米ドル指数は重要なサポートラインを試す展開、反発の可能性も

Article By: マーケットアナリスト

日銀のサプライズを受けて米ドルは対円で急落したものの、他の通貨に対しては比較的良く持ちこたえており、日本以外の外国為替市場ではこれまでのところ静かな週が続いている。興味深いことに米ドル指数(DXY)が現在、非常に重要なテクニカルサポートエリアに到達している。主な中央銀行の会合が全て終わったことから、ここで再び強気相場が展開される準備が整い、価格の反発が起きても不思議ではないと思われる。

ドル反発の可能性についてマクロでの理由を説明する前に、DXYの週足チャートを見てみよう。

上記の週足チャートでは、ドル指数は2017年の高値である103.82周辺を試している。その下は2020年の高値である103.00。というわけで103.00~103.82のエリアが非常に大きなサポートゾーンとなっている。ここは過去にはレジスタンスゾーンだったのだ。

ご存じない読者のために注記しておくと、米ドル指数は下記の通貨に対する米ドル価格の加重幾何平均となっている。

  • ユーロ(ウェイト57.6%)
  • 円(ウェイト13.6%)
  • 英ポンド(ウェイト11.9%)
  • カナダドル(ウェイト9.1%)
  • スウェーデンクローナ(ウェイト4.2%)
  • スイスフラン(ウェイト3.6%)

ユーロへの重み付けが大きいことから、大部分がユーロだけの値動きに左右されるものの、日本円や英ポンド、カナダドルも影響を及ぼしうる。

さて、ドル指数が強気相場になると、ユーロ/ドルでは弱気相場になる可能性が非常に高く、逆もまた真だ。リスクに対する不安が抑えられたままであれば、ユーロ/ドル、ポンド/ドル、商品ドルなどが全て下落する可能性がある。

米国のインフレがピークを越えたという楽観論が漂っているものの、それだけでは投資家の楽観は長くは続かない。たとえば先週金曜に発表された最新のS&PグローバルPMIが示しているように、世界最大の米国経済が不況に向かう兆候は引き続き注視されている。念のため注記しておくと、サービス業PMIは46.2から44.4、製造業PMIは47.7から46.2に下落している。先週はまたNY連銀製造業景況指数、フィラデルフィア製造業景況指数、さらに米国の小売売上、鉱工業生産も予想を下回る形となった。

  投資家は、FRBとECBがそれぞれの金融政策を過度に強化していることも懸念している。このため、本来なら回避できるはずのリセッションに陥る可能性がある。FRBは利上げを一段落させる前に、5.00~5.25%近くまで金利を上げると予測しており、ECBのラガルド総裁は「一定期間、50bpのペースで利上げすることを期待すべき」と警告した。

世界経済の健全性への懸念が今後も高まれば、安全資産の米ドルは支えられ、コモディティのドルは最も大きな打撃を受ける可能性が高い。

一方、ポンドは、英国の弱いマクロ環境が背景にあることから、これ以上の上昇は難しそうだ。その上、金融政策委員会(MPC)が一致していないことで、英国の高いインフレが消費者の懐を痛め続け、企業活動を圧迫し、利上げが予想より早く停止するのではないかとの憶測を生んでいる。英国全土で進行中の労働争議も景気をさらに悪化させる可能性がある。大西洋を挟んだ米国では、FRBが、ターミナルレートが5%を超え、インフレが目標である2%に向けて持続的に低下するという確信が持てるようになるまで、さらなる利上げを望んでいる。そのため、GBP/USDは弱含み、ドル指数は支えられるはずだ。

 

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