By: Ryan Thaxton、ファイナンシャルライター
2021年10月20日 20:45
いちばん強い通貨と言えば、米ドル(USD)あるいは英国のスターリング・ポンド (GBP)を思い浮かべるかもしれません。どちらも他の通貨ペアに対してかなりの影響力を持っています。実際、取引量の多い上位10件の通貨ペアにはいずれも米ドルと英ポンドが含まれており、この2つの組み合わせであるポンド/米ドルは世界で最も取引量の多い通貨ペアです。
ですが、ここで取り上げる通貨の強さとは価格で決まるもので、この記事でこれからご紹介する通り、米ドルや英ポンドよりもはるかに価格の高い通貨がいくつか存在します。
ここで通貨の強さがどのように決まるのかを理解しておくことが大切です。通貨の強さは、法定通貨1単位と引き換えに購入できる商品、サービス、そして外貨の量で測ります。
通貨が強くなる要因とは?
通貨の強さは、その国の経済のインフレ率や、その国の通貨1単位と引き換えに購入できる外貨の量など、さまざまな要因で決まります。
米ドルは各国の市場で、また各国の銀行の準備通貨として広く使用されていることから、基軸通貨として広く利用されています。実際に米ドルは世界の中央銀行の準備通貨の60%、および外国為替取引全体の90%を占めています。
とはいえ、米ドルの相対的な保有量の多さは、各国通貨への影響力を高めるものではありますが、米ドルが他の通貨よりも強くなるというわけではありません。日本円(JPY)の価値は米ドルに対しておよそ1セント程度(※変動する)ですが、やはり世界で最も影響力があり、安定した通貨として知られています。
通貨の強さ、または価値が必ずしも経済の強さを示すものではないことは頭に入れておく必要があります。通貨の強さを実際に判断するには、供給量、需要量、インフレ率、長期的な価格の変化といった様々な要素を評価する必要があります。通貨の強さが外国為替取引に与える影響とは?
外国為替取引では、通貨の強さは任意のペアの相手通貨との関係で決まります。米ドルとユーロ(EUR)は世界で最も準備量の多い2種類の通貨であり、そのため外国為替市場で最も影響力の大きい通貨に数えられます。
外国為替の取引は、複数の通貨の強さに応じて行われます。これは通貨ペアの表記からすぐに見てとることができるでしょう。強い通貨が先に、弱い通貨が後に表記されます。その後、両方の通貨の強さの変化に応じてスプレッドが計算されます。
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最も強い通貨のペア
ユーロ/ドルは、どちらも世界各地での準備量が多く、さまざまな外国市場で使用されているため、外国為替取引においてはもっとも重要な通貨ペアと言えるでしょう。先述のとおり、ドルは世界経済の基軸通貨です。同様にユーロも欧州連合28か国中19か国の公式通貨となっています。
外国為替市場の通貨ペアは大きく3つに分けられます。
- 主要通貨ペア はもっとも頻繁に取引されるペアで、通常は基本通貨または値付けの通貨として米ドルを含みます。
- クロス通貨ペアは、毎日の取引高が大きいものの米ドルを含まない通貨ペアを指します。ユーロ、英ポンド、日本円などの世界の主要通貨を含みます。
- 次がエキゾチック通貨ペアで、これは主要通貨ペアやクロス通貨ペアと比べて取引量が少ない通貨ペアです。通常は4種の主要通貨のひとつと、取引頻度がそれほど高くない通貨や、新興市場の通貨を含みます。これらの通貨は、流動性が低くボラティリティが高い小規模な経済を表すものです。
エキゾチック通貨ペアの例としては、主要通貨とエキゾチック通貨を組み合わせた英ポンド/スウェーデンクローナ(GBP/SEK)、またはノルウェークローネとスウェーデンクローナ(NOK/SEK)といった2種類のエキゾチック通貨を組み合わせたものがあります。
通貨と通貨ペアの違い
いわゆる「主要通貨」が他の通貨より強いと考えるのは自然なことです。世界の市場における米ドルとユーロの全体的な安定性から、この2つは海外経済への影響力が最も大きい通貨です。ただし前述の通り、最も価値が高いというわけではありません。
実際のところ、外国の経済で米ドルとユーロの存在感が大きいことから、この2つの通貨の価格が急に上がると、結果として各国の経済に損害を与えます。米国からEUへの輸出品が高くなり、それ以外の国からの輸入品が安くなります。日本や中国などの国々は、自国の準備通貨として米ドルを頻繁に購入し、ドルを弱め、自国から米国への輸出の価値を高めています。
通貨のレートはその通貨の需要量によって決まり、また米ドルは大量に流通しています。米国やユーロ圏の国々などに自国製品を輸出できる国であれば、その国の通貨は上記2種類の通貨に対して強くなるでしょう。
