【前日の為替概況】米7-9月期GDPの上方修正でドル高、対円147.90円 対ユーロ1.0960ドル
29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は4日続落。終値は147.24円と前営業日NY終値(147.48円)と比べて24銭程度のドル安水準。アジア時間に一時146.67円と9月12日以来の安値まで売り込まれた反動で買い戻しが先行した。米商務省が発表した7-9月期米国内総生産(GDP)改定値が年率換算で前期比5.2%増と速報値の4.9%増から上方修正され、予想の5.0%増を上回ったことが伝わるとドル買いが加速。23時過ぎに一時147.90円と日通し高値を付けた。ただ、節目の148.00円には届かなかった。米経済活動の3分の2超を占める個人消費が3.6%増と予想の4.0%増を下回ったほか、米連邦準備理事会(FRB)が物価の目安として注目する食料とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)指数が2.3%上昇と予想の2.4%上昇を下回ったことが相場の重しとなった。米国で利上げ局面が終了したとの見方が広がる中、戻りを売りたい向きも多く、4時過ぎには147.08円付近まで下押しした。
なお、FRBがこの日公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)では「米経済活動は前回の報告書以降減速した」との認識が示されたほか、物価上昇については「地区全体でほぼ緩やかになったが、依然として高止まりしている」、労働需要については「引き続き緩和した」と伝わった。
ユーロドルは5営業日ぶりに反落。終値は1.0969ドルと前営業日NY終値(1.0993ドル)と比べて0.0024ドル程度のユーロ安水準だった。アジア時間に一時1.1017ドルと8月10日以来の高値を更新したあとだけに、欧米市場では利食い売りなどが出た。11月独消費者物価指数(CPI)速報値が予想を下回ったことで、欧州のインフレ鈍化を意識したユーロ売りも出た。米GDP改定値の上振れを受けてドル買いが強まると、一時1.0960ドルと日通し安値を更新した。もっとも、米国での早期利下げを見込むユーロ買い・ドル売りが入ると、1.0995ドル付近まで下げ渋った。
なお、バーキン米リッチモンド連銀総裁は「追加利上げの可能性を排除するつもりはない」「利下げについて議論するのは時期尚早」などと述べたほか、メスター米クリーブランド連銀総裁は「今後のデータ評価する上で政策は良い位置にある」「さらなる利上げが必要かどうかは経済状況次第」などと語った。
ユーロ円は3日続落。終値は161.52円と前営業日NY終値(162.12円)と比べて60銭程度のユーロ安水準。21時30分過ぎに本日高値となる162.25円まで上昇後、取引終了間際に161.49円まで反落した。
【本日の東京為替見通し】ドル円、10月米PCEデフレーターへの警戒感から上値が重い展開か
本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される10月の米PCEデフレーターへの警戒感から上値が重い展開が予想される。
12月12-13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視している米10月PCEデフレーターは前年比+3.0%と予想されており、9月+3.4%からの伸び率鈍化が見込まれている。
CMEのフェドウオッチによると、米金利先物市場では来年5月のFOMCでの利下げ開始確率が高まっている。さらに米国債券市場でも、FRBが来年5月までに利下げに転じるとの観測が高まっている。もし、今夜発表される10月PCEデフレーターが予想を下回り、2%台まで伸び率が減速していた場合、来年の利下げ開始時期が第1四半期あたりまで前倒しされる可能性が高まることになるか。
12月FOMCでの景況感の判断材料となる地区連銀経済報告(ベージュブック)は、消費者が裁量的な支出を控えたために、米経済活動は減速したと指摘していた。また、米感謝祭の翌日、ブラックフライデーの売上高が低調だった模様で、ベージュブックが指摘していた消費者支出への警戒感を裏付けている。
昨日はタカ派のメスター米クリーブランド連銀総裁が「データに機敏に対応」と述べている。次回FOMCまでの重要なデータは、本日の10月PCEデフレーター、12月8日の11月雇用統計、12日の同月消費者物価指数(CPI)となる。
ドル円のテクニカル分析では、長期的には、エリオット波動の最終5波を示唆する「斜行三角形」を形成中、中期的には高値反転を示唆する「弱気の乖離(ベアリッシュ・ダイバージェンス)」を形成中、短期的には「ダブル・トップ(151.72円・151.91円)」が完成したことで、下値リスクが高まりつつある。
10時30分に発表される11月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7と予想されており、10月の49.5からの改善が見込まれている。リスクシナリオは、予想を下回った場合のリスク回避となるため要注目か。
【本日の重要指標】
※時刻表示は日本時間
<国内>
○08:50 ◎ 10月鉱工業生産速報(予想:前月比0.8%/前年比0.4%)
