米ドルの値動きの背景:ユーロ/米ドル、ポンド/米ドル、米ドル/円

Article By シニアストラテジスト

米ドルの話題:

  • 米ドル価格は2023年のこれまでの取引の大部分で見られた合流の状態が続いており、ユーロ/米ドルの動きも同様言えるだろう。しかし、先週の動きを踏まえると、この行き詰まりを打開する押し目があるかもしれない。
  • 米ドル安のシナリオでは、ポンド/米ドルが引き続き魅力的だ2週間前に今年の高値を更新した後、より高い安値でのサポートを維持しているからだ。一方米ドルの強気サイドでは、今のところ依然として米ドル/円が注目に値するだろう。日銀の前回の政策金利決定以来、強気のブレイクアウトが継続しているためだ。

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米ドルは引き続きレンジ相場が続いているが、先週は再び102近辺でサポートされ、そこからレジスタンスラインとして維持された103の水準まで一気に押し上げられたことで、ある程度注目すべきエリアの手掛かりが見えたと言えるかもしれない。金曜日に103を試して以降は価格は引き戻されており、ここでの大きな問題は、買い手が現れて102付近の過去の安値のサポートを維持するのか、またはかつて4月下旬~5月上旬のスイングローだった101レベルに向かって沈みこむかだ。

先々週には102近辺も視野に入っていたが、先週のドライバーが価格を押し戻し、FRBのパウエル議長が半期に一度議会に立つハンフリー・ホーキンス報告書証言の初日が終わった後でサポートラインがはっきりした。

興味深いことに、ユーロ/米ドルが1.1000ドルのレベルに到達したことと、金曜の朝に欧州から発表された購買担当者景気指数(PMI)が期待外れに終わったことが米ドルの主な強気要因となり、103までの回復に寄与したように見える。
米ドル-米ドル指数(DXY)価格チャート(参照用、Forex.comプラットフォームでは使用できません)

チャート作成:James StanleyTradingviewのデータによる

 

ユーロ/米ドル、1.1000ドル

先週はユーロ/米ドルで再び1.1000ドルを試す展開となり、短期間で弱気筋は150ピップス以上のプルバックを引き起こした。しかし、先週のウェビナーでも取り上げたおなじみの1.0843ドルにサポートが現れた。このサポートが先週終値までの安値を軟化させ、今週はこれまでのところ強気な動きが続いていおり、同じ1.1000ドルレベルを再び試す可能性が注目される
今朝、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁はさらにタカ派的なコメントを発表したが、これは最近の欧州中央銀行ECBの論調を引き継いだものだ。しかし先週見た通り、ECBFOMCよりもタカ派的な姿勢を続けることを欧州の経済成長の状況が許すかどうかが大きな問題になっている。欧州ではインフレが依然として厳しく、ECBはこの問題に対処するため、可能な限り逆風を起こすことを望んでいるようだ。

ユーロ/米ドルの大きな焦点は、4月から5月にかけて強気派が試したがらなかった1.1100ドル水準より上への値上がりにつながるほど、ECBが十分にタカ派的な姿勢を打ち出せるかどうかである。

ユーロ/米ドル日足チャート


チャート作成:
James Stanley Tradingviewのユーロ/米ドル

 

ポンド/米ドル

2週間前に今年の高値を更新した後の最近の値動きから、米ドル安のシナリオでは、英ポンド/米ドルはより魅力的な市場になり続ける可能性がある。
先週は英国のインフレ率が再び上昇し、イングランド銀行はこれを受けて50bpの利上げに踏み切った。興味深いことにこの利上げは新しいブレイクアウトを引き起こしかけたものの、買い手は以前のスイングハイからわずか5ピップス下で手を引いた。その後価格は上下しつつサポートまで戻り、1.2700レベルが射程に入って金曜から月曜まで安値を支えた。火曜には強気筋がわずかに価格を押し上げている。

以下の4時間足チャートからはその動きが見て取れるが、特筆すべきはおそらく、過去に大きなレジスタンスだった1.2667ドル水準の上で、1.2700ドルのサポートが維持されていることだろう。1.2667ドルは昨年5月に高値を支え、さらに今年5月上旬にも高値を支えつつ下降トレンドラインと合流した大きなレジスタンスラインだ。強気派がこの水準をさらに試す値動きを許さず、より上で安値を維持したことは、この問題では演繹的に強気要因と解釈できるだろう。

 

ポンド/米ドル4時間足チャート

チャート作成: James Stanley、 Tradingviewのポンド/米ドル

 

米ドル/円

米ドルの強気サイドでは、米ドル/円が今のところより魅力的な市場のひとつであり続けるかもしれない。昨年の夏の間、米ドル/円での円安が止まらなかったときと同じような事態が急速に近づきつつある。

日銀の金融政策がほとんどの主要通貨に対して円安を促し続けている一方で、財務省からは為替が速く一方的に動くことに関する複数のコメントが出ている。昨年欧州で見られたように、通貨安はインフレを促進する。日銀はインフレの心配はほとんどないと主張しているが、実際のところ、日本のコアCPI14ヶ月連続で2%を超えている。

それにもかかわらず、日銀は政策に一切の変更を加えないことを示唆している。再び財務省に動きが見られるが、米ドル/円のチャートからは、昨年も145円の水準で財務省のコメントが注目を浴びたことから、これは理にかなっているだろう。このペアの価格は、同じゾーンに急速に近づいている。

昨年は約1か月近く145円の水準が高値を維持し、その後さらにブレイクアウトして最高150円にまで高騰した。ここで日本からの為替介入が発表された。こうした為替介入は長期的に維持可能な解決策とは思えない。基本的には日銀の金融政策が円安を促しているのに、限りある外貨準備資金を使って円を買うことになるからだ。幸いなことに、昨年は第4四半期に米ドル安が進行して米ドル/円でのそれまでの値上がりを相殺したことから、日銀にとってこれが問題になることはなかった。

 

米ドル/円日足チャート

チャート作成:James Stanley Tradingviewの米ドル/円




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