ユーロ価格見通し: ユーロ/米ドルはサポートで反発、ユーロ/円は14年ぶりの高値に

Article By シニアストラテジスト

ユーロの話題:

  • ユーロ/円14年ぶりの高値で取引されている一方、ユーロ/米ドルは先週金曜日に1.0845円のサポートに到達した後回復を試みている。
  • ユーロ/米ドルでは、米ドル高が続く中で価格がピークに達したかどうかが大きな問題だ。しかしユーロ/円では円安が非常に大きな流れとして続いているため、状況が大きく異なる。

 

ユーロ/米ドルのペースはこの1ヶ月で一変した。欧州の景気回復やさらなる利上げに耐える経済力について疑問が生じる一方で、日本円は依然として弱いままであることから、ユーロ/円は週明けに14年ぶりの高値まで上昇した。
先週は複数のインパクトの強いデータが出たが、どれも大きな懸念材料にはならなかったため、ユーロは差し引きでプラスとなった。先週初めのZEW調査は依然として低調だったが、これはほぼ予想通りだった。そして水曜日のGDPは前月比0.3%、前年比0.6%という予想通りの数字となり、金曜日に発表された消費者物価指数(CPI)もコア5.5%という、これもちょうど予想通りの数字となった。
これらのデータはまだ潮目を変えるには十分ではないが、明らかにある程度出血は収まりつつある。ユーロ/米ドル相場は、金曜日の朝には1.0845ドル水準でサポートされ、今のところこの水準が安値を維持している。この1.0845ドルの水準は重要で、先週火曜日のWebセミナーでもお話しした、6月の安値を何度も維持したサポートだ。
このサポートラインの変曲によって、価格は過去のサポートゾーンに押し戻され始めており、現在では同じゾーンがレジスタンスになっている。

 

ユーロ/米ドル日足チャート

 

チャート作成:James StanleyTradingviewのユーロ/米ドル

 

ユーロ/米ドルでは過去のサポートが新たなレジスタンスに

ユーロ/米ドルについて一歩引いてみると、今年の大半にわたってさまざまな形で価格が収束しているという事実から、いくつか追加の視点が得られる。強気筋は7月にユーロ/米ドルでこの流れを修正しようとしたが2021-2022年の大きな動きの61.8%リトレースメントを超えることができず、それ以来この水準が高値を支えている。

1.1000ドル付近までのプルバックは速かったが、それ以降はゆっくりとした値動きになっている。長期的に見ると、この付近は、値動きが固まった状態で推移していた今年前半の大半で維持されていた、過去のレジスタンスエリアであった。

高値・安値共に下がり続けていることから、弱気筋がある程度の主導権を握っていることに変わりはないが、週足で見ると、強気筋が2週間前にレジスタンスとなった1.1064ドルを上抜けることができれば、すぐにトレンドを取り戻すことができる。そうなれば、安値と高値の下落の連鎖を断ち切り、強気筋が再び主導権を握ることになる。それまでは、弱気筋の参入の扉は開いたままだ

 

ユーロ/米ドル週足チャート

 

チャート作成:James StanleyTradingviewのユーロ/米ドル

 

より細かいユーロ/米ドルの動向

日足チャートに戻ると、1.0845ドルの重要性を見てとることができる論理的にはこの地点での反発に注意しておきたいところだ。より大きいな問題は多少のプルバック後に売り手が反応するかどうかで在り、今のところ、レジスタンスは1.0912レベル付近の短期的な事前サポートに留まっている。

より大きな見通しとして、61.8%フィボナッチレベルで高値をつけた同じ大きな動きからの50%にあた1.0943ドルのレベルが存在感を増している。その上では1.0970ドルが引き続き注目され、さらに1.1000ドルも大きく視野に入りつつある。いずれもより安い高値でのレジスタンスとして機能する可能性があり、弱気筋が高値を維持するためにどこから再突入するかが、彼らがどれだけ攻勢を維持するかを測るカギとなる。

 

 

ユーロ/米ドル価格チャート

 

チャート作成:James StanleyTradingviewのユーロ/米ドル

 

ユーロ/円

ユーロ/米ドルの状況は上記とは大きく異なる。米ドルの強さがこの1ヶ月で戻ってきた一方、米ドル円の継続的な強気プッシュが示すように、日本円は依然として弱い状態にある。

ユーロ/円では今朝新たな高値を更新し、リーマン・ショック前にあたる2008年の8月以来到達していなかった160円まで上昇して、14ぶりの最高値を更新した

 

ユーロ/円月足チャート

 

チャート作成:James StanleyTradingviewのユーロ/円

 

ユーロ/円の動向継続の可能性

このような動きに伴う当然の疑問は、継続の可能性があるかどうかである。この質問に答えるのが難しいのは、非常にコントロールしやすい要因、つまり日本の財務省が介入の可能性ちらつかせるかどうかという点だ。ここでふたたび米ドル/円に話題を戻す必要がある。

米ドル/円は昨年、為替介入の可能性を懸念して145円台で失速し始めた。その後、財務省から日銀に介入命令が出される前に、同ペアは最終的に150まで上昇した。

昨年9月と10月にこのシナリオが話題になったときと今とで異なるのは、昨年9月にユーロ/米ドルが底を打って以来、ユーロの価値が米ドルに対して回復していることである。しかし、円への介入をめぐる懸念は依然として残っており、ユーロ/円は心理的水準である160のすぐ近くに位置しているため、大局的な継続シナリオが機能するかどうかはやや不透明である

この通貨ペアが160円を超えた後に失速し始めると、短期的な下落の可能性がある。もし今週、日本から介入を示唆するような発言があればおそらく米ドル円の動きに影響を与えるだろうが、その場合には短期的な下落が長期的で大局的な意味合いを帯びる可能性がある。

現時点では、強気筋は新高値を試しており、大きく主導権を握っているが、160円の水準が非常に近く、この価格を上抜けすることができなければ、反転ロジックの可能性が出てくるだろう

 

ユーロ/円日足チャート

 

チャート作成:James StanleyTradingviewのユーロ/円




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