○08:50 ◇ 10月商業販売統計速報(小売業販売額、予想:前年比5.9%)
○08:50 ◇ 対外対内証券売買契約等の状況(週次・報告機関ベース)
○10:30 ◎ 中村豊明日銀審議委員、あいさつ
○14:00 ◇ 11月消費動向調査(消費者態度指数 一般世帯、予想:35.6)
○14:00 ◇ 10月新設住宅着工戸数(予想:前年比▲6.8%)
○19:00 ◇ 外国為替平衡操作の実施状況(介入実績)
<海外>
○09:00 ◇ 11月ANZ企業信頼感
○09:30 ◇ 7-9月期豪民間設備投資(予想:前期比1.0%)
○09:30 ◎ 10月豪住宅建設許可件数(予想:前月比2.0%)
○未定 ◎ 韓国中銀、政策金利発表(予想:3.50%で据え置き)
○10:30 ◎ 11月中国製造業購買担当者景気指数(PMI、予想:49.7)
○16:00 ◎ 10月独小売売上高(予想:前月比0.4%/前年比▲2.0%)
○16:00 ◎ 7-9月期トルコ国内総生産(GDP、予想:前年比5.6%)
○16:30 ◇ 10月スイス小売売上高
○16:45 ◎ 7-9月期仏国内総生産(GDP)改定値(予想:前期比0.1%)
○16:45 ◇ 11月仏消費者物価指数(CPI)速報値(予想:前月比横ばい/前年比3.7%)
○16:45 ◇ 10月仏卸売物価指数(PPI)
○16:45 ◇ 10月仏消費支出(予想:前月比▲0.2%)
○17:00 ◇ 11月スイスKOF景気先行指数(予想:96.6)
○17:55 ◎ 11月独雇用統計(予想:失業率5.8%/失業者数変化2.20万人)
○18:30 ◇ 10月南アフリカ卸売物価指数(PPI、予想:前月比1.1%/前年比5.8%)
○18:30 ◎ パネッタ伊中銀総裁、講演
○19:00 ☆ 11月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値(予想:前年比2.7%)
○19:00 ☆ 11月ユーロ圏HICPコア速報値(予想:前年比3.9%)
○19:00 ◎ 10月ユーロ圏失業率(予想:6.5%)
○21:00 ◎ 10月南アフリカ貿易収支(予想:91億ランドの黒字)
○21:00 ☆ 7-9月期インドGDP(予想:前年同期比6.8%)
○21:00 ◇ 10月メキシコ失業率(季節調整前、予想:2.80%)
○22:30 ☆ 9月カナダGDP(予想:前月比横ばい/前年比0.8%)
☆ 7-9月期カナダGDP(予想:前期比0.2%)
○22:30 ◎ 10月米個人消費支出(PCE、予想:前月比0.2%)
◎ 10月米個人所得(予想:前月比0.2%)
☆ 10月米PCEデフレーター(予想:前年比3.0%)
☆ 10月米PCEコアデフレーター(予想:前月比0.2%/前年比3.5%)
○22:30 ◎ 前週分の米新規失業保険申請件数/失業保険継続受給者数(予想:22.0万件/187.2万人)
○22:30 ◎ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、講演
○23:15 ◎ ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、講演
○23:45 ◎ 11月米シカゴ購買部協会景気指数(予想:45.4)
○24:00 ◎ 10月米住宅販売保留指数(仮契約住宅販売指数、予想:前月比▲2.0%/前年比▲8.8%)
○1日01:00 ◎ グリーン英中銀金融政策委員会(MPC)委員、講演
○1日02:00 ◎ ナーゲル独連銀総裁、講演
○石油輸出国機構(OPEC)プラス閣僚級会合
※重要度、高は☆、中は◎、低◇とする。
※指標などの発表予定・時刻は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。
【前日までの要人発言】
29日10:04 ニュージーランド準備銀行(RBNZ)声明
「インフレ率は依然として高すぎるため、当委員会はインフレ圧力の継続を警戒」
「経済成長は年初の予想を上回っているが、依然としてトレンドを下回っており、さらに減速する可能性が高い」
「インフレ圧力が予想以上に強まれば、政策金利はさらに引き上げられる必要があるだろう」
「内需がさらに強まれば、追加的な金融引き締めが必要になる可能性が高い」
「インフレ率は2024年後半までに目標範囲内に低下すると予想」
「金利見通しでは来年の利上げがあるリスクが高まっていることを示している」
「金利見通しでは2025年半ばまで利下げがないと予想」
29日10:40 安達日銀審議委員
「賃金と物価の好循環という状況の芽が出始めているが、十分ではない」
「10月のYCC運用のさらなる柔軟化が、金融政策の正常化を意識した政策変更ではない」
「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる方針」
「長期金利の持つ情報的価値を有効に活用すべき余地が徐々に高まってきた」
「賃金・物価の好循環が実現する状況になるまではマイナス金利の解除は難しい」
「中小企業では今年度並みの賃上げ厳しいとの声、マイナス金利いつ解除するかできるような状況ではない」
「賃上げの見極め、新年度明け以降になる」
「マイナス金利解除の条件、想定しない内外経済の動きあり、実質賃金が先にプラスになる可能性もある」
「マイナス金利解除、10年金利の柔軟化とは性格異なる」
