上値を切り下げた。まだ暫くは株価動向を眺め、本邦長期金利を巡る市場と日銀のせめぎ合いのなかで右往左往させられるのではないか。ポンドドルは週後半に発表される米国のインフレ指標が材料視されるだろう。それまでは英金利と米金利の強弱を見定めながらの動き。10 日の 7 月米消費者物価指数(CPI)を待ちたいところだ。

    加ドルは 4 日発表の 7 月カナダ雇用統計を受けた流れが続きそうだ。市場のセンチメントが弱含むなかで 6 月からの悪化が予想されており、悪い結果には敏感に反応する可能性が高い。ただ、7 日は祝日で休場となっており、週初の流動性の薄さには注意しておきたい。連休明けに発表される 6 月カナダ貿易収支にも注意する必要がある。前回 5 月の結果が 10 億加ドル超の黒字予想から 34 億加ドルを超える赤字となり、加ドルの重しとなったからだ。また、ポンドドル同様に 10日の米 CPI は要注意だろう。そのほか、サウジアラビアが自主減産の延長を表明したことで反発した原油相場の動向も、産油国通貨である加ドルに影響を与えるだろう。

    7 31 日週の回顧

    ポンド、加ドルともに対円では買いが先行。それぞれ 180 円後半から 183 円前半、106 円前半から 108 円前半まで上昇した。日銀の臨時オペが円安加速に繋がった。ただ週半ばからリスクオフに傾き、それぞれ 180 円半ば、106 円半ばまで下落した。ポンドドルは 1.28 ドル台からじり安となり、英中銀の政策発表後に 1.26 ドル前半まで売られる場面があった。加ドルは対ドルで 1.31加ドル半ばから 1.33 加ドル後半まで加ドル安が進行。ドル高の流れに歩調を合わせた。(了)

     


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