バイデン政権がもたらす経済・地政学・社会的な影響
1月20日、ジョー・バイデン氏は第46代米国大統領に就任します。バイデン氏の就任に伴い、経済・地政学・社会的問題に取り組む上での政策には、トランプ政権とは大きく異なった内容が多数導入されます。バイデン氏は、富裕層への増税や学生ローンの負債軽減など、財政刺激策を通した経済拡大を狙っています。中国、ロシア、イラン、メキシコ、カナダを始めとした多数の国家に対する外交政策も前進させる予定です。さらに、医療、人種間の格差、気候変動といった問題が、バイデン氏の社会問題対策の主要項目となります。
ジョー・バイデン氏の経済政策
バイデン大統領自身が必要と感じているだけの経済刺激策が実現するかどうかはともかく、同氏は既に、次期財務長官にジャネット・イエレン氏を指名することで意向を示しています。イエレン氏はこれまでハト派として知られており、米連邦準備理事会議長の任期を通して、インフレ対策を積極的に導入するよりも経済刺激によって失業対策を実施する方針を取る傾向がありました。今後も同氏の方針は変わらないとの見方が上がっています。ハト派の財務長官とハト派の準備銀の組み合わせはつまり、大規模な通貨発行が見込まれるということになります! さらにバイデン氏は、米国産の製品やサービスを購入し、テクノロジーや研究に投資することで、新規雇用を 500 万件創出する予定です。同氏はまた、最低賃金を時給 $15 にまで引き上げたいと考えています。
連邦予算を投入して経済を刺激するだけでなく、バイデン氏はまた、年収 $400,000 を超える納税者に生活保護関連税を課して歳入を増やす予定です。さらに、トランプ大統領が導入した減税策の廃止や、法人税を 28% にまで引き上げる案を掲げています。
教育への割り当てとしては、小学校準備学年から高校 3 年生までの教育へ充てる予算額を引き上げたいとバイデン氏は考えており、同氏の案には、タイトル 1 に属する学校への資金を 3 倍に引き上げるという内容も含まれています。高等教育では、世帯年収が $125,000 未満の家庭には、コミュニティ・カレッジや公立大学の授業料を無料にしたいと考えています。ドナルド・トランプ氏と同様に、ジョー・バイデン氏も、2021 年には対 GDP 比で 108% にまで上昇すると見込まれている国家債務は、さほど深刻視していない様子です (このトピックの詳細は、『赤字支出、量的緩和、財政ファイナンスが及ぼす長期的なマイナス影響』を参照願います)。
増加する国家債務
出典:Peter G. Peterson Foundation
バイデン大統領の下、財政・金融刺激策は現状維持か強化されることになるため、株やコモディティといった資産クラスは 2021 年以降も持ちこたえる見込みである一方、インフレに敏感な債券は苦戦することになるでしょう。
ジョー・バイデン氏の外交政策
11 月の選挙では両候補者の内で比較的「友好的な」人物と考えられていたバイデン氏ですが、対中政策についてはトランプ政権時からの大きな変更は期待できません。貿易協定やコロナウイルスをめぐる「責任のなすり合い」については、バイデン氏はトランプ氏ほど強行的な態度を示すことは考えにくいものの、バイデン氏は引き続き、米国企業からの技術盗難を食い止めることに注力するでしょう。さらに、バイデン氏はトランプ氏よりも厳しい方針で人権問題の捜査を実行する可能性が高いと見込まれています。特に、香港や台湾が関わる問題が対象となるでしょう (詳細は、弊社の記事『米中関係は2021年も引き続き悪化するのか?』を参照願います)。
出典:ゲッティイメージズ
ロシアに関しては、バイデン氏はドナルド・トランプ氏ほどに友好的な態度を示すことはないでしょう。ロシアがクリミアを併合し、オバマ元大統領が関税や制裁を通してロシアを罰した当時、バイデン氏は副大統領を務めていました。さらに、2016年の米国総選挙にロシアが介入したことを、バイデン氏が忘れたと考えることはできません。また、中東シリアの今後についても、両国間で合意が形成されていません。