29日11:21 オアNZ準備銀行(RBNZ)総裁
「今回の会合では利上げについて議論した」
「新首相との会談は非常に建設的だった」
「我々は来年まで金利を維持することに固執してきた」
「予想では金利に上昇バイアスがかかっているが、まだ決定事項ではない」
「インフレに対するリスクはまだ上向き」
「金利についてしっかり議論した」
29日16:46 ベイリー英中銀(BOE)総裁
「BOEは現在利下げについて議論する立場にない」
「インフレ率が2%に達するという十分な証拠はまだ得られておらず、確信も持っていない」
30日00:06 ボスティック米アトランタ連銀総裁
「2%のインフレへの道は不安定になるだろう」
「今後数カ月は経済活動が鈍化すると予想」
「インフレの下降軌道は継続すると予想」
30日00:11 バーキン米リッチモンド連銀総裁
「インフレが2%に向け軌道に乗っているかどうかは懐疑的」
「追加利上げの可能性を排除するつもりはない」
「市場はインフレに関して私とは異なる予測を立てている」
「利下げについて議論するのは時期尚早」
「我々が発信するメッセージが市場に反映されることを願う」
30日03:37 メキシコ中銀
「政策会合からのインフレ見通しを維持」
「2023年のGDP成長率予測を3%から3.3%に引き上げ」
「2024年のGDP成長率予測を2.1%から3%に引き上げ」
「2025年のGDP成長率は1.5%になると予想」
30日04:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
「全体として、米経済活動は前回の報告書以降減速した」
「4地区が緩やかな成長を報告し、2地区が横ばい、もしくは僅かな減速を示唆。6地区が若干の減速を示した」
「自動車を含む小売売上高は依然としてまちまち。消費者が価格に敏感になったため、家具や電化製品などの裁量品や耐久財の売上高は平均して減少した」
「製造業はまちまちで、製造業者の見通しは弱含んだ」
「ビジネスローン、特に不動産ローンの需要が若干減少した」
「商業用不動産の活動は引き続き鈍化した」
「今後6カ月から12カ月の経済見通しは悪化した」
「ほとんどの地区で全体の雇用が横ばいから小幅な増加を報告。労働需要は引き続き緩和した」
「しかし、いくつかの地区では労働市場が逼迫しており、熟練労働者が不足していると報告」
「多くの地区で賃金圧力の緩和が報告された」
「価格上昇は地区全体でほぼ緩やかになったが、価格は依然として高止まりした」
「ほとんどの地区は、緩やかな価格上昇が来年も続くと予想」
※時間は日本時間
〔日足一目均衡表分析〕
<ドル円=三役逆転が点灯、転換線を抵抗に戻り売り>
陰線引け。転換線は基準線を下回り、遅行スパンは実線を下回り、雲の下で引けたことで三役逆転の強い売りシグナルが点灯した。4手連続陰線で転換線を下回って引けており、続落の可能性が示唆されている。
本日は148.30円台まで低下した転換線を抵抗に戻り売りスタンスで臨み、同線を上抜けた場合は手仕舞い。
レジスタンス2 149.29(日足一目均衡表・基準線)
レジスタンス1 148.33(日足一目均衡表・転換線)
前日終値 147.24
サポート1 146.44(9/12安値)
サポート2 145.91(9/11安値)
<ユーロドル=上昇中の転換線から11/27安値が支持帯に>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けていることで三役好転の強い買いシグナルが点灯中。1.10ドル台では伸び悩み、4手連続陽線の後の孕み線で反落した。しかしながら、依然として転換線を上回って引けてはおり反発の可能性が示唆されている。
本日は、1.0930ドル台まで上昇してきた転換線から27日安値までを支持帯に押し目買いスタンスで臨みたい。
レジスタンス1 1.1017(11/29高値)
前日終値 1.0969
サポート1 1.0925(11/27安値)
<ポンド円=186円半ばの転換線を念頭に置いた取引>
陰線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けているため三役好転の強い買いシグナルが点灯中。3手連続陰線でも転換線を上回って引けており反発の可能性が示唆されている。
本日は186.57円で横ばいの転換線を念頭に置いた取引。同線をクリアに割り込むようであれば、185.60円台の22日安値辺りまでの下押しは考えておきたい。
レジスタンス1 187.88(11/28高値)
前日終値 186.93
サポート1 185.64(11/22安値)
<NZドル円=転換線が支持、ダブルトップの可能性も警戒>
上影小陽線引け。転換線は基準線を上回り、遅行スパンは実線を上回り、雲の上で引けており三役好転の強い買いシグナルが点灯中。
2手連続陰線の後に孕み線で反発して転換線を上回って引けており続伸の可能性が残されている。本日は同線を支持に押し目買いスタンス。しかしながらダブル・トップ(91.20円・91.22円)の可能性も高まっており、そちらも警戒はしておきたい。
レジスタンス1 91.22(11/29高値)
前日終値 90.62
サポート1 90.21(日足一目均衡表・転換線)
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