個々の通貨と通貨ペアの強さに影響を与える要素は、この記事は書ききれないほど多くありますが、一般的にはある国の通貨の価値の高さは、輸出品の価値の高さで決まります。
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世界の強い通貨トップ10
以下は2021年10月時点での最強通貨上位10件のリストです。どの国も輸出が強かったり、国際的なビジネス取引での競争相手が少ないことがわかるでしょう。一方で中国やインドのように、輸出額が多い場合でも、全体として輸出製品の市場を独占しておらず、競争力を維持するために通貨を割安に維持する国もあります。
10: カナダドル(CAD)
カナダの法定通貨であるカナダドルはルーニーの愛称で知られており、外国為替市場では6番目に取引高の多い通貨です。その価値は原油やウランなど、この国の豊富な天然資源に由来しますが、それでも南側の隣国である米国が主要な貿易相手国であることから、米ドルの価格に大きく依存しています。
9: 米国ドル(USD)
米ドルは世界で最も取引されている通貨であると同時に、世界各国の準備通貨の大部分を占めています。通貨供給量の多さ、また米ドルの取引や保持の需要が非常に高いことから、このランキングでは9位につけています。
8: スイスフラン(CHF)
このランキングの他の通貨とは違い、スイスフランがこの位置につけたのは、輸出が強いからではありません。スイスの裕福さと安定性から、準備通貨として人気があるのです。世界でどんな災害が起きてもスイスフランに影響が及ぶ可能性は低く、そのために高い需要があります。
7: ユーロ (EUR)
世界第2の準備通貨であるユーロは、おそらく皆さんがすでにご存じのとおり、欧州連合の法定通貨です。EU全体の経済力が、ユーロに安定性だけではなく価値をもたらしています。
6: ケイマン諸島ドル(KYD)
このランキングで6位につけたケイマン諸島は少し異質な存在に見えるかもしれませんが、英国の海外領土であるこの島々は、何千もの企業にオフショアバンキングのライセンスを提供するビジネスでよく知られています。
さらにケイマン諸島ドルは、このランキングの中では米ドルに対して固定為替レートを維持している3つの通貨のうちの1つとなっています。5: スターリングポンド (GBP)
スターリング・ポンドは、英国とその海外領土の多くで法定通貨となっています。海外領土の中にはポンドと1対1の両替レートでリンクした独自通貨を有する国もあります。
英ポンドそれ自体は、英国のインフレ率が低いために米ドルよりも価格が高くなっています。一時は、1ポンドが米ドル換算で5ドル程度の時代もありましたが、イギリスが世界経済の主導権を失うにつれ、前世紀を通じて価格は下がってきました。
4: ヨルダンディナール(JOD)
ヨルダンディナールはこのグループでは非常に異質な存在です。ヨルダンは経済成長に苦戦しており、国家としても多額の負債を抱えています。ヨルダンには競争力のある輸出品はほとんどありませんが、アラブのこの国は20年以上前に自国通貨を米ドルとペッグすることに成功したのです。これによって、国としての経済が貧しいにもかかわらず、ヨルダンディナールの価値は比較的安定しています。
3: オマーンリアル(OMR)
4位のヨルダン・ディナールと比べ、オマーン・リアルの価格が大きく上昇したのは、この国の石油生産が好調なためです。アラビア半島でイエメンと隣接するこの国は、価値の高い天然資源が非常に豊富です。
2: バーレーンディナール(BHD)
バーレーンはペルシャ湾岸にあり、オマーンと同様原油の主要輸出国です。バーレーンも1986年以来、1ディナール2.6008米ドルで価格を米ドルとペッグしています。
1: クウェート・ディナール(KWD)
世界最強の通貨の称号を得たのはクウェート・ディナールです。
やはりペルシャ湾岸にあるこの国は、外貨収入の80%以上を石油業界から得ています。その取引の多くは米国とのものであり、クウェートをはじめとするこのランキングの上位3通貨は、自国通貨の裏づけのために大量の米ドルを蓄えています。
クウェート・ディナールは外国為替取引で広く利用できるわけではなく、仮に利用できたとしてもその安定性から、手数料などを考慮すると低利率の投資商品になるでしょう。
クウェート・ディナールは過去に価格を米ドルとペッグしていました。2007年からは、クウェート通貨委員会が管理する非公開の通貨グループと価格をペッグしています。
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