2015年、米国はオバマ元大統領の下、各国のリーダーと共にイランの核保有に関する合意を締結しました。しかし、トランプ大統領が合意を撤回し、金融セクターを含めた経済制裁をイランに加えました。バイデン氏は、イランとの調整再開を試みるとしていますが、イランが以前の合意を再び遵守することを条件としています。一方イランはこのほど、以前の合意を遵守する意向がない旨を示しました。
旧 NAFTA は現在、米墨加貿易協定 (USMCA) と称されています。さらに、記録によると、新協定は旧協定よりも米国の労働者に有利だとバイデン氏が述べたとありますが、貿易や関税に関してバイデン氏がトランプ大統領ほどメキシコやカナダに強行的な態度を見せるとは考えられません。また、バイデン氏は米国とメキシコの国境に壁を建設することはなく、トランプ大統領が導入した移民排斥政策を取り下げ、いわゆる「アメリカン・ドリーマー」が米国に留まれる措置を講じる予定です。
出典:ロイター
本投稿の読者は、米国の政策変更をケースバイケースで評価してください。とはいえ、今後 4 年間で細かい変更が実施されたとしても、熟練トレーダーにはたくさんのチャンスが残されています。まず、今後の政策として考えられるのは、カナダ、メキシコ、西欧といった、米国が従来から同盟関係にある国家により好意的な内容が取り入れられるであろうということです。一方、ロシアなど米国との関係が従来から緊迫している国家に対しては、より厳しい政策が導入されることになるでしょう。
ジョー・バイデン氏の社会政策
オバマ政権による最大の貢献の 1 つに、医療保険制度改革 (オバマケア) があります。バイデン氏はオバマケアを拡大し、雇用主が指定する医療保険を利用したくない者は、公的保険を選択する権利を得られるようにする予定です。さらにバイデン氏は、税金の相殺控除額を増加して、保険料を引き下げたいとも考えています。また、新薬の価格を米国民全員にとって手の届く水準に設定するよう、製薬会社に働きかけたいとも考えています。
バイデン氏は、「小規模事業機会資金」やマイノリティ出身の起業家に特化した資金への投資を通じて、マイノリティ出身者が経営する小規模事業をサポートすることで、人種間格差の解消に取り組む予定です。さらに同氏は、新規起業家や学生が利用するローン用に、特別の低金利を適用する意向です。また、新築住宅や公営住宅をマイノリティの居住区に建設し、金融機関による差別的な住宅関連方針を撤廃することで、マイノリティの居住区における住宅所有率を引き上げることも予定しています。
しかし、社会政策においてドナルド・トランプ政権と最も大きく異なるのは、気候変動に対応するための投資となります。バイデン氏は、「クリーンエネルギー革命」に関する計画を押し出しており、同計画では、クリーンエネルギーに 2 兆ドルを投資し、2050 年までに排出ゼロの新規目標を達成する見込みです。さらに、クリーンエネルギーの研究やイノベーションに注力し、化石燃料への補助金を停止し、洋上風力発電の規模を拡大していきます。同計画を通して、2030 年までに、公共の充電ステーション 500,000 か所が追加されると報告されています。バイデン氏はまた、パリ協定に再び加盟することを予定しています。米国は 2017 年、トランプ大統領の判断でパリ協定を脱退しています。同協定には、二酸化炭素排出の削減に合意した 200 か国を超える国々が加盟しています。
出典: NASA
マーケットへの影響としては、バイデン政権の政策で最も利益を享受するのはグリーン・再生可能エネルギー部門となりそうですが、この部門の関連株はすでに 2020 年を通して目覚ましい上昇を遂げています。一方、バイデン政権が医療業界にメスを入れることで、医療関連株の中には伸び悩む銘柄が出てくる可能性があります。とはいえ、そのようなシナリオが実現しても、セクター内には他銘柄から大きくリードする勝ち株があるかもしれません